行政の動き-令和3年度障害保健福祉関係予算案について

「新ノーマライゼーション」2021年2月号

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

令和3年度障害保健福祉関係予算案については、対前年度4.3%増の2兆2,351億円を計上しています。主な内容は、次のとおりです。

1 障害福祉サービス等の確保、地域生活支援などの障害児・障害者支援の推進 2兆2,131億円

○障害児・障害者に対する良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 1兆6,789億円
うち障害児支援関係 3,835億円

障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスや障害児支援を総合的に確保する。

○障害福祉サービス等報酬改定への対応

福祉・介護職員の人材確保・処遇改善にも配慮しつつ、感染症等への対応力強化等を踏まえ、改定率は全体で+0.56%とする。

※うち、新型コロナウイルス感染症に対応するための特例的な評価を+0.05%(令和3年9月末までの間)とする。

○地域生活支援事業等の拡充【一部新規】 513億円

障害者の理解促進や意思疎通支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じ、事業の拡充を図る。

○障害福祉サービス提供体制の基盤整備(社会福祉施設等施設整備費) 48億円

障害者等の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、就労移行支援事業等を行う日中活動系事業所やグループホーム、障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進する。

○障害者支援施設等における耐震化整備等支援事業

(令和2年度第三次補正予算 82億円の内数)

障害福祉サービス施設等の防災・減災対策を講じるための施設整備(耐震化整備、ブロック塀等改修、非常用自家発電設備の整備、浸水被害等に備えた改修等)に要する費用を補助するとともに、新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、多床室の個室化に要する改修等の経費について補助する。

○医療的ケア児への支援の拡充【一部新規】 2.2億円及び43百万円

地域において、医療的ケア児を受け入れる体制を促進するため、医療的ケア児等コーディネーターの配置を拡充し、相談体制の整備を進めるとともに、医療的ケア児等への支援者の養成、地域で関係者が協議を行う場の設置、医療的ケア児等に対応する看護職員確保のための体制構築、医療的ケア児等の家族への支援を行うなど、総合的な支援を実施する。

○視覚障害者・聴覚障害者等への情報・意思疎通支援の推進【一部新規】 4.2億円

令和2年7月に策定された読書バリアフリー基本計画を踏まえ、視覚障害者等が読書に親しめる環境を整備するため、インターネットを活用した点訳・音声図書の提供等を推進する。

また、令和2年6月に公布された電話リレーサービス法を踏まえ、公共インフラとして着実な実施を図るため、手話通訳者等の養成の推進や、新しい手話表現の普及などの取組を促進する。

図 障害福祉サービス等予算の推移拡大図・テキスト

2 地域移行・地域定着支援などの精神障害者施策、依存症対策の推進 222億円

○精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築【一部新規】 7.2億円

精神障害者が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指す。このため、障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する取組を行う。

また、精神疾患の予防や早期介入を図る観点から、メンタルヘルス・ファーストエイドの考え方に基づいた「心のサポーター養成事業」を実施し、メンタルヘルスやうつ病、摂食障害などの精神疾患に対する理解の促進及び地域や職場での支援を受けられる体制確保を推進する。

○依存症対策の推進 9.4億円

アルコール、薬物、ギャンブル等依存症をはじめとする依存症患者やその家族等が適切な治療や必要な支援を受けられるよう、全国拠点機関において、依存症対策に携わる人材の養成や情報発信等に取り組む。

都道府県等において、依存症の治療・相談支援等を担う人材育成、依存症相談拠点、依存症専門医療機関及び依存症治療拠点機関の選定・設置を行うことにより、依存症相談支援・治療体制、各地域における包括的な連携協力体制の整備等を推進する。また、依存症患者が救急医療を受けた後に適切な専門医療や支援等を継続して受けられるよう、依存症専門医療機関等と精神科救急医療施設等との連携体制を構築する。

さらに、相談支援や普及啓発等に全国規模で取り組む民間団体の支援や依存症の実態を把握するための調査を実施するとともに、広く国民一般を対象に依存症の正しい理解を広めるための普及啓発を実施する。

3 発達障害児・発達障害者の支援施策の推進 7.0億円

○発達障害児・発達障害者に対する地域支援機能の強化 2.7億円

発達障害児者の各ライフステージに対応する一貫した支援を行うため、地域の中核である発達障害者支援センター等に配置する発達障害者地域支援マネジャーの体制を強化することで、市町村や事業所等が抱える困難事例への対応促進等を図り、発達障害児者に対する地域支援機能を強化する。

4 障害者に対する就労支援の推進 22億円

○雇用施策と福祉施策の連携による重度障害者等の就労支援 7.7億円

重度障害者等に対する就労支援として、雇用施策と福祉施策が連携し、企業が障害者雇用納付金制度に基づく助成金を活用しても支障が残る場合や、重度障害者等が自営業者として働く場合等で、自治体が必要と認めた場合に、地域生活支援促進事業により支援を行う。

○共同受注窓口を通じた全国的な受発注支援体制の構築【新規】 16百万円

就労継続支援事業所の全国的な受発注を進め、都道府県域を越えた広範な地域から作業等の受注量を確保するため、その取組実績がある法人のノウハウを活かし、その法人が、全国の共同受注窓口の取組事例を収集・整理するとともに、自らも各地の共同受注窓口を通じた全国的な受発注の推進支援を実施する。

5 感染防止に配慮した障害福祉サービス等提供体制の確保 14億円

○障害福祉サービス等提供体制の継続支援【新規】 12億円

新型コロナウイルスの感染者等が発生した障害福祉サービス事業所等が関係者との連携の下、感染拡大防止対策の徹底や工夫を通じて、必要なサービス等を継続して提供できるよう支援するとともに、都道府県において、緊急時に備え、職員の応援態勢やコミュニケーション支援等の障害特性に配慮した支援を可能とするための体制を構築する。

menu