知的障害の専門性を活かした特別支援学校の取り組み

「新ノーマライゼーション」2021年4月号

東京都立七生特別支援学校 校長
中村由美子(なかむらゆみこ)

本校は、小・中学部及び高等部を設置する知的障害特別支援学校です。本校の通学区域は学校所在地の日野市です。また学校に隣接する施設に入所する児童・生徒が通学しています。支援対象地域が1市という利点を生かし、主に4点のセンター的機能を発揮しています。

〔教員の授業力向上に向けた支援〕

本校の特別支援教育コーディネーター(以下「コーディネーター」といいます)が特別支援学級の担任研修会に参加、特別支援学級、通級による指導及び特別支援教室の各授業を参観し、授業力向上に向けて具体的な助言を行っています。また、「特別支援学級の専門性向上に向けた支援」(東京都教育委員会の事業)として、平成29年度から市内の知的障害特別支援学級設置校1校と提携し、若手教員の育成を中心に、授業改善、年間指導計画の作成、また教材作成の助言を行いました。夏季休業中には、市教育委員会と共催で「夏季公開研修会」を開催しています。本校近隣の大学を会場に、対象を市内の小・中学校の教員や関係機関職員とし、令和元年度は約150名の参加がありました。夏季休業中のため教員が参加しやすく、テーマは近年の特別支援教育の課題や小・中学校のニーズに応じたものを設定しています。この他にも、教員を対象とした研修会の講師依頼、また市内の保育所、幼稚園、小・中学校や高校からの幼児・児童・生徒の指導や支援に関わる相談に応じています。特に、保育所及び幼稚園においては、訪問して話を聴くだけでなく、幼児の様子を観察し、指導の手立てや構造化について、具体的に助言をしています。

〔小・中学校のコーディネーターの支援〕

小・中学校の特別支援教育の推進役となるコーディネーターの連絡会に本校のコーディネーターが助言者として出席し、コーディネーターとの連携を図っています。連絡会においては、本校が副籍制度について発信したり、小・中学校からは校内委員会や保護者対応の相談を受けたりしています。本校の児童・生徒が地域の小・中学校において直接交流などの交流及び共同学習をする場合には、交流が円滑に行われるように、必要に応じて小・中学校で出前授業を行っています。

〔就学に関わる支援〕

市教育委員会主催の特別支援教育就学・進学説明会に出席し、特別支援学校の概要について説明しています。また、就学相談においては、幼児・児童の行動観察を行い、就学にあたっての必要な情報を提供するとともに、必要な指導や支援、学習環境の工夫について、助言を行っています。

〔情報提供〕

本校は市の福祉に関わる手引きを作成し、保護者に配布しています。この手引きを市内小・中学校の知的障害特別支援学級にも配布し、活用してもらっています。

〔支援にあたって〕

上記の支援を行うにあたり、以前は専任コーディネーター1名が対応していましたが、現在は、小学部に3名、中学部及び高等部に各1名の兼任コーディネーターを配置しています。コーディネーターは主に所属学部に相当する学校に対し、支援を行っています。コーディネーター業務を複数の教員が分担することで、コーディネーターの育成だけでなく、経験や専門性に応じた支援ができること、異動等でコーディネーターが代わっても、継続性のある支援を行うことができるようにしています。

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