ひと~マイライフ-先天性ミオパチーと「あきらめたらだめだ」で活動する

「新ノーマライゼーション」2021年11月号

伊藤亮(いとうりょう)

“外出困難”の活動家。一般社団法人先天性ミオパチーの会代表理事。1991年生まれ。北九州市難病対策地域協議会、北九州市難病相談支援センター、北九州ロボケアセンターの立ち上げや京都大学iPS細胞研究所櫻井研究室のHP制作・管理に携わるなど多方面から難病対策への活動を進めている。Twitter:@ryoit00

先天性ミオパチーは、生まれつき遺伝子の異常により筋肉の再生がうまく行われないため全身の筋肉が弱く、成長とともに呼吸機能などが弱まっていく病気です。10万人に1人、全国におよそ1000人の患者数といわれています。今まで治療法がないといわれていた遺伝性の筋疾患にも治療が試される時代に入ってきました。先天性ミオパチーについては症状の進行を遅らせる対処法は進んできましたが、いまだに完治する治療法は確立していないのが実情です。先天性ミオパチーは今まで医療関係者の中でも正しく認識されておらず、幼児の段階では発達遅れと間違われ、筋力トレーニングなど不適切な治療を受けてかえって重篤化するケースも多々ありました。

私は生まれてから周りの子と比べて発育発達が遅かったので、6歳の時に検査をして先天性ミオパチーと診断されました。小学生の頃から息苦しさや頭痛があるようになって主治医に相談をしていました。何度も相談しましたが精神的なものとか、気のせいといった診断でとくに治療が受けられないまま17歳の頃、研修で来られていた先生が呼吸の検査をしてそこでやっと呼吸不全の状態であることが分かり、人工呼吸器の導入になりました。その間、キツくて辛くて、でもみんな同じようにキツいのかな、甘えなのかなと誰に相談したらよいのか分からず、ずっと我慢して耐えていました。現在、呼吸の能力は95歳以上と言われ、同年代の一般の方の10%の呼吸しかできません。まだ歩行はできますが10mほど歩くと息苦しくなるため、電動車いすや呼吸補助具、自宅では鼻マスク人工呼吸器を使うことが多くなっています。

ある日、自分の病気の進行のこと、これまでの経験と苦痛を考え、振り返ることがありました。同じような経験をさせたくないという思いが出てきて、僕なりにできることしようと21歳の時に先天性ミオパチーの会を発足し、活動を開始しました。

会では、先天性ミオパチーに対する理解と社会的認知度の普及啓発、地域格差のない公平な医療体制や医療制度の充実、さらなる研究の促進と治療への道が1日でも早く開けるように活動をしています。また、私自身の経験から呼吸ケア・リハビリテーションの必要性、人工呼吸器の適切な設定の重要性も発信しています。そのほか、ロボットの使用により生活の質の向上に繋がることが期待できるプロジェクトにも関わっています。

例えば、身体に装着して歩行機能改善に効果があるサイボーグ型ロボットもあれば、自宅や病室にいながら遠隔地にあるロボットを操作し働くことができる分身ロボットなどがあります。先天性ミオパチーに対して健康保険が適用になったり、自身の体調に合わせて働く選択肢を広げることに繋がってきています。

そのほかに取り組みたいのは携帯可能で自由に持ち歩けるコンパクト人工呼吸器の開発、再生医療技術などによる病態解明・根治治療や創薬の研究開発です。先天性ミオパチー患者やこれから生まれてくる子どもたちのために進めることが私の願いです。

一患者として私の経験を紹介させていただきました。医療・介護の現場、患者家族の方々などの参考になると幸いです。これからも「あきらめたらだめだ!」を合言葉に活動を頑張りたいと思います。

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