ひと~マイライフ-原因の分からない拘束性換気障害 苦しいけれどチャレンジは続けたい

「新ノーマライゼーション」2020年12月号

中野佳弘(なかのよしひろ)

1961年生まれ。25歳からスポーツジムに通い始め、30代にはマラソン、40~50代にかけてはボディビルにも挑戦。フルマラソンの自己ベストは3時間40分。ところが50代半ばに原因不明の呼吸不全となり、在宅酸素療法を受ける生活に。病を押して仕事を続けるかたわら、呼吸器疾患の患者団体で活動したり、放送大学で勉学にも励んでいる。大阪府在住。

低酸素血症で「死ぬかも」と思うほどの息切れ

私は「拘束性の慢性呼吸不全」です。でもこれは症状であって、病名ではありません。4年ほど前、地下鉄の階段で「どうも息苦しい」と違和感を覚えたのが最初の徴候でした。その半年後、2歳の姪を抱っこして100メートルほど歩いただけで肩でハアハア息をしている自分に気づいて、「これは普通じゃない!」と思いました。

かかりつけの医師に相談すると、レントゲン写真を見て「心臓が肥大している」と循環器内科を勧められ受診しましたが、結果は「異常なし」でした。そう言われても息苦しさは変わらないので、呼吸器内科に行きました。さまざまな検査をして「拘束性の換気障害」と診断されました。“拘束性”とは肺が膨らみにくく息を吸うのが困難な状態です。ただ、「間質性肺炎ではない」「肺炎も起こしていない」など、同じような症状の他の疾患の可能性を否定する内容でした。「原因不明」だというのです。「とりあえず様子をみましょう」ということになりました。

歩いたり階段を上がったり、何かの拍子に血液中の酸素量が急に低下して低酸素血症になります。ひどい息切れが始まり、それはもう「死ぬかも…」と思うほどの苦しさです。夜寝ていても苦しい。受診後、1か月過ぎても変化はなく「在宅酸素療法(HOT)」の導入を告げられました。1週間入院して検査を受け、酸素の処方量(毎分何リットル必要か)を決め、そしてHOTの生活が始まりました。

常に酸素濃縮装置やバッテリーを持って外出

HOTはカニューレというチューブを通して鼻から酸素を吸入します。外出時には、空気中の酸素を集める酸素濃縮装置と予備のバッテリーなどをカートに載せて運びます。ポータブルな装置を使っていますが、荷物と一緒だとかなりの重さ、大きさです。「歩くだけで苦しいのに、わざわざ重い荷物を持って歩かねばならないとは!」。

担当医は「もうこれ以上できる検査がない」と言い、しかし病名が未確定のままではなすすべがないので、転院して最初から検査を受け直しました。でも「拘束性の慢性呼吸不全」という症状を確認できただけで、やはり原因は不明でした。私の肺年齢は「95歳」だそうです。

一般的にHOTが必要な人は、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や間質性肺炎など、慢性肺疾患の患者です。COPDは長年の喫煙も一因とされ高齢者が多いので、HOT患者の中で私は若いほう(!)です。

活動的であるよう努めるもコロナ禍に戦々恐々

仕事は菓子メーカーに勤めています。商品企画からプロモーション、広告、デザインなど、内容はさまざまです。仕事とは別に、地域活性化について思うところがあって、ボランティアで地元の地域情報紙(フリーペーパー)の編集に携わっています。地元地域の自然・歴史、文化を活かした地域づくりや未来への展望など、さまざまな情報を発信して地元への貢献につなげようと微力ながら努力しています。そのため、放送大学の教養学部(社会経営科学専攻)で勉強もしています。また、NPO法人日本呼吸器障害者情報センターという患者団体の会員になって、行政機関への陳情、肺疾患の啓発活動などのお手伝いもしています。

厳しい体調ではありますが、「こもって」しまうと体にも心にもよくないので、活動的であるよう極力努めています。とはいえ今のコロナ禍では、慢性肺疾患はコロナウイルス感染症を重症化させる大きなリスク要因とされます。“戦々恐々の日々…”が正直なところです。

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