株式会社エフピコ:会社の戦力として障がいのある人を積極的に雇用

「新ノーマライゼーション」2020年8月号

株式会社エフピコ総務人事本部
金井幸子(かないさちこ)

エフピコと障がい者雇用

エフピコはスーパーマーケット等で使用される簡易食品容器の製造から販売・配送・リサイクルまでを一貫して行っている企業グループです。1962年に広島県福山市で創業し、北海道から九州まで全国各地に製造、配送、リサイクルの拠点があります。

障がいのある社員の雇用は1986年から開始し、今年で34年目になります。2020年3月時点、グループ全体で障がいのある社員358名が正社員として活躍しています。雇用率は13.3%で、358名の障がいのある社員のうち、88%が知的障がい、72%は重度(職業判定含む)の障がいです。

障がいのある社員の9割が容器製造やリサイクルの選別業務を担うエフピコダックス(株)(特例子会社)、エフピコ愛パック(株)(就労継続支援A型事業所)の工場で働いています。

経営として成り立つ雇用を

障がいのある社員を雇用するにあたっては、当初から、“経営として成り立つ”ことが基本の考え方です。経営として成り立たない雇用は続けることはできません。雇用し続けるためには、“基幹業務で力を発揮してもらうこと”が必須となります。

エフピコグループで障がいのある社員が担当する主な業務のうち、製造業務では小ロットや人の手作業が必要となる高付加価値容器の製造から検品・梱包までを担当しています。製品はそのままお客様へと出荷されるため、高い品質が求められます。もう1つの業務は、リサイクルの最初の工程である、スーパー等の店頭で回収した使用済容器から不適品などを取り除く選別業務です。高品質なリサイクル原料を生み出すための重要な工程で、この選別がきちんと行われていないと高品質のリサイクル原料とはなりません。

どちらも当グループになくてはならない業務であり、いずれの業務もラインの中心は障がいのある社員です。障がいのある社員の担当する業務がなければ当グループのバリューチェーンは成り立たちません。そして、「いなかったら困る、必要とされている」ということをしっかり伝え続け、自覚してもらうことが、仕事への定着、責任感に繋がっています。

力を発揮してもらうために

障がいのある社員に力を発揮してもらうための取組として、ハード・ソフトの働く環境づくりと適所への配置があります。

ハード面の働く環境づくりでは、例えば完成した容器は製品ごとの規定枚数でひとまとめに包装しますが、数を数えるのではなく高さや重さで「数の見える化」を行っています。他にも、写真付きの図で詰め方を提示する、トラブルなど困った時は上長を呼ぶためのランプを取り付ける、など、“分かりやすい”作業になるよう小さな工夫を重ねています。

ソフト面の働く環境づくりでは、例えば仕事のモチベーションを持ち続けてもらえるよう、工場全体の目標とその達成度合いを見える化・共有しています。ラインごとの処理生産量や機械停止回数も掲示し、ライン全体で意識してもらい、個人レベルでも、自分がとる不適品の数量(袋数)目標を設ける等の目標を設定し、各自で日々の達成状況を〇×で記入し振り返っています。

これらは、障がいのある社員が働きやすくなるよう、やる気を継続できるようにと工夫したものではありますが、同時に障がいのない人にとっても重要な環境づくりであると考えられます。

また、障がいのある社員も一人ひとりに個性があります。例えば、同じ場所に立ち選別を行う業務では仕事に集中できず居眠りしてしまっていた人が、工場内を歩きまわって袋の交換等を行う業務に配置転換したら別人のようにイキイキ働くことができた、ということもあります。これが適所への配置です。同じ工場の中、同じラインの中でも場所により仕事の内容は異なるため、適性を見て配置変更を試しています。

「続ける力」の積み重ね

障がいのある社員と一緒に働く障がいのない社員、両者の働き続ける、伝え続ける、工夫し続ける、たくさんの続ける力で今日に至っています。

入社当社は体力もなく、2~3時間もすると座り込むこともしばしばあったという方も、“あなたが必要だ”と伝え続けたり、好きなものの話を出して気持ちを乗せたりと毎日コツコツ続けるうち、体力もつき仕事も覚え、今年で11年目の中堅社員になりました。

障がいのない社員もどうやったら伝わるだろうか、できるだろうか、と考え続けてハード・ソフト面の工夫を生み出してきました。

また、初めて障がいのある人と働くという社員も少なくありませんが、「障がいのある社員に多くのことを教えてもらっている」「一緒にいると温かい気持ちになる」という声もよく聞かれます。

このように互いの可能性が広がるという思いで、仲間として支え合う関係となっています。

職域の拡大、加齢や定年への対応

特例子会社を中心に、機械トラブル対応など従来スタッフが行っていた業務を障がいのある社員に任せる、ライン全体や工場全体を見て動く役職・ポジションにつけるなど障がいのある社員の職域の拡大に取り組んでいます。昨年は、就労継続支援事業から特例子会社での一般就労へ10名の大量移行も行いました。これらの取組により、仕事への責任感ややる気の醸成、内面的な成長に繋がると共に工場全体でも効率的な運営に繋がっています。

今後一層の職域拡大をエフピコグループとして取り組んでいきたいと考えています。

加齢や定年後の生活への対応は大きな課題です。1986年から30年以上働き続けている社員も複数名おり、加齢に伴う身体面(身体機能の衰え、病気の経験等)の個別サポートを行っていますが、勤務条件の検討、配置転換、新たな業務確保などに取り組む必要があります。

さらに定年等による雇用から地域福祉への円滑な移行については、リタイア後も地域で尊厳ある生活を営むことができるよう、雇用から福祉への流れを形成することが求められます。地域福祉に関わる皆様のご理解を賜りたいと考えます。

障がいのある従業員からの仕事に関するコメントをご紹介します。

―仕事をしていて、楽しい・うれしいと思う時は?

「お弁当の製品の目標が達成した時にやったぁって思う時です。みんなと一緒にりょこうしたり、イベントしたりしている時が楽しいです。スタッフにほめてもらえた時がうれしいです。(エフピコ愛パック(株)茨城工場 E.Kさん)

―主任補佐の仕事をしていて、反省する時は?

「目標は主任になることです。でもその人ができるように教えなければいけないのに、つい自分でその人の作業をやってしまった時、自分はまだダメだなと思う。」(エフピコダックス(株)茨城選別工場 S.Nさん)

より全体をみて機械のトラブル等の対応も行う役職

―約30年、長く働き続けることができた理由は?

「新しい仕事を覚えるのはいつも大変で辛いこともたくさんありました。私生活で悩みを抱えた時期もありました。でもそれを乗り越えられたのは、一緒に働く仲間の存在だと思います。仲間がいつも職場にいたので、頑張れた。そう思っています。」(エフピコダックス(株)千葉工場 S.Sさん)

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