2018年障害者雇用実態調査結果

厚生労働省が2018年6月に行った障害者雇用実態調査(以下、2018年調査)結果が、2019年6月25日に同省職業安定局障害者雇用対策課就労支援室により公表されました。同調査は、常用労働者数5人以上の民間事業所を対象にサンプル調査として5年ごとに実施されています。同調査結果の概要は、つぎのとおりです。

(1)雇用者数

調査対象となった事業所で雇用されている障害者数は、約85.1万人で、前回(2013年調査)の約63.1万人とくらべ、約22万人(約35%)増えています。その障害種別内訳は、身体障害者42.3万人(前回43.3万人)、知的障害者18.9万人(前回15.0万人)、精神障害者(発達障害者を含む。)23.9万人(前回4.8万人。ただし、発達障害者は含まれていません。)で、前回とくらべ、身体障害者は約1万人減少しているのに対し、知的障害者は約3.9万人増、そして精神障害者は19.1万人増(ただし、発達障害者を除くと15.2万人増)となっています。

また、厚労省は障害者雇用促進法に基づく障害者雇用率制度(以下、雇用率制度)の対象となる、現在は常用労働者数45.5人以上の民間企業における障害者雇用状況(毎年6月1日現在のもの。以下、6・1調査)を公表していますが、それによれば対象企業で雇用されている障害者数(実数、2018年)は45万379人で、2013年の32万3,839人とくらべ、12万6,540人(約39%)増えています。その障害種別内訳は、身体障害者25万6,153人(2013年22万4,889人)、知的障害者11万144人(2013年7万2,786人)、精神障害者8万4,082人(2013年2万6,162人)で、身体障害者(約3万1,000人増)、知的障害者(約3万7,000人増)とくらべ、精神障害者(約5万8千人増)の増加数がかなり大きくなっています。その主な理由は、2013年の障害者雇用促進法改正により2018年4月1日から精神障害者(ただし、精神障害者保健福祉手帳所持者)も雇用義務の対象となったためと考えられます。

なお、2018年調査結果と2018年6・1調査結果から、雇用率制度の対象とはならない45.5人未満の小企業(ただし、常用労働者数5人未満の事業所(企業)で雇用されている障害者数については、未調査で不明。)で約40.1万人(全体の約47%、つまり全体の約半分)の障害者が雇用されていることがわかります。

(2)事業所規模別雇用状況

常用労働者数5人以上の事業所を対象とした2018年調査と常用労働者数45.5人以上の企業を対象とした2018年6・1調査(ただし2013年6・1調査は常用労働者数50人以上の企業が対象)における事業所(企業)規模別雇用状況を比較すると、前者では雇用率制度の対象とはならない常用労働者数29人未満の事業所およびそのかなりが雇用率の対象とならない常用労働者数30人以上、100人未満の事業所が最も多くの障害者を雇用しているのに対し、後者では1,000人以上の大企業で全体の半数近くの障害者が雇用されています。つまり、雇用率制度による障害者雇用は大企業が中心となっているのに対し、事業所(企業)全体としてみると、雇用率制度の対象とはならない小規模企業が障害者雇用できわめて大きな役割を果たしていることがわかります。

しかし、これらのデータだけではよくわからないのは、(1)雇用者数で言及したように、2018年調査および2018年6・1調査とも2013年の調査とくらべ、精神障害者の雇用者数が大きく増えているにもかかわらず、企業規模別雇用者割合をみると、2018年6・1調査で精神障害者の雇用者割合が増えているのは、常用労働者数45.5人~99人規模の企業のみであり、1,000人以上規模の企業も含め、その他の規模の企業ではその雇用割合がむしろ減少していることです。一方、表1を見ると、2018年調査では、常用労働者数5人~29人規模の事業所で雇用されている精神障害者の割合が、2013年調査の25.7%から70.5%へと約2.7倍も増えていることが注目されます。これらの小規模事業所(企業)は、雇用率制度の対象とはならないだけに、どうして精神障害者の雇用がこれほど大きく伸びたのかの原因究明が求められるのではないでしょうか。

表1 2018年調査 単位%( )内は2013年調査の%

  5~29人 30~99人 100~499人 500~999人 1,000人~
身体障害者 37.0(42.7) 28.9(21.9) 21.6(23.7) 5.5(5.1) 7.0(6.6)
知的障害者 45.4(35.8) 30.0(35.7) 18.4(20.5) 3.3(5.8) 3.0(2.1)
精神障害者 70.5(25.7) 15.9(35.2) 9.2(29.4) 2.4(4.4) 2.1(5.3)

表2 2018年6・1調査  単位%( )内は2013年調査の%

  45.5~99人 100~299人 300~499人 500~999人 1,000人~
身体障害者 10.3(8.9) 20.7%(19.7) 9.1(9.6) 11.9(12.7) 48.0(49.7)
知的障害者 12.5(12.6) 20.8(20.8) 8.3(9.3) 10.4(10.6) 48.0(46.7)
精神障害者 12.4(10.5) 20.8(21.3) 8.4(10.7) 12.4(12.7) 46.1(53.1)

(3)雇用形態・労働時間別状況

表3および4からは、知的障害者および精神障害者については非正社員が7~8割を占めているにもかかわらず、それらの障害者の相当部分も週30時間以上のフルタイム同様の働き方をしていること、また精神障害者についてはその障害特性から30時間未満の短時間労働に従事しているものが半数以上を占めていることがわかります。

表3 雇用形態別状況(2018年調査) 単位%( )内は2013年調査の%

  正社員 非正社員
身体障害者 52.5(55.9) 47.1(43.8)
知的障害者 19.8(18.5) 80.0(81.3)
精神障害者 25.5(40.8) 74.4(58.9)

表4 労働時間(週)別状況(2018年調査) 単位%( )内は2013年調査の%

  30時間以上 20時間以上30時間未満 20時間未満
身体障害者 79.8(81.8) 16.4(12.0) 3.4(5.5)
知的障害者 65.5(61.9) 31.4(26.5) 3.0(10.4)
精神障害者 47.2(68.9) 39.7(26.2) 13.0(4.2)

一方、表5からは、雇用率制度の対象となる企業で働く身体障害者および知的障害者の大半が、また精神障害者についてもその半数以上が、週30時間以上のフルタイム同様の働き方をしていることがわかります

表5 労働時間(週)別状況(2018年6・1調査)  単位%( )内は2013年6・1調査の%

  30時間以上 20時間以上30時間未満
身体障害者 89.1(91.3) 10.9(8.7)
知的障害者 80.3(82.7) 19.7(17.3)
精神障害者 53.1(67.4) 46.9(32.6)

(注)労働時間週20時間未満の障害者については、雇用率制度の対象とはならないため、たとえ実際には週20時間未満で就労する障害者がいたとしても6・1調査には計上されません。

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