海外情報-韓国の障害認定制度の変更とその後の動向

「新ノーマライゼーション」2020年11月号

Director of Research Institute For Together Life OKEDONGMU 李美貞

韓国は2019年7月から障害者に提供されるサービスを「障害者サービス支援総合調査」によるものに変えました。しかし、新しい制度では提供されるサービス量が減少する可能性があるということで障害者団体の反発も強くなっているため、韓国政府は「障害者サービス支援総合調査の告示改正委員会(以下、告示改正委員会)」を設置し、問題改善に向けて取り組んでいます。

2019年9月から2020年6月までの間に開催された告示改正委員会は保健福祉部の障害者政策局長を委員長とし、障害者団体代表6人、専門家5人、政府関係者2人で構成される協議体でした。主に障害者サービス支援総合調査の改善方向を模索するとともに移動支援サービスの基準を作ることを目的としていました。

告示改正委員会は4回の会議を通して障害者団体などが指摘してきた内容を中心に分析し、今後どのような方向でいくべきかについて討論を行いました。また、移動支援サービスについては告示改正委員会で話し合った内容を公開し、関係機関や関係者の意見を集めているところです。

2020年6月22日障害等級制の段階的な廃止、障害者サービス支援総合調査導入の1年後の評価及び今後の課題に関する討論会で、告示改正委員会が討論している内容や障害者サービス支援総合調査の分析結果を発表しました。その概要は以下のとおりです。

1.サービス量の変化

障害者団体から多く指摘された部分は、従来の「障害者活動支援制度(日本の介護ヘルパー制度に似ている)」と比べ、サービスの量が減少するのではないかという恐れでした。告示改正委員会は障害者活動支援制度を利用している障害者の中で2019年7月から11月まで障害者サービス支援総合調査を受けた人を対象に分析した結果を発表しました。その結果によると障害類型には差がありますが、すべての障害類型でサービス量が増加しました。サービス量が増加した割合は79.74%、減少した割合は2.16%でした。さらに障害当事者が他人の支援が必要だと思う時間と障害者サービス支援総合調査により提供される時間を比較した結果、100.2%で満足していることも明らかになりました。

表1 活動支援制度と障害者サービス支援総合調査の給付量の比較(単位:時間/月,%)

区分 平均サービス量(給付量) サービス(給付)変動割合
活動支援制度 総合調査 増減 増加 同一 減少 全体
肢体障害 162.1 189.0 +26.9 72.57 24.70 2.74 100.00
脳病変障害 158.4 194.0 +35.7 80.78 17.15 2.07 100.00
視覚障害 123.6 140.5 +16.9 72.77 23.28 3.95 100.00
腎臓障害 76.5 93.3 +16.8 68.56 28.87 2.58 100.00
知的障害 103.3 122.5 +19.3 82.21 15.87 1.98 100.00
自閉性障害 102.8 120.1 +17.3 83.60 15.36 1.04 100.00
精神障害 77.9 99.5 +21.6 82.50 16.25 1.25 100.00
その他 90.2 110.3 +20.2 78.75 18.75 2.50 100.00
全体 120.4 142.6 +22.2 79.74 18.10 2.16 100.00

2.適切な障害類型別の特性を反映

障害者サービス支援総合調査については、障害特性が適切に反映されているのかが大きな話題でした。特に視覚障害者団体など一部の団体からは障害者サービス支援総合調査を廃止し、障害類型ごとのサービス支援調査票を新しく作ろうとする動きもありました。

告示改正委員会は、障害者サービス支援総合調査が多様な障害特性を反映すべきであると認識しました。そこで、障害者サービス支援総合調査が障害特性をどのくらい反映しているか、さらに、障害特性がより反映されるための方向性について討論を行いました。

その結果、現在の障害者サービス支援総合調査は視覚障害の特性を反映することに関してはある程度の限界があるが、視覚障害のために視・聴覚複合評価の項目を別に追加しており、その点数も高いため、別のサービス支援調査票を作ることは現実的ではないという意見をまとめました。ただ、障害類型別の特性がより反映されるよう努力を続けることとされました。さらにマニュアルの改善も続ける予定です。

3.サービス量が減少された方への対応

障害者サービス支援総合調査によりサービス量が減少した割合は2.16%でしたが、その計算には認定給付が含まれていました。認定給付は障害者サービス支援総合調査の結果、急激にサービス量が減少すると生活が難しくなるため、3年間は以前と同じサービス量を提供する制度です。その認定給付を受けている割合は19.52%で、彼らは認定給付がなくなる3年後にはサービス量が減少する予定です。

障害者サービス支援総合調査でサービス量が減少する理由としては、調査内容の変化、個人状況の変化、評価者の違いなどが挙げられましたが、真実は明らかになっていません。さらに調査結果に対する異議申請も厳しい調査により、なかなか受け入れない状況でもあります。

告示改正委員会はサービス量が減少する場合は、その理由を障害当事者に公式的に通知する必要性があると指摘しました。

4.サービス支援区分1が未発生

障害者サービス支援総合調査は個人の特性である機能制限(X1)、社会活動(X2)、世代の特性(X3)などに一定の計数(C)を加味して合計し、サービス量が決まる方式です。その計算では、一日最大16時間を支援する計画で、支援区分が16区分に細かく分かれていました。一番サービス量が多い支援区分1は、月460時間の支援を受けることができます。

しかし、告示改正委員会が分析した結果、サービス支援区分1に該当する人がいないことが明らかになりまた。理由はその計算式によるものでした。最大のサービス量をもらうためには、機能制限(X1)、社会活動(X2)、世代の特性(X3)ともに高い点数でなければなりませんが、それは現実的に無理でした。障害程度が最重度である人は機能制限に最高の点数を受けることができますが、一人暮らしはもちろん社会活動が難しいため、社会活動や世代の特性に関する点数を受けることができません。

告示改正委員会はその問題を改善するため、2つの方向について検討を行いました。1つ目は社会活動ができない最重度の障害のある人が区分1となるよう計数(C)を調整する方向、2つ目は障害者サービス支援総合調査の結果に基本点数として30点を追加する方向でした。その方向で予算を分析した結果、1つ目については9.5憶ウォンが、2つ目については4,424.6憶ウォンを追加で必要とすることがわかりました。

告示改正委員会は予算増の問題を踏まえて、1つ目がより肯定的であると認識し、長期的には社会活動(X2)の指標の作り直しを検討していくことを合議しました。

5.移動支援サービスの適用範囲と基準

移動支援サービスは全国的に19のサービスが実施されています。10は所得支援の一部である割引・減免制度であり、9は直接的なサービスです。告示改正委員会は障害者サービス支援総合調査が適用できる移動支援サービスとして「交通弱者の移動便利増進法」による特別交通手段の利用基準と特別駐車許可シンボルマークの発行基準を定めました。特別交通手段とは車いすの乗車設備等が装着された車両で、韓国では「障害者コールタクシー」と呼ばれています。

告示改正委員会では特別交通手段の利用基準と特別駐車許可シンボルマークの発行基準を作るため、現場の方や専門家を対象にデルファイ調査し、障害者サービス支援総合調査の中に成人用には7つ、児童用には4つの項目を選定しました。また、デルファイ調査の結果をもとに項目の重要度で点数を変えることにしました。

告示改正委員会が選別した移動支援サービス調査項目は、2020年10月「障害者サービス支援総合調査の内容及び点数算定方法に関する告示一部改正案」として公開され、意見を集めているところです。

表2 障害者サービス支援総合調査と移動支援サービスの項目の点数比較

区分 調査内容 調査項目 障害者サービス
支援総合調査
移動支援
サービス
算定方法
大人 ADL 1.転座 0 5 10 30 0 3 6 18 7個の項目のスコアを合算する
2.座位保持 0 3 6 18 0 4 8 24
3.歩行 0 4 8 24 0 5 10 30
4.移動 0 8 16 48 0 7 14 42
IADL 5.交通手段の利用 0 4 8 24 0 8 16 48
認知行動特性 6.注意力 0 10 20   0 12 24  
7.危険認識 0 9 18   0 21 42  
  228
児童 ADL 1.転座 0 3 6 18 0 3 6 18 4個の項目のスコアを合算する
2.歩行 0 9 18 54 0 8 16 48
IADL 3.交通手段の利用 0 4 8 24 0 9 18 54
認知行動特性 4.危険認識 0 3 6 18 0 7 14 42
  162
menu