特別支援学校生への食事配慮

「新ノーマライゼーション」2021年7月号

全国障害者総合福祉センター(戸山サンライズ) 業務課 業務第一係長
松澤敦子(まつざわあつこ)

全国障害者総合福祉センター(戸山サンライズ)(以下、当センター)は、宿泊部門を併設する完全バリアフリーの施設です。例年多くの特別支援学校の皆様にご利用いただいておりますが、その都度、レストランの調理師たちと安全・安心な食事提供のあり方を検討し、実践してきました。現在はコロナ禍で学校の給食では黙食を余儀なくされ、食事の楽しさを失いつつある状況を憂慮しています。

今回は、当センターの食事提供に関する取り組みと工夫について概要をご紹介します。

特別支援学校に限らず、食品アレルギーがある方が宿泊を伴う場合、アレルギーの原因となる成分を含んだ食品を取り除いた食事提供の対応や、ご希望にそった形態のきざみ食、ペーストの対応をしています。また、外国人居住者の増加により、当センターに宿泊される外国の方でアレルギー症状を引き起こす原因となる食品などで食べることができないものや宗教的な理由で食べてはいけないものがあるので配慮が必要になります。

ご利用までの流れとしては、障害者団体の宿泊予約は18か月前から受け付け、事前に下見を兼ねた打ち合わせを行い、アレルギーの有無などを確認します。その後、アレルギー等を記載した宿泊確認書や個別の情報を入手し、1か月前までに献立を考え、3週間前までに確定させます。献立表は表示や記入漏れがないことはもちろん、安全で不安のない食事提供を行うため、料理名もシンプルにします。また、連泊の場合は献立の重複にも注意が必要です。

食材の仕入れは前日または当日に行いますが、体調不良な生徒がいた場合、かむ力に応じてきざみ食や水分量の調整などを行います。

表は、実際に提供したメニューの一部を抜粋したものです。

表 アレルギーのある生徒に提供したメニュー(一部抜粋)

団体向け通常メニュー(一部抜粋) アレルギー用代替メニュー(一部抜粋)
スパゲティナポリタン 麺)デュラム小麦粉・食塩)ソース(トマト・玉葱・マッシュルーム・赤ピーマン・にんにく・ベーコン・ぶどう果糖液糖・食用食物油脂・醸造酢・食塩・チキンエキス乳脂肪・香辛料・バター・全粉乳・加工澱粉・調味料(アミノ酸等)・パプリカ色素・クエン酸 スパゲティナポリタン 米粉パスタ・鶏ひき肉・たまねぎ・ピーマン・トマト・オリーブオイル・塩
コーンスープ スイートコーン・デキストリン・小麦粉・脱脂粉乳・砂糖・澱粉・食塩・食用油脂・チーズ・酵母エキス・香辛料・調味料(アミノ酸等)・増粘剤(グァーガム)・香料 すまし汁 昆布だし・わかめ・塩
エビフライ 衣(パン粉・小麦粉・タピオカ澱粉・コーンフラワー・食塩・砂糖・卵白粉)・えび加工澱粉・増粘剤(グァーガム)・牛乳・調味料(アミノ酸等)・乳化剤・リン酸塩 白身魚のソテー 白身魚・オリーブオイル・塩・胡椒
グラタン 牛乳・えび・ナチュラルチーズ・玉葱・とうもろこし・マカロニ・小麦粉バター・砂糖・食物油脂・乾燥スープ・食塩・香辛料・増粘剤(加工澱粉・調味料(アミノ酸等)セルロース・カラメル色素 グラタン 豆乳・オリーブオイル・米粉・玉ねぎ・エビ・塩・胡椒
カニクリームコロッケ 小麦粉・ショートニング・玉葱・カニ・粉末卵白・食塩・カニエキス・香辛料・はっ酵調味料・酵母エキス・エビエキス・デキストリン・衣(パン粉・小麦粉・澱粉・食塩)ファットスブレット・香辛料・調味料(アミノ酸等)・カゼインNa/カロチノイド色素・乳化剤 鶏肉の唐揚げ 鶏肉・砂糖・片栗粉・米粉・醤油(大豆・小麦を使っていないアレルギー用)

通常メニューにアレルギー症状を引き起こす原因となる成分を含んだ食品がある場合は、代替メニューで対応します。

一口に「アレルギー症状」といっても命にかかわる場合もありますので、使用食材を記載した献立表を事前に提示し、摂取経験の有無を確認し、その都度了解を得ます。

また、当センターでは、「新鮮な食材を使った手作り料理」を基本とし、生徒一人ひとりの食物アレルギーの状況だけでなく障害状況や基礎疾患を把握し、「クラスメートとともに楽しい時間を共有する」という食事の基本を実現させる気持ちを忘れずに、日々工夫と試行錯誤を繰り返しています。

当センターのレストランも昨年8月から休業状態ではありますが、一日も早く元の生活に戻ることを祈りつつ、どなたでも安心して泊まれる環境づくりを続けていきます。

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