地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-見えなくてもメイクを楽しもう~ファンケルの取り組み

「新ノーマライゼーション」2020年6月号

株式会社ファンケルSDGs推進室 担当課長
中川亜衣子(なかがわあいこ)

当社は、今年創業40周年を迎えました。創業者の池森賢二が、当時化粧品公害に苦しんでいた自分の妻と世の中の女性たちを助けたいという想いから立ち上げた会社です。創業理念を「正義感を持って世の中の『不』を解消しよう。」とし、不安や不満、不便など世の中の『不』を解消するのが、ファンケルの使命と捉えています。

当社は創業当時から現在まで、さまざまな社会貢献活動を行っています。その中の一つが「メイクセミナー」です。始まりは近所の老人ホームからの依頼で、今年33年目を迎えました。現在は、「高齢者向けメイクセミナー」「特別支援学校向け身だしなみセミナー」「がん患者様向けアピアランスメイクセミナー」、そして、ご紹介する「視覚障がい者向けメイクセミナー」を実施しています。

「視覚障がい者向けメイクセミナー」は、2013年に盲学校の依頼から開始しました。参加者の皆さんに喜んでいただけるように独自の工夫をしています。

一つ目は、ご自宅においてご自身で再現ができるように、スキンケアやメイクを「してあげる」のではなく、ご自身で実施する「実践型」のセミナーにしています。講師のレクチャーを聞き、講師やサポーターが、顔の半分に塗布する部分や力加減でスキンケアやメイクを行い、それを覚えていただきます。そして、残りの半分はご自身で実施をし、習得してもらいます。

二つ目は、道具でなくご自身の「指」を使用してメイクをしていただきます。道具を使うメイク方法では、顔と手との距離感や力加減、塗布が難しいですが、指だと感触が分かり上手にメイクができます。

三つ目は、たくさん褒めながらセミナーを進行します。「〇〇さんはお肌が色白、優しい雰囲気だから、このピンクがとてもお似合いです!」など具体的に褒めます。褒められると自信がつき、ご本人も周りも笑顔があふれ、いきいきと明るくなります。参加者の方からは「メイクをして出かけたら、駅員さんやホテルの人、とにかく周りの反応がいつもと全然違いました!」「子どもたちが“今日のお母さんきれい!”と大喜びでした!」「夫から久しぶりに褒められました!」など、お喜びの声を多数いただいております。自分ではメイクが見えなくても、周りから褒められることをとても喜んでいただいています。

また、文字が見えない方や見えにくい方へのサービスとして、触れるだけで商品の識別ができるファンケル独自の凸凹形シール「タッチマークシール」を用意しています。高齢の方や視覚障がいの方は、似たような容器の区別が難しいため、視覚障がい者団体から意見を聞いて1998年に開発しました。その後、視覚に障がいがある従業員も企画に加わりリニューアルをし、1シートに凸凹型と無地のシールをセットした現在の形にしました。無地のシールは、サプリメントの摂取粒数や化粧品の使用順序など自由に書き込み、好きな場所に貼ることができます。「タッチマークシール」は、通信販売と全国の直営店舗にて、商品購入時にご希望の方へ無料でお渡ししています。

現在、日本は超高齢化社会になっており、今後ますます視覚障がいの方は増えると思われます。見えなくてもスキンケアやメイクを楽しみ、毎日を明るく楽しく過ごしていただきたい。そんな想いでファンケルはこれからも『不』の解消に取り組んでまいります。

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