地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-東京都におけるソーシャルファーム支援に向けた取組

「新ノーマライゼーション」2020年10月号

東京都産業労働局雇用就業部

ソーシャルファームとこれまでの東京都の取組

「ソーシャルファーム」という言葉を耳にしたことがあるでしょうか?

ソーシャルファームとは、自律的な経済活動の下、就労に困難を抱える方が、多数雇用され、必要なサポートを受けながら、他の従業員と共に働いている社会的企業のことです。ソーシャルファームは1970年代のイタリアで誕生し、現在では、ドイツ、イギリスなどのヨーロッパや韓国などに広がり、ヨーロッパ全体で約1万社、韓国で約2千社が存在しているといわれています。海外のソーシャルファームは、主に障害のある方が、他の労働者と一緒に仕事をする場を提供する組織として発展してきました。

日本では、民間においてソーシャルファームに関する社会的気運の醸成や創設の推進に取り組まれてきましたが、まだまだ初期段階でありました。そこで東京都は、令和元年12月に全国で初めてソーシャルファームについて定めた「都民の就労の支援に係る施策の推進とソーシャルファームの創設の促進に関する条例」を制定しました。この条例では、都と都民、事業者等が相互に理解を深め、社会の一員として共に活動しながら支え合う「ソーシャル・インクルージョン」の考え方に立って就労の支援を進めていくと共に、ソーシャルファームの創設や活動を促進していくことなどを盛り込んでいます。

また、今年6月には、都がソーシャルファームを認証するための基準や、都が行う支援策等を盛り込んだ「東京都ソーシャルファームの認証及び支援に関する指針」を定めました。

指針のポイントは以下のとおりです。

指針のポイント

1.ソーシャルファームは、事業所を単位として認証します。

2.就労に困難を抱える方とは、就労を希望しながら、心身の障害をはじめ社会的、経済的その他の事由によって就労することが困難で、配慮すべき実情等に応じた支援が必要な方です。

3.認証ソーシャルファームの従業員の総数に占める就労に困難を抱える方の割合は20%以上かつ、就労に困難を抱える方の雇用者数は3人以上である必要があります。

4.認証期間は5年間とし、更新も可能です。

5.都は、検討期、創設期、運営期の3つの段階に分け、以下の支援を実施します。

〇検討期は、ソーシャルファームを広く普及するための広報、支援策等に関する情報提供や就労に困難を抱える方の雇用ノウハウの提供などを実施します。

〇創設期は、事業所の改築・改修費など創設に係る経費の助成、資金調達の支援、就労に困難を抱える方の雇用に係る支援などを実施します。

〇運営期は、就労に困難を抱える方の雇用や経営の支援等に係る経費の助成や、経営や就労に困難を抱える方の雇用に係る相談・助言、資金調達の支援などを実施します。

6.ソーシャルファームは、事業からの収入を主たる財源として運営する社会的企業であることから、経費の助成による支援の期間は原則5年間としています。

ソーシャルファームの認証に向けて

今後は、都内にソーシャルファームを誕生させていくため、ソーシャルファームを目指す事業者の方を募集していきます。

事業者の方には、事業計画書や就労に困難を抱える方の雇用計画書などをご提出いただく予定です。都は、企業経営や就労支援の専門家等で組織する認証審査会において認証基準に適合していることを確認の上、総合的に審査します。

こうした審査をクリアした事業所について、都はソーシャルファームとして認証し、さまざまな支援を実施していきます。

事業者の募集等の詳細や最新情報につきましては、今後、東京都のホームページ等に掲載していく予定です。本稿をご覧いただき、ソーシャルファームの理念に賛同いただける方は、ぜひソーシャルファームの創設をご検討ください。

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