行政の動き-厚生労働省の発達障害者支援施策(子どもの支援を中心に)

「新ノーマライゼーション」2020年6月号

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課障害児・発達障害者支援室
発達障害施策調整官
田中尚樹(たなかなおき)

1.発達障害者支援施策の動向

平成17年に施行された発達障害者支援法において発達障害が定義され、障害者基本法などの法律においても、発達障害児者が障害児・障害者のサービス等の対象として明記されるようになり、障害者手帳や障害年金、障害者雇用等の対象になっています。

平成28年には、発達障害者支援法が改正され、ライフステージを通じた切れ目のない支援や家族を含むきめ細かな支援、身近な場所で受けられる支援の3つのポイントが示されています。また、平成30年には、文部科学省と厚生労働省で設置した「家庭と教育と福祉の連携「トライアングル」プロジェクト」のまとめによって早期発見や早期支援、教育と福祉の連携等の課題が挙がりました。

2.発達障害者支援施策(子どもの支援を中心に)

地域の中核となる発達障害に関する支援機関としては、発達障害者支援センター(以下「センター」という)があります。センターは、全都道府県と政令指定都市に設置されており、これらのセンターでの相談件数は、全国で年間7万件以上になっています。最近では19歳以上の方に関する相談が全体の半数を超えており、成人期のニーズが増えています。さまざまなニーズに対応するため、「発達障害者地域支援協議会」の設置や、発達障害者地域支援マネジャーを配置して地域支援の機能強化を図っています。

早期支援を目的とした事業としては、市町村を対象とした、巡回支援専門員が保育所や幼稚園等を訪問し、スタッフ等へのアセスメントや支援の助言等をする巡回支援専門員整備事業があります。令和2年度からは戸別訪問による支援を拡充しました。

家族を含む支援としては、発達障害児の子育て経験のある保護者による相談等を行うペアレントメンター事業や子育て支援プログラムの子どもの行動を把握しながら「親の認知を肯定的に修正すること」に焦点を当てたペアレントプログラム、環境調整や子どもへの肯定的な働きかけを学び、保護者や養育者の関わり方や心理的なストレスの改善や子どもの適切な行動の促進と不適切な行動の改善を目的とするペアレントトレーニング、そしてピアサポート事業等を実施する「発達障害児者及び家族等支援事業」があります。この事業については、平成30年度からは都道府県だけでなく市町村も実施できるようにし、令和2年度からは青年期の居場所作りを支援する事業を追加しました。

医療に関しては、発達障害に関する初診の待機期間の長期化の課題があり、これまで「かかりつけ医等発達障害対応力向上研修」や「発達障害専門医療機関ネットワーク構築事業」を実施し、発達障害に対応できるかかりつけ医等の医療従事者を増やすために研修等の事業に取り組んでいます。令和元年度には「発達障害専門医療機関初診待機解消事業」を創設し、医療機関や医療機関以外の支援機関に公認心理師等を配置して受診までの待機中にアセスメント等を実施し、それらの情報を受診する医療機関に提供できるようにしました。

教育と福祉の連携では、「家庭・教育・福祉連携推進事業」を令和元年度に創設しました。市町村に地域連携推進マネジャーを配置し、教育と福祉等の関係構築の場の設置や合同研修の実施、保護者支援のための相談窓口の整理等の取組を行う事業です。

3.今後の取組

発達障害児者やその家族が地域の身近なところで切れ目のない支援が受けられるように、地域の特性を踏まえた支援体制の強化が大切です。発達障害児者支援や家族支援等については、実態把握、支援方法等の調査研究の成果、各団体のご意見等も踏まえながら、今後も必要な施策等を検討していきたいと考えています。

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