電話リレーサービスに期待すること~盲ろう者の立場から

「新ノーマライゼーション」2020年11月号

富山盲ろう者友の会 会長
九曜弘次郎(くようこうじろう)

私は目と耳両方に障害のある盲ろう者です。目は生まれつき見えません。耳は小さい頃は普通に聞こえていたのですが、15歳を過ぎた頃から少しずつ聴力が低下し、現在は補聴器と人工内耳を使用しています。

聞こえていた頃の私は電話が大好きでした。友達とたわいもない会話を楽しんだり、家電製品の使い方をメーカーに電話して聞いたり、ラジオのリクエスト番組に電話でリクエストしたり、テレホンサービスで情報を得たりなど、電話は楽しく便利なものでした。ところが、耳が聞こえにくくなり、いつしか電話は苦手なものに変わっていました。そして、できるだけ電話を使わず、メールなどの文字による連絡手段を利用するようになっていきました。

そんな中、2013年に、電話リレーサービスの実証実験が行われるという話を聞きました。これはぜひ盲ろう者にも利用できるシステムにしてほしいと思い、実証実験に参加することにしました。私はパソコンやスマートフォンにスクリーンリーダーをインストールし、点字ディスプレイを接続して、画面の内容を点字で読んでいます。電話リレーサービスが点字でも利用できるかを確かめたいと思ったのです。そして、利用してみた結果、特定のスクリーンリーダーを使用すれば、電話リレーサービスが利用できることがわかりました。しかし、こちらの発言を入力し、オペレーターからの通訳を点字で読み、またそれに対する応対を入力するといった作業は、かなりキー入力や点字の読みに熟練している必要があると感じました。私は小さい頃から点字の読み書きをやっていますし、パソコン歴も30年ほどでキー入力もそこそこ早い方だと思いますが、それでも長く会話しているとかなり疲れます。

また、電話でチケットを購入する際などカード番号を伝える必要があり、通訳のオペレーターにもカード番号を開示することになってしまうので、プライバシーの問題があり難しいと感じました。

さらに、盲ろう者が気軽に外出先で電話リレーサービスを利用できるためには、盲ろう者の間で広く用いられている「ブレイルセンス」という点字情報端末で利用できることが理想です。ブレイルセンスは、点字でメールやウェブサイトの閲覧などが行える機器で、盲ろう者が外出先で連絡を取ったり情報を得たりするのに使っている機器です。そのためには、電話リレーサービスの利用画面がもう少しシンプルな設計だとよいのではないでしょうか。

また、弱視の盲ろう者から、手話や文字が見えにくいといった意見も聞いています。これまで実証実験のアンケートにおいてもたびたび伝えてきたことですが、ぜひ盲ろう者の意見も反映していただきたいと願っています。

電話は我々の生活に欠かすことのできないものです。そのため、聴覚障害者も、盲ろう者も、電話を利用することが保障されることを願っています。

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