障害者雇用施策の現状と動向

「新ノーマライゼーション」2020年8月号

厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課

1.障害者雇用に関する施策・取組

障害者の雇用については、「ニッポン一億総活躍プラン」(平成28年6月2日閣議決定)や「働き方改革実行計画」(平成29年3月28日働き方改革実現会議決定)に加え、「労働施策基本方針」(平成30年12月28日閣議決定)においても、障害者等が希望や能力、適性を十分に活かし、障害の特性等に応じて活躍することが普通の社会、障害者と共に働くことが当たり前の社会を目指していく必要があるとされ、これまで次のような機関における施策や取組によりその量的な拡大とともに雇用の質の向上等が推進されてきました。

1.ハローワーク

就職を希望する障害者に対しては、ハローワークの専門窓口で、求職の登録の後にその技能、職業適性、知識、希望職種、身体能力等に基づきケースワーク方式による個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を実施し、安定した職場への就職・就職後の職場定着を支援しています。

具体的には、障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センター、就労移行支援事業所、特別支援学校、医療機関等に関係機関からなる「障害者就労支援チーム」を作り、就職に向けた準備から職場定着までの一貫した支援を行う「チーム支援」を実施しているほか、「精神障害者雇用トータルサポーター」や「発達障害者雇用トータルサポーター」など専門職員によるきめ細かな相談支援を行っています。

また、障害者トライアル雇用助成金や特定求職者雇用開発助成金、障害者雇用安定助成金を支給することにより、障害者の雇用促進を図っています。

2.地域障害者職業センター

各都道府県に1か所設置・運営されている地域障害者職業センターでは、ハローワークや地域の就労支援機関との連携の下に、他の機関では支援が困難な障害者を中心に、専門職の「障害者職業カウンセラー」により、職業評価、職業指導から就職後のアフターケアに至る職業リハビリテーションを専門的かつ総合的に実施しています。

また、就職や職場適応に課題を有する障害者が円滑に職場適応できるよう、就職時だけでなく雇用後においても事業所にジョブコーチを派遣し、障害者の障害特性を踏まえた専門的な支援を行うほか、事業主に対して、雇用管理に必要な助言や職場環境の改善の提案等の援助を行っています。

3.障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、障害者の職業生活における自立を図るために、福祉や教育等の地域の関係機関との連携の下、就業面や生活面の両面における一体的な支援を行っています。

例えば、就業やそれに伴う日常生活上の支援を必要とする障害者に対し、就職に向けた準備支援や求職活動等の就業に関する相談と、健康管理や住居、年金等の生活に関する相談などを行っています。

図 障害者雇用の状況拡大図・テキスト

2.障害者雇用の現状

こうした施策や取組の結果、令和元年6月1日現在の障害者雇用状況については、民間企業での雇用障害者数が16年連続で過去最高を更新し、560,608.5人1(対前年比4.8%増)となり、民間企業が雇用している障害者の割合も2.11%(対前年比0.06ポイント増)となっています。

さらに、ハローワークを通じた障害者の就職件数については、令和元年度は過去最高の103,163件(対前年度比0.8%増)となっています。特に、精神障害者は49,612件(対前年度比3.3%増)と増加しており、就職件数全体の約半数を占めています。

3.令和元年改正障害者雇用促進法

一方で、雇用されている精神障害者は78,091.5人であり雇用障害者数の1割に留まっていることや短時間労働者の割合が高いこと、さらに中小企業において障害者雇用が進んでいないことなどの課題があります。

こうした課題を踏まえ、令和元年6月7日、第198回通常国会において、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律が成立し、新たに次の2つの制度が令和2年4月1日に施行されました。

1.特例給付金制度

これまでの障害者雇用率制度や障害者雇用納付金制度においては、障害者の職業的自立を促進するという法の趣旨から、週所定労働時間が20時間以上の障害者である労働者を対象としており、週所定労働時間20時間未満での働き方は支援の枠組みの対象とはされていませんでした。

一方で、障害の特性から、週所定労働時間20時間未満であれば働ける方が一定程度存在することや、結果として、週所定労働時間20時間以上の勤務に移行していく例や、安定的に長く働き続けられる例等も多いことの指摘もありました。

これを踏まえ、改正法においては、短時間であれば就業可能な障害者の就業機会の確保を促進するため、短時間労働者のうち週所定労働時間が一定範囲内にある者(特定短時間労働者)を雇用する事業主に対して、障害者雇用納付金を財源とする特例給付金を支給する仕組みを創設しました。

具体的には、週10時間以上20時間未満の障害者を雇用する事業主に対して、100人超企業の場合は1人月当たり7,000円を、100人以下企業の場合は1人月当たり5,000円を原則支給するものです。

2.障害者雇用に関する優良な中小事業主に対する認定制度

民間企業全体の実雇用率が2.11%である一方、45.5人以上100.0人未満企業規模の企業の実雇用率は1.71%、100.0人以上300.0人未満企業規模の企業の実雇用率は1.97%となっているほか、これらの企業では法定雇用義務が課せられているにもかかわらず障害者を全く雇用していない企業が多く残されている等の課題があります。

中小企業における障害者雇用を進めていくためには、これまでの制度的な枠組みだけでなく、個々の中小企業における障害者雇用の進展に対する社会的な関心を喚起し、経営者の障害者雇用に対する理解を深めていくとともに、こうした取組を進めている事業主が、社会的にさまざまなメリットを受けられるようにしていくことが必要です。

このため、障害者の雇用の促進等に関する事業主の取組に関し、その実施状況が優良な事業主について、その商品等に厚生労働大臣の定める表示(認定マーク)を付すことができる中小事業主に対する認定制度を創設しました。

この認定を受けることで、中小事業主にとっては、日本政策金融公庫による低利融資を受けることが可能になるほか、自社の商品や広告等への認定マークの使用によるダイバーシティ・働き方改革等の広報効果や、障害のない者も含む採用・人材確保の円滑化といった効果が期待できます。

引き続き、上記のような施策や取組、改正法の施行を通じて、障害者が生き生きと活躍することのできる社会の実現に向けて取り組んでまいります。


障害者雇用状況報告では、重度身体障害者又は重度知的障害者については、1人を2人に相当するものとしてカウントし、重度以外の身体障害者・知的障害者、精神障害者である短時間労働者については、0.5人分としてカウントされます。ただし、精神障害者である短時間労働者については、雇入れ又は精神障害者保健福祉手帳の取得が報告年の3年前の6月2日以降である場合、1人分としてカウントされます。

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