地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-ふるさと納税の返礼品で障がい者支援~長野県駒ヶ根市の取り組み~

「新ノーマライゼーション」2020年9月号

駒ヶ根市総務部企画振興課
米村真一(よねむらしんいち)

駒ヶ根市の紹介

駒ヶ根市は、中央アルプスと南アルプスに囲まれた、長野県南部の自然豊かな人口約3万2000人の都市です。駒ヶ岳ロープウェイのある中央アルプスの玄関口であり、これまで山岳観光都市として発展してきました。駒ヶ根市には大自然の恩恵である豊富で良質な水と、肥沃な土地から生み出されるみずみずしい野菜や果物、長い間刻まれてきた歴史や伝統文化など、多くの地域資源があり、近年では、自然環境や美しい景観などに惹かれ、都会からの移住者も増えています。

ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、生まれた故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度です。また、「子育て支援に活用してほしい」「福祉事業に活用してほしい」など、寄付金の「使い道」が指定でき、「返礼品」がもらえるといった点で大変魅力的な制度となっています。駒ヶ根市の返礼品は、地場産のお米やお酒(地ビール・ウイスキーなど)、お肉や果物(りんご・シャインマスカットなど)、アウトドア関連商品など、200種類以上の商品をラインアップしています。取扱商品は、地場産品(市内で生産されているものや市内で栽培された原材料を使用しているものなど)であることが条件で、駒ヶ根市の魅力発信に繋がるような商品を事業者の皆さんからご提案していただき決定しています。

返礼品として提供するメリット

事業者の皆さんが返礼品として提供するメリットは大きく分けて2つあります。1つ目は、インターネットの寄付受付サイトへの掲載料や各種手数料などの費用が一切かからないことです。例えば、新商品や試作品をふるさと納税の返礼品として最初に提供してみることで、市場の感触をつかむというように活用していただくことができます。2つ目は、店頭販売以外での販路拡大に繋がるということです。返礼品としてインターネット上に掲載することにより、北海道から沖縄まで全国のさまざまな人に見てもらい知ってもらう機会の創出に繋がります。最終的には、ふるさと納税の返礼品としてではなく、直接の取引に繋がる可能性も大いにあるため、店頭販売以外での販路拡大が難しい事業者にとっては、絶好の販売ツールになりえます。また、福祉事業者の視点でみれば、寄付申込の増加により、受注が増えれば、利用者の方の「働きがい」や「やりがい」にも繋がると思います。

社会福祉法人アンサンブル会との連携

駒ヶ根市への新店舗の出店がきっかけで、アンサンブル会の担当者からご提案をいただき、令和元年12月からふるさと納税の返礼品として取扱うことになりました。当初は、「クッキーの詰合せセット」のみのご提案でしたが、知的障がいのある利用者の皆さんが季節に応じた四季折々の野菜を一生懸命栽培し、実際に配送もしているという話をお聞きし、「季節野菜の詰合せセット」も返礼品として取扱うことになりました。当時、駒ヶ根市の返礼品には野菜商品がなく、特に野菜の定期便(3か月連続でお届けするなど)については需要があることは分かっていましたので、返礼品としてラインアップできたこと、またアンサンブル会のような福祉施設の商品を返礼品として取扱うことにより、障がい者の支援にも繋がるということが、とてもうれしかった記憶として残っています。現在、季節野菜の定期便は、毎月必ず申込がある主力商品の一つとなっています。

最後に

ふるさと納税という制度を通じ、寄付者への返礼品というかたちで、アンサンブル会のような福祉施設への直接的な支援ができることは、駒ヶ根市として大変意義のあることだと思います。今後も、アンサンブル会が目指す「知的障がいのある人たちの仕事を通した社会参加と自立」の一助となり、さらに市内各所の福祉施設とも連携を図ることで、地域産業の発展に繋がるよう努めていきたいと思います。

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