ひと~マイライフ-自分の道は、自分で決める

「新ノーマライゼーション」2021年4月号

鹿久保芹菜(しかくぼせりな)

1994年生まれ。東京都在住。脊髄性筋萎縮症(SMA)で、人工呼吸器を使用している。東京都立江戸川特別支援学校(現在の東京都立鹿本学園)を卒業後、東京コロニーのIT技術者在宅養成講座を受講。国家資格であるITパスポートを取得。2018年からは、フリーランスとしてデイジー図書製作の作業の一部を担当している。

私は、脊髄性筋萎縮症という難病を抱えています。人工呼吸器を使用しており、普段はベッドの上で生活しています。

江戸川特別支援学校に入学し、週に1回のスクーリングと週に2回の訪問授業で、学校生活を送りました。小学生の頃は、自分で鉛筆を持って文字を書いていましたが、次第にそれは厳しくなり、中学生の頃からはパソコンを使用して授業を行うようになりました。パソコンは、指一本ですべての操作が可能なワンキーマウスというものを使っています。パソコンの操作を一通り覚え、今では体の一部といっても過言ではありません。

卒業後の進路について考えた時、私は少しでも家族の役に立ちたいと強く思い、在宅就労の道を志しました。希望を聞いた進路担当の先生は、東京コロニーのIT技術者在宅養成講座を紹介してくださいました。この講座は、就労に向け、2年間でさまざまな知識を身につけることができます。学習は、基本的に自宅で行い、年に数回スクーリングがあります。私は、働くためにはまだ知識やマナーなどが不十分であると感じ、すぐに受講を決意しました。

2年間で、ITの知識やプログラミング、ビジネスマナーなどを学びました。学習する中で分からないことがあった時は、メールで質問する他、月に2回は講師の方が自宅を訪問してくださり、直接ご指導いただけます。難しい内容が多く、挫折してしまいそうな時もありましたが、講師の方が丁寧に教えてくださったので、前に進むことができました。ビジネスマナーでメールの書き方について学習し、身につけたことを仕事に活かすことができています。

受講修了後、ITに関する基礎的な能力を証明するための国家資格である、ITパスポート試験にも挑戦しました。問題は全部で100問あり、代筆や時間延長、問題の拡大などの配慮を得て、試験に臨みました。一度は失敗しましたが、2度目の受験で合格することができました。自分の努力が実り、うれしさが胸に込み上げてきました。自分への自信にも繋がり、ここまで頑張ってきて本当によかったと、心から思いました。

受講を始め、新しい友人にも出会えました。困った時はいつでも相談に乗ってくれます。一緒にカラオケや東京ディズニーランドにも行き、楽しい思い出を作ることができてとてもうれしいです。私にとって、本当に大切な存在です。

現在は、フリーランスとしてデイジー図書製作の作業の一部を担当させていただいています。デイジー図書は、文字を読むことが困難な方のために開発されたものです。私は、読み上げられた文章のイントネーションを細かく修正したり、ルビの編集作業などを行っています。イントネーションを修正する作業は、言葉の意味を考えながら行うので、少々時間がかかりますが、とてもやりがいのある仕事です。文字を読むことが難しい方にも、物語の楽しさを知ってもらいたいです。この仕事に出合えたことに、心から感謝しています。

私はいつもできないことがあっても、諦めるのではなく、どうしたらできるようになるのかを考えるようにしています。障害があっても、夢を諦める必要はありません。自分の可能性を決めるのは、周りではなく「自分」です。進みたい道を見つけたら、たとえ少し回り道をしたとしても、一歩一歩自分のペースでゴールを目指していけばよいと思います。私はこれからも向上心を持ち続け、いつも支えてくれる家族に感謝しながら、笑顔で前向きに生きていきたいと思います。

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