快適生活・暮らしのヒント-iPhoneは暮らしの必須アイテム!

「新ノーマライゼーション」2021年10月号

ナチュラルリレーションズ(視覚障碍者支援団体・石川県金沢市)
細川元美(ほそかわもとみ)

私は中途の視覚障害者でロービジョン、いわゆる弱視者です。弱視の見え方というのはそれぞれ違っています。私の場合は黄斑ジストロフィーという病気で網膜の中心部=黄斑部が変性していく進行性の病気です。黄斑部にはたくさんの視細胞が集まっていて細かいものを識別したり色を見分けたりしています。人は黄斑部にピントを合わせるようにしてものを見ています。この黄斑部に病変のある私はピントを合わせて見ようとするとその部分がすっぽり抜けたようになったり、色も青と黒や濃い緑の区別がつきにくかったりします。視力としては0.05くらいで中心は見えてないのですが、周りは見えているので何かにぶつかったりすることはありません。

私は10年前まで産科クリニックで助産師として働いていましたが、一旦仕事を辞めて県立盲学校理療科で鍼灸マッサージ師の免許を取得しました。その頃はちょうど携帯電話からスマホに変わっていく時代で私もiPhoneを使い始めました。iPhoneには、「アクセシビリティ」という機能が搭載されています。その使い方をいろいろいろ覚え今では生活になくてはならないものになっています。その中から主なものを紹介します。

よく使うVoiceOverと拡大鏡、ズーム機能

iPhoneにはアクセシビリティ機能が充実しており 自分の使いやすいようにカスタマイズして使っています。VoiceOver(ボイスオーバー)は項目や文章を読み上げる機能で、私はテキストや長文のメールは音声で聞きます。逆にじっくり見て理解したい時はズーム機能を使います。また、書類や本を読む時、文字を書く時は拡大鏡の機能を使い、まるでルーペを使うように使っています。中高年の方からは「そんな使い方があるのか?」と感心されることもあります。そして、このiPhoneのおかげで前の職場にお手伝いくらいですが復帰することができ、助産師に加え鍼灸マッサージ師としてのスキルも生かし、妊産婦さんのケアにあたることができてとても感謝しています。

いろいろなアプリ

自分の見え方を人に説明するのは難しいので、「見え方紹介アプリ」で伝えることも多いです。このアプリはスマホのカメラ画像を使って、ぼやけ加減を見たり、視野狭窄や夜盲症の症状を表現できるようになっています。

また、見えにくくなってからは映画館に行くことをあきらめていましたが、副音声の入るアプリで見える人と一緒に映画を楽しむこともできるようになりました。

iPhoneで読書

目で文字を読むことが困難な人でも会員登録をして点字図書や録音図書を自宅にいながら楽しむことができます。使用する端末は専用のものもあるのですが、私の場合はスマホの有料アプリを使ってサピエ(注)を利用しています。読書も目に負担をかけずに iPhoneを使って耳で楽しんでいます。

以上、私のiPhoneの使い方を紹介しましたが これらは視覚障害者でなくても少し見えにくいという方でも使うと便利な方法だと思います。このようにみんなが使って便利なもの=共用品がどんどん増えてほしいと思います。


(注)サピエ https://www.sapie.or.jp

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