リハ協アップデート

「新ノーマライゼーション」2021年3月号

当協会では、平成20年度からボランティア団体等と協力して、発達障害等により読みに困難のある義務教育段階の児童生徒に、マルチメディアデイジー教科書の製作・提供を行っています。

文部科学省が平成24年12月に実施した通常の学級に在籍する特別な支援を要する発達障害の可能性のある児童生徒の調査結果では、読みまたは書きに困難がある割合は2.4%、人数では約24万人で、この子どもたちが読みの支援を必要としています。

読みの困難さとは、文字がにじむ、ゆらぐ、鏡文字になる、文字がかすむ、などの見え方の問題だけでなく、「記号」である文字を「音」として認識することの困難や、名称を想起する速度が遅いこともある、と言われています。

紙の教科書では、読むこと自体に一生懸命になり、なかなか内容を理解するまでには至らないことがあります。マルチメディアデイジー教科書では、テキストデータをハイライトし、その部分が音声化されますので、聞くことが可能となり、どこを読んでいるかがわかります。そして、背景色、文字の大きさ、再生速度の変更も可能ですので、一人ひとりの困難さに応じたカスタマイズができます。読みに関する負担を減らし、本来自分が持っている能力を学習の目的に使うことができるようになります。

令和元年度はデイジー教科書の利用者が約1万2千名となりましたが、普及率は5%と限定的で、また、都道府県ごとの普及率の差が大きいことも課題です。さらに、言葉を学び、感性を磨き、表現力を高め、創造力を豊かなものにしていくためには、教科書の提供だけでは不十分であり、教科書で推薦している図書等読書活動を支える副読本のマルチメディアデイジー化も喫緊の課題となっています。当協会では微力ながらそのお手伝いもさせていただいております。(N)

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