地域発~人をつなぐ地域をつなぐ-みんながつながり支え合える社会

「新ノーマライゼーション」2021年6月号

多機能型事業所ITSUMO 統括管理
小野恭太(おのきょうた)

多機能型事業所ITSUMOは、2019年4月に開所しました。駄菓子屋に缶詰カフェ、御用聞きに農家さんのお手伝い。そんなことをやりながら、障害のある方たちの「大人の当たり前」を目指して、活動しています。

ITSUMOの主な事業は、生活介護事業になります。利用されている方は、重度の知的障害がある方がほとんどです。その方たちが駄菓子屋や御用聞きなどを通して、地域の人とかかわったり、地域を支えたりしています。

障害が重いと将来の選択肢は狭まります。私たちは高校を卒業した後、さまざまな進路の選択肢がありますが、特別支援学校に通っている重度の知的障害児は、進路として生活介護事業1本だと思います。その上、千葉市ではそこまで事業所を選べる数はありません。また、大体、生活介護事業所の活動内容は似たり寄ったりです。だから、私たちは、せっかくやるならば、せめてその生活介護事業の中だけでも、選択肢となりえる形を作ろうとITSUMOを立ち上げました。

そこで考えたコンセプトが、「大人の当たり前」です。「大人の当たり前って何?」「日中は働いているな」「いろいろな人と出会うよね」等を考え、まず地域の方とつながり、地域を調べ、自分たちができること、障害者ができることの可能性を考えました。そこで生まれた仕事が、御用聞きと駄菓子屋です。

御用聞きは、地域の方からのちょっとした困りごとに5分100円で応えます。ゴミ出しや荷物の運び出し、窓拭き、草抜きなど、仕事内容は、障害が重くても職員が付いてできることが多いものばかり。依頼者は高齢者が多く、本当にちょっとしたことで困っている方が地域には多いのだと御用聞きを通して実感します。また、作業後、毎回お茶やお菓子を出してくれるおばあちゃん、作業が終わっていないのに、「休憩とって」とお茶菓子を出してくれる方、毎回お話が長くなりなかなか戻れない利用者さんと職員など、かかわっていく中で、物理的な困りごと以外にも、かかわりやつながりなど目に見えない部分も必要とされているのだと感じています。これから、夏に向け、仕事が増える時期です。いろいろな方と出会えるのが楽しみです。

駄菓子屋は、事業所に駄菓子屋を作りました。体力がなかったり、歩行が難しかったり、作業をすることが難しい、言葉もうまくしゃべれない、でも、人とかかわるのは大好きなメンバーが駄菓子屋に入っています。外に出ることが難しいメンバーが、外の人とかかわるには、外の人が来てくれるのが一番です。だから、地域を調べた時、子どもが多い地域と知り、地域に活用され、一般の方が入りやすくするには、駄菓子屋がうってつけでした。

オープン当初は、来てくれる子どもたちもどこかよそよそしく、利用者さんがかかわろうとハイタッチをしようとしたり、お菓子を渡そうとしても、避けたり、後ずさりされていました。おそらく、今まで障害者とかかわることがなかったのだと思います。それでも、毎日駄菓子屋を開けていると、少しずつお客さんは増えていきました。子どもたちも、ITSUMOのことを利用者さんのことを知るようになってからは、ハイタッチを返してくれたり、お菓子を渡そうとする利用者さんに対し、「また押し売りするお兄さんいるよ」と気さくに話しかけたり。今では、毎日、子どもたちの放課後のたまり場となっています。そこに、障害者が当たり前にいる風景がITSUMOにはあります。

まとまりなくITSUMOの話を書いてしまいましたが、千葉市の都賀駅近くでこんなことをやっているのが、私たちの法人です。今年から、さらに生活介護事業所mazekozeを開所させ、また新しい挑戦をしています。これからどんな地域、事業所になるか楽しみです。

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