違いを認め合う~それぞれの生き方が受け入れられる社会へ

「新ノーマライゼーション」2022年1月号

漫画家
沖田×華(おきたばっか)

--漫画を読むことに興味を持ったご自身のことを教えてください。

5歳の時、親が中華料理店を始めた際に作ったお客様用のマンガの本棚に入ってた「食いしん坊万歳」を見てから、ご飯系の漫画をよく読むようになりました。当時の本棚は男性誌ばかりだったので、バイオレンス系かエロ系しか身近にありませんでした。

--今まで読んだ漫画の中で影響を受けた作家や感動した、心を動かされた場面やせりふがありましたら教えてください。

私は発達障害で将来ちゃんと仕事ができるのかと悩んでた時、「ブラックジャック」の三者三様の回に出てくる加藤清正の「社会に出て街を歩いてる人を見ても高学歴や落ちぶれてるなんて分かんねーだろ?世の中ってそういうもんなんだ。」というせりふ(うろ覚えですが)を読んで、そんなに周りの目を気にしなくていいんだと安心しました。

--漫画家になろう、職業として漫画を描こうと思ったきっかけは何ですか。

風俗で働いてた時に偶然、漫画家の桜壱バーゲンと知り合ったのですが、私の話が面白いから何かに使えないかと考えてくれたみたいです。最初ライターになれと言われたんですが、持ち込みしても風俗勤めなんか信用できないと断られたので、じゃ、漫画描いたら?と言われて25歳で初めて描くようになりました。

--沖田さんが作品を描くうえで、こだわっていることは何でしょうか。

キャラクターすべての人生を細かく作っています。一見ワケの分からないキャラクターでも、こういう人生を歩んでて今に至るという基礎を作ることで読者に「あー、いるいる。こーいう親戚!」といった共感を得やすくして漫画に入り込めるようにしています。

--作品を描いていく中でご自身が変化していることはありますか。ある場合、どのようなことか教えてください。

初めは笑えないと面白い漫画じゃない!と思い込んでいたのですが、それ以外に面白い漫画が作れますよと「透明なゆりかご」が始まりました。その後の評価で笑える以外の漫画の面白さを知りましたが、いまだに自分の漫画に何があるのか分からないままです。

--今後どんな作品を描きたいと思っていますか。

色んな人間の中身を描きたいです。一見普通の女性が波瀾万丈な人生の末に幸せな人生にたどり着いたとか、その逆で罪を犯すまでに至るとか。寿命が来るまで人生を追求してその先に…と繋がる漫画を描いてみたいです。それは結局、私自身も見つめ直したいのかもなーと思います。

--沖田さんの漫画を読んでいる読者に伝えたいことがあれば、教えてください。

あなたが思うほど他人は自分のことを見ていないし、親しくもない他人が急にあなたのためと説教しても、耳を傾けて傷つく必要はない。なぜなら、その人は自分が気持ち良くなるためだけに正しいことを言ってるフリをしてるだけだから。

--「私たち抜きで私たちのことを決めないで」「誰一人取り残さない」「インクルージョン」「共生社会」「多様性を認める社会」などの言葉がありますが、沖田さんが大事にしている言葉があれば教えてください。また、未来に向かって、日本はどのような社会を目指すのがよいとお考えですか。

経験上、努力をしても報われないし親が願う幸せ(異性の恋愛、結婚、妊娠、出産)が自分の幸せとは限らないということを知ってから、それが自分にとって自然なことだと自覚してから生きるのが楽になった気がします。

私のような生き方は少数派ですが、それを差別ではなく区別へとしてとらえなければいけないと思います。性別にかかわらず、それぞれの生き方を当たり前に受け入れられる社会を目指してほしいです。


(注)本文は、沖田×華さんにアンケートに答えていただいた内容を編集部でまとめました。

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