[米国]第11巡回区控訴裁判所がWebサイトは「公共の場所」ではないと判断

近年、米国では、アクセシブルなWeb サイトを提供しないことは、障害のあるアメリカ人法(ADA)に違反しているという訴えが多数起こされています。その内容は、ADAのタイトルⅢは、一般に公開されている場所での障害に基づく差別を禁止し、企業にアクセスの障壁を取り除くことを要求しています。そのため、ホテル、レストラン、店舗、オフィスビル、医療、法律、会計事務所など、ほとんどのビジネスはこの対象になり、スロープの設置や点字のメニューなどを用意することが必要になっています。現在問題になっているのは、WebサイトがADAの「公共の場所」に該当するのかということです。

この問題に関する裁判は、2016 年 7 月に視覚障害のあるユァン・カルロス・ギル (Juan Carlos Gil)氏が、ウィン・ディキシー食料品チェーン店(Winn-Dixie grocery store)を訴えたことが最初です。スクリーンリーダー(視覚障害者が用いている画面読み取りソフトウェア)で同店のウェブサイトが読めなかったことから、処方箋を補充したり、オンラインクーポンをストアカードにリンクしたりすることができなかったとのことで、これはADA違反であると主張しました。

地区裁判所は、食料品店チェーンはADAタイトルⅢに違反していると判断し、Web サイトを Web コンテンツ アクセシビリティ ガイドライン (「WCAG」) 2.0 レベル AA に準拠させることを求めました。

この判決の結果、その後、全米で何千件もの同様の訴えが起こり、同様の判決が出されました。また、訴訟を防ぐために、多くの企業が WCAG 標準に準拠するように Web サイトを改良しました。

その後ウィン・ディキシー食料品チェーンは上訴し、数年の審議を経て第11巡回区控訴裁判所が判断を下したものです。

2021年4月7日、第11巡回区裁判所は、ADA のタイトルⅢには Web サイトを対象とする法律用語使われていないため、Web サイトは公共施設ではないと判断しました。裁判所は、厳格な原文主義アプローチを適用すべきであるというものです。

この判断が他の巡回区控訴裁判所の判断に影響するかどうかは分かりませんが、今後行われる判断が注目されます。

正確には、下の判決文のサイトをご覧ください。(寺島)
https://media.ca11.uscourts.gov/opinions/pub/files/201713467.pdf

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