米国エイブル法の現状

公益財団法人日本障害者リハビリテーション協会 参与 寺島 彰

エイブル法(Achieving a Better Life Experience (ABLE) Act (Public Law 113-295))は、8年間の長い議論の末、2014年12月19日に成立しました。この法律は、「障害のあるアメリカ人法(Americans with Disabilities Act:ADA)」などとともに、障害者のニーズに対応した最も重要な連邦法の一つであるといわれています。

エイブル法により、1986年内国歳入法(Internal Revenue Code of 1986)第529条が改正され(A項を追加)、障害のある個人(26歳前の発症に限る)のための特別な非課税の普通預金口座(ABLE口座)制度の運用が州政府に認められるようになりました。

この口座は、教育、医療、住宅、交通費などの一定の支払いにのみ利用できる口座です。この口座の重要な点は、この口座への入金(例えば、家族や友人などからの仕送り)には一定額(2018年は年間15,000ドル)まで贈与税がかからないことに加えて、総額が一定額までは、社会保障関係の手当や医療保障制度の受給資格を失わないことです。

例えば、障害者も多く受給している補足的所得補償給付(Supplemental Security Income:SSI)という就労困難者向けの手当には、資力調査があり、一定の資産があると受給できませんが、この口座の預金は総額10万ドルまで、手当を停止されません。

これまでは、社会保障障害年金(Social Security Disability Insurance)、補足的所得保障給付やメディケイド(MEDICAID:低額所得者のための国民医療保障制度)などは、一定額以上の預金(2,000ドルなど)があれば、その適用から外れてしまうということから、障害のある人が、自立するために働いて預金をすると、これらの手当が停止されたり、医療費を自己負担しなければならなくなり、働くことができないというジレンマがありました。エイブル法は、この問題を解決するために導入されました。

エイブル法の成立後3年程度で、各州が州法などを改正し、この制度(ABLEプログラムという)を導入しました。

また、連邦政府は、2015年12月、エイブル法を修正し、州の居住要件を廃止しました。これにより、障害のある人びとはすべての州でABLE口座を開設できるようになりました。

2016年3月には、エイブル法関連の次の3つの法律が連邦議会に提出されました。

①エイブル・トゥ・ワーク法(ABLE to Work Act)は、ABLE口座への年度の入金の限度額(2018年は15,000ドル)を、連邦基準による一人世帯の貧困線(現在は12,060ドル)または本人の収入のうちどちらか少ない方の額だけ増やすことを認める法律です。

②エイブル・ファイナンシャル・プランニング法(ABLE Financial Planning Act)は、年間最大入金額まで、通常の529条口座から529A項口座(ABLE口座)に預金を移すことを認める法律です。例えば、もともと、子どものために529条口座を開設していた場合に、その預金をABLE口座に移動できるというようなことができるようになります。

③エイブル・エイジ・アジャストメント法(ABLE Age Adjustment Act)は、口座開設の資格を得られる年齢を26歳から46歳に上げるというものです。

2017年12月には、これらの法律のうち①と②が成立しました。

エイブル法関連については、下のサイトをご覧ください。
http://www.ablenrc.org/

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