トッピクス-障害者権利条約 日本の審査でこう変わる 私たちの暮らし―JDF全国フォーラムの報告

「新ノーマライゼーション」2021年2月号

弁護士
田門浩(たもんひろし)

2020年12月7日、表題のテーマでJDF全国フォーラムが開催されました。新型コロナウイルス感染症流行の第3波が到来したといわれている最中で、参加者の安全を考慮してオンライン方式で行われました。北海道から九州まで200人のオンライン参加があり、来賓やパネリストの大部分もオンライン参加でした。JDF事務局など一部の人々が戸山サンライズに集まり、それぞれの役割にしたがって業務を行う形となりました。ここでは、新情報を中心に、数多くの挨拶や発言の中からピックアップして紹介します。全体司会はDPI日本会議の曽田夏記氏が務めました。

冒頭に主催者、来賓からの挨拶、メッセージがあり、その中で、在ニューヨークの国連経済社会局障害者権利条約事務局チーフ伊東亜紀子氏から、当日同地で行われていた権利条約締約国会議の状況、障害者権利委員の選出経過、国際障害者デーでの議論が紹介され、その中で、同氏は、コロナ禍以前に戻ることはない、以前よりもより良い社会にしないといけない、施策推進にあたってはもっと根本的に障害者権利条約からアプローチしていかないといけない、と訴えていました。

続いて、JDF代表阿部一彦氏から基調報告があり、政府による定期報告に対して、JDFは、2019年に事前質問事項用パラレルレポートの提出や障害者権利委員会事前作業部会でのブリーフィングを行い、総括所見用パラレルレポートを作成したこと、今後は各地域における取り組みが求められる、という話でした。

その次に、DPI日本会議事務局長佐藤聡氏の司会で、「障害者権利条約 日本の審査でこう変えよう! 私たちの暮らし」というテーマでシンポジウム第1部が行われ、まず、障害者権利委員会副委員長石川准氏から、2020年夏会期とワーキンググループでの活動報告、審査待ちの時間の増加、締約国の対応等を受けた条約体システム改革問題、リモート会期の問題、日本の審査時期の見通しが立たないこと等の報告がありました。続いて、日本弁護士連合会の辻川圭乃氏から、2019年に人権救済システムと自然災害時の保護措置を中心にブリーフィングを行ったこと等の話がありました。その次に、筆者から、新型コロナウイルス感染症の影響により人権問題が一層深刻になったと報告しました。

休憩後行われたシンポジウム第2部は、「新型コロナウイルスと障害者 権利条約を活かした新しい暮らしに向けて」というテーマで日本障害者協議会常務理事増田一世氏の司会により進められました。その中で、共用品推進機構専務理事星川安之氏から、障害者も使いやすい製品等を目指して国際的な提案をしていること、新型コロナ禍によりさまざまな不便が生じており改善を働きかけていきたいとの話がありました。次に、全国脊髄損傷者連合会事務局長安藤信哉氏から、「新しい生活様式」によりプラス面もあるがマイナス面も少なくなく、障害者を包括したかたちで新しい生活様式を構築していくことが重要であり、障害者総合支援法の訪問系サービスが在宅勤務に対応していないこと等の問題提起がなされました。これに続いて、指定発言として全国盲ろう者協会庵悟氏から、新型コロナウイルス感染症の流行により、盲ろう者が必要な支援が受けられないなど深刻な影響を受けているという報告がありました。

最後に、JDF副代表藤井克徳氏から総括があり、200人のオンライン参加があったが、やはりみんなで会いたい、ハイブリッド方式の新しいフォーラムが必要では、との話で締めくくられました。今回のフォーラムにあたり、助成していただいた財団に感謝するとともに、慣れないオンライン形式の運営にご尽力いただいた方々に多謝いたします。

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