地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-埼玉県のケアラー支援について

「新ノーマライゼーション」2021年2月号

埼玉県福祉部地域包括ケア課

埼玉県では、全国初のケアラー支援に関する条例(「埼玉県ケアラー支援条例」。以下「条例」という)が、令和2年3月31日に公布・施行されました。条例では、すべてのケアラーが個人として尊重され、健康で文化的な生活を営むことができる社会の実現を目指し、県の責務のほか、県民や事業者、関係機関の役割が明記されています。

ケアラー・ヤングケアラーとは

条例第2条では、ケアラーを高齢、身体上又は精神上の障害又は疾病等により援助を必要とする親族、友人その他の身近な人に対して、無償で介護、看護、日常生活上の世話その他の援助を提供する者、ヤングケアラーを18歳未満の者と規定しています。ケアラーの範囲は、多様で広い定義となっており、核家族化の進展等により、家族へのケアの負担が大きなものとなっています。

すべてのケアを家族が担うのではなく、ケアラーを支えていく社会に転換していく必要があります。

実態調査の実施

条例第9条では、県が、ケアラー支援に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための推進計画を策定するものとされました。そのため県では、県内のケアラー・ヤングケアラーの現状や支援ニーズ等を把握するため、実態調査を行いました。

調査種別と対象は、次のとおりです。

1.ケアラー実態調査(対象:ケアラー本人、障害者関係団体)

2.ヤングケアラー実態調査(対象:県内高校2年生、スクールソーシャルワーカー)

3.県政サポーターアンケート

調査結果の詳細については、県HPをご覧ください。

実態調査
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条例
QRコード:条例のページQRコードのURLへ

調査結果を踏まえた課題と計画の策定

実態調査の結果から、以下のような課題がみえてきました。

(1)社会的認知度の向上

ほとんどの県民がケアラー・ヤングケアラーのことを知らない状況でした(ケアラー認知度17.8%、ヤングケアラー認知度16.3%)。県民がケアラー・ヤングケアラーを認識することが重要です。

(2)情報提供と相談体制の整備など支援体制の構築

ケアが原因で自分自身の生活や人生について悩みを抱えるケアラーが多くいることがわかりました。多様な悩みや求めている情報の提供に応じるための相談体制を整備することが求められています。

(3)孤立の防止

ケアラーやヤングケアラーは1人で介護等を担っていることも少なくありません。ケアに協力してくれる人が「誰もいない」と回答したケアラーやヤングケアラーもいました。ケアラーの孤立を防いでいくため、地域のネットワークの構築や居場所づくりも必要です。

(4)支援を担う関係機関の人材の育成

ケアラーにとって、地域包括支援センター、担当のケアマネジャー、サービス事業所の職員、障害者相談支援機関など、身近な相談機関等が信頼して相談できる場として機能していることがわかりました。今後は、ケアラーからの相談を担う可能性がある幅広い関係機関の職員等がケアラー支援について理解するなど、人材の育成が必要となってきます。

(5)ヤングケアラーの支援体制の構築

一定数のヤングケアラーの存在が明らかになりました。ヤングケアラーを見守ってくれる大人を増やすこと、相談できる場の整備や関係する支援機関の人材育成が求められます。

埼玉県では、これらの調査結果や有識者会議の議論等を踏まえて、今年度中に「埼玉県ケアラー支援計画」を策定する予定です。

今後とも、ケアラー支援へのご理解、ご協力をお願いいたします。

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