ベルリンでのRI役員会・総会の概要見出し

RI国内事務局長 松井亮輔

2018年の国際リハビリテーション協会(以下、RI)(注)の役員会および総会は、11月にベルリンで開催されました。それらの主な概要について役員会と総会にわけて紹介させていただきます。

1.役員会 役員会は、11月3日(土)と4日(日)の2日にわたり、NHコレクション・ベルリンセンター・ホテルの会議室で開かれました。

現役員会のメンバーは、会長(ザン・ハイディ(中国))、前会長(ヤン・モンスバッケン(ノルウェイ))、6地域(北米、中南米、欧州、アフリカ、アラブおよびアジア・太平洋)担当副会長(6名)および次席副会長(6名)、財務担当(スーザン・パーカー(米国))、事務局長(ヴィーナス・イラガン(フィリピン))、および7専門委員会(教育、保健・機能、バリアフリー環境・福祉機器(ICTA)、政策・サービス、社会、労働・雇用および余暇・レクリエーション・身体活動)委員長の23名です。それらに加え、RIの資産を管理・運用する、RI財団の理事8名(そのうち5名は、役員と兼任)も役員会に出席できることになっています。今回出席したのは、そのうち18名でした。

その主な検討事項は、つぎのとおりです。

(1)世界障害開発基金(GDDF)およびアフリカ基金(AF)の助成対象事業について

これらの基金は、中国政府から資金協力(2018年から4年間、毎年125万ドル、総額500万ドル)を得て、創設されました。GDDFはすべて地域の途上国における障害者支援プロジェクトの助成を意図したもので、AFは、アフリカに特化したものです。

昨年GDDFの最初の助成対象(1年間)になったのは、ブラジル「女性の声―ブラジルにおける女性障害者ネットワークの構築」(145,125ドル)、ネパール「障害児のインクルーシブ教育の推進」(145,125ドル)、レバノン「すべての人の教育―障害者のインクルーシブ教育モデルづくり」(15万ドル)、エチオピア「エチオピア・オロミヤ地域の障害者のための地域ベースのリハビリテーション、インクルーシブ教育および社会的インクルージョン推進プロジェクト」(105,125ドル)です。

また、AFの助成対象となったのは、南アフリカ「インクルーシブ雇用プロジェクト」(3万ドル)だけでした。

これらのプロジェクトの実施状況をモニタ-するため、香港のRI加盟団体関係者を中心に専門家チームが作られています。昨年秋に行われた、これらの基金による第2回目(2019年)の助成公募への申込件数は、GDDF10件、AF2件で、現在その審査が行われています。今年4月下旬に中国・深センで開かれる役員会で、助成対象が決まると思われます。

これらの基金は、助成対象となるプロジェクトの実施に当該国のRI加盟団体が参画することをとおして、それらの団体の活性化や能力向上も意図されています。

(2)次期会長の選挙について

2016年の総会で選ばれた現会長の任期(4年間)は2020年までのため、今回の総会で次期会長(2018年から4年間。RI規約では、現会長と新会長の任期には2年の重複期間が設けられています。)を選挙することになっていました。しかし、立候補者がいなかったため、役員会としては、現会長にもう1期(2020年から2024年までの4年間)延長することを要請したところ、ハイディ現会長はそれを了承。その結果、役員会としては、同氏の再任を総会に諮ることになりました。そのことと関連して、ヤン前会長についても、次の会長選挙がある2020年までその任期を延長することを総会に諮ることになりました。

(3)事務局長の交代について

第9代目事務局長として2008年に就任したヴィーナス・イラガンの任期は、2018年10月末までとなっていましたが、次期事務局長の選考が間に合わなかったため、役員会としては、2019年5月末まで延長することとし、それまでの間に次期事務局長の公募と選考が行われることになりました。本来であれば、この役員会で選考委員会を立ち上げるべきところ、そのことは議題にはならず、したがって、この件については総会でも報告されませんでした。事務局長は、RIの対外的な「顔」でもあるだけに、その人事について役員会でもオープンなディスカッションが行われないのは、きわめて異例と思われます。

(4)会費の見直しについて

RI加盟団体の会費は、これまでも何回か大きな見直しが行われてきましたが、現在の会費は、各加盟団体単位ではなく、国単位で設定されています。その最高額は、日本とドイツの4万ドル、次いで英国の1.5万ドル、最低はエチオピアなど途上国の250ドルできわめて大きな幅があります。2018年の会費収入総額は17.5万ドルでしたから、日本とドイツ両国(の加盟団体)で、その半分近くを負担したことになります。会費のこのようなアンバランスを是正すべきという提案を日本の加盟団体が昨年4月の役員会で行ったことを受けて、日本とドイツの会費を2019年から英国と同額にするということが今回の役員会で決まりました。その結果、2019年の会費収入総額は、日本とドイツをあわせ、5万ドル減となります。しかし、そのままではRI本部事務局の維持が困難となるため、会費全体の見直し検討委員会を立ち上げることになり、その委員には、会長、財務担当役員、各地域担当副会長が選任されました。同委員会は、2019年4月下旬に予定される役員会に会費見直し案について提案し、その承認を得た上で、2019年の総会でその案を諮ることになります。

(5)RI100周年(2022年)記念事業について

RIは、2020年に創立100年を迎えますが、その100周年記念事業を実施するため2017年には100周年委員会(委員長は、スーザン・パーカー財務担当役員)が設置され、記念誌の発行および100周年記念式典の実施などが企画されています。100周年記念式典は、現会長の支援母体である中国障害者連合会(CDPF)の了解を得て、北京で開催されることが、この役員会で決まりました。

2.総会

総会は、前述の役員会に続いて、11月5日(月)ドイツのRI加盟団体の一つである、ドイツ社会傷害保険(DGUV)本部の大会議室で開かれました。参加したのは35団体の94名です。

今回の総会での主な議決事項は、役員会からの提案どおり、会長および前会長の再任、および2018年決算案と2019年予算案の承認などでした。

おわりに

次期会長の立候補者がいなかったことや次期事務局長がなかなか決まらないことに象徴される、幹部人事問題、および会費を納入する正会員の減少などによる深刻な財源問題など、RIはまさにその存続にかかわる危機的状況にあるといえます。すべての会員が知恵を出しあって、そうした難局を乗り越え、RIが世界の障害問題の改善に向けてさらに積極的な役割が果たせるよう期待したいと思います。(注)RIは、1922年に創設された障害分野の国際団体(当初の名称は、国際肢体不自由者福祉協会)で、日本の加盟団体は、公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会(1964年に加盟)および独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(1981年に加盟(当時の名称は、身体障害者雇用促進協会))。RIの加盟団体は、日本を含め、1990年代半ばには90か国の165団体および8つの国際団体から構成されていましたが、現在、会費を納入している加盟団体は、38か国の47団体および2つの国際団体と大きく減少しています。

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