地域の資源を活用した商品づくり

「新ノーマライゼーション」2021年12月号

福島県授産事業振興会 事務局長
堺昭一(さかいしょういち)

はじめに

福島県授産事業振興会(以下、当会)は、授産事業の振興を図り、障がい者の自立と社会参加を促進することを目的に、当会が行う事業に賛同する福島県内の障がい者施設や団体及び個人を会員として、平成7年6月に設立されました。

現在、153の障がい者施設と16の団体及び個人が会員となっております。

当会では、福島県からの委託で県内の障がい者施設等を利用する人々の生活処遇を高めるため、自主、委託生産及び販売にわたる共同受注・発注等を促進し、授産事業の振興と経営の安定を図り、誰もが明るく暮らせる社会づくりを促進することを目的に、販売促進事業、工賃向上事業、技術開発事業、教育研修事業、農福連携支援事業、社会貢献事業に取り組んでおります。特に、福島県内の就労継続支援B型事業所の令和元年度の平均工賃額は14,926円と低く、全国で41位となっており、福島県においても工賃向上プランを作成し、障がい者施設の工賃向上に取り組んでいるところです。

立ち上げまでの経緯

当会においては、平成11年度から会員事業所を対象に、食品部門と非食品部門で新製品(商品)開発コンクールを実施し、売れる製品づくりを推進してきました。

製品をつくりたいがつくり方が分からないといった事業所へは、専門家をアドバイザーとして派遣し、新たな製品づくりの手助け等をするとともに、製品の評価を得るために新製品開発コンクールへ応募してもらい、入賞した製品を積極的に販売するなどしてきましたが、入賞した製品の中には脚光も浴びずに生産が中止されるものや利用者さんが退所しつくられなくなったものなどもあり、継続して販売できる製品の開発が課題となっておりました。

こうした中で、平成23年3月に発生した東日本大震災後に被災した太平洋沿岸の岩手県、宮城県及び福島県が、日本セルプセンターの協力を得て、それぞれの日々を重ねてでき上がるをコンセプトに、「日日日」を「ひびか」と呼ぶ、プロジェクトを立ち上げました。

被災地3県で生活する障がいのある職人たちの技術と作業所の設備、ネットワークを最大限に活かし、皆さんの傍らにあって日々を潤すプロダクトやフードを開発してきました。

自然な速度と丁寧な手仕事によってクオリティの高いプロダクトを、自らの手でつくり出し、使い手に喜んでもらうことが、労働者に生き甲斐を感じてもらう第一歩と考え、ひいては工賃向上へと繋がることがhibicaの願いであり目的でした。

福島県の障がい者施設製品においては、平成27年度に東京インターナショナルギフトショーへ会津木綿製品を出展したことを契機に会津木綿を使用した製品づくりをすることとし、日本セルプセンターと共に現在の製品の形をつくることができました。

400年の歴史がある伝統的で質の高い会津木綿は、とても丈夫で機能性のある生地で、農耕作業をする時に着用する野良着としても古くから会津の人々に愛されてきました。明治末期から大正にかけて、会津木綿の生産は最盛期を迎えましたが、昭和以降、需要の急速な減少により、生産は縮小。現在は、福島県会津若松市で当会が利用する「はらっぱ」をはじめ3工場のみが生産を担っています。

当会では、はらっぱさんにご協力をいただき、安定した会津木綿の供給ができるようになり、会津木綿を使用した製品づくりに踏み切りました。

当会で製作する製品で、会津木綿の質の高さや温かさを“より”感じていただける会津木綿をもっと身近に感じていただけたらよいのではと、会津木綿ブランド9<que>を平成27年度に立ち上げました。ブランド名<9:que>は、会津を世に出すという言葉から、合図を出す「CUE」という意味の英語に由来しています。

ブランド9の立ち上げには、県内で縫製をメインにしている障がい者施設を募り6事業所でスタートし、当初の製品はトートバッグ、カードケース、ハンカチの3種類から始めました。

これまでの取り組み

ブランド9の製作にあたり、日本セルプセンターの協力を得て、共通した製品をつくるために研修会等を重ねてきました。施設によっては製品の製作に向き不向きがあり捉え方の違いで採寸や縫い方で失敗もありましたが、失敗から多くのことを学び、失敗事例を共有することで施設の製品のクオリティも上がってきました。

参加事業所の技術向上に伴いブランド9の新製品の提案があり、内容を審査して新たにヘアゴム、ブローチ、A4バッグをラインアップに加え、現在に至っております。

また、ブランド9以外でも参加事業所で会津木綿を使用した独自製品を製作するようになり、販売会でも好評をいただき徐々に販売数も伸びるようになってきました。

製作した製品を世に出すため、平成27年度から東京インターナショナルギフトショーに出展し、多くのバイヤー様に見ていただき、ご縁があって首都圏における百貨店等での販売会でも実績を重ねてまいりました。

また、福島県内の企業の製品を集めた特選カタログに応募し掲載していただくなど、積極的に出展してきました。知名度が高まるにつれ製作する施設の数が足りず2施設を追加し、新たな製品づくりにも参加事業所からアンケートを取り、数製品を開発すべき取り組みを始めております。

ECサイトを利用した製品の販売にも取り組み、現在、1サイトに掲載し販売しておりますが、関係の皆様のお力をお借りして、新たに当会のサイトを立ち上げる計画をしております。

終わりに

福島県の伝統ある会津木綿を使用した製品づくりは、地域共生の観点からも今後は福島県下の障がい者施設における自主製品の中心的な存在となっていけばよいのではと思っております。しかしながら、限られた障がい者施設で製作していくことは全体の広がりを考えた場合、注文等の対応に難しい点もあります。

また、縫製品に限らず横展開が可能な新たな製品づくりも視野に入れ、障がい者施設の利用者さんの工賃向上に取り組んでいけるよう福島県、当会、障がい者施設が一体となった展開が求められており、さらなる発展を願いつつ今後の活動に頑張ってまいりたいものです。

今回の寄稿により、当会取扱製品にご興味がございましたら、ぜひお問い合わせをいただければありがたいです。

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