地域で暮らす・支える-地域生活支援拠点等の整備-地域生活支援拠点等の整備の推進・機能の充実について

「新ノーマライゼーション」2022年1月号

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課
地域生活支援推進室長補佐(併)地域移行支援係長
栗原拓也(くりはらたくや)

1.はじめに

厚生労働省においては、障害者の重度化・高齢化や「親亡き後」を見据え、障害者及び障害児(以下「障害者等」という。)が安心して地域で生活できる支援体制の構築に向けて「地域生活支援拠点等」の整備を推進しているところです。地域生活支援拠点等については、障害者等の地域生活の安心の確保や入所施設や病院からの地域移行を推進する役割が期待されています。

本稿では地域生活支援拠点等についてのこれまでの経緯や、具体的な役割・機能、整備の推進や機能の充実に向けた取組をご紹介します。

2.地域生活支援拠点等のこれまでの経緯

地域生活支援拠点等については、平成24年6月に成立した「地域社会における共生の実現に向けて新たな障害保健福祉施策を講ずるための関係法律の整備に関する法律」の衆参両院の附帯決議において《障害者の高齢化・重度化や「親亡き後」も見据えつつ、障害児・者の地域生活支援をさらに推進する観点から(中略)地域における居住の支援等の在り方について、早急に検討を行うこと》とされたことが契機になって検討が始まりました。

この附帯決議を踏まえ、平成25年度に厚生労働省に設置した「障害者の地域生活の推進に関する検討会」において、地域における居住支援のための機能強化の進め方について検討がなされ、自治体が定める第4期障害福祉計画(平成27年度~29年度)に係る国の基本指針において、地域生活支援拠点等について、平成29年度末までに各市町村又は各障害保健福祉圏域に少なくとも一つを整備することとしたところです。

平成29年度に「地域生活支援拠点等の好事例集」の作成、平成30年度に「地域生活支援拠点等の整備促進、必要な機能の強化・充実のための都道府県ブロック会議」を開催するなど、自治体への地域生活支援拠点等の整備推進に向けた働きかけや好事例の紹介などの取組を行ってきました。

3.地域生活支援拠点等の役割・機能、整備形態について

地域生活支援拠点等については、緊急時の迅速・確実な相談支援の実施や短期入所等の活用を可能とすることにより、地域における生活の安心感を担保する機能を備えるとともに、体験の機会の提供を通じて、施設や病院、親元からグループホームや一人暮らしなどの生活の場へ移行をしやすくする支援を提供できる体制を整備したりすることなどによって、障害者等の地域生活を支援することを目的としています。

具体的には、地域生活支援拠点等が備えるべき機能として、居住支援のための5つの機能(相談、緊急時の受け入れ・対応、体験の機会・場、専門的人材の確保・養成、地域の体制づくり)を掲げています。

相談機能

緊急時の支援が見込めない世帯を事前に把握・登録した上で、常時の連絡体制を確保し、緊急の事態等に必要なサービスのコーディネートや相談等の支援を行う機能

緊急時の受け入れ・対応

介護者の急病や障害者の状態変化等の緊急時の受け入れや医療機関への連絡等の必要な対応を行う機能

体験の機会・場

地域移行や親元からの自立等に当たって、グループホームの利用や一人暮らしの体験の機会・場を提供する機能

専門的人材の確保・養成

医療的ケアが必要な者や行動障害を有する者等に対して、専門的な対応を行うことができる体制や人材養成を行う機能

地域の体制づくり

コーディネーターを配置し、地域の様々なニーズに対応できるサービス提供体制の確保や、地域の社会資源の連携体制の構築等を行う機能

これらの機能の整備に当たっては、医療的ケアが必要な重症心身障害者や、強度行動障害者、高次脳機能障害者等の支援が難しい障害者等への対応ができるよう、緊急時への対応や備えについて地域全体で支援する協力体制を構築することが重要です。

また、地域生活支援拠点等について、形式的な整備にとどまっている場合があるとの指摘があります。地域生活支援拠点等については、市町村が整備主体となって地域のニーズを踏まえて整備することが重要であり、市町村が、障害者や家族等のニーズを把握し、協議会等を活用しながら、整備の在り方や運営の評価を行っていくことが地域のニーズを踏まえた機能を備えるためにも有効です。

整備形態については、グループホームや障害者支援施設等に付加した拠点の整備である「多機能拠点整備型」や、地域における複数の機関が分担して機能を担う体制の整備を「面的整備型」、「多機能拠点整備型」と「面的整備型」を組み合わせた整備など、地域の実情に応じて整備することとしています。

4.地域生活支援拠点等の整備の推進や機能の充実に向けた取組

地域生活支援拠点等については、自治体が定める第6期障害福祉計画(令和3年度~5年度)に係る国の基本指針において、《地域生活支援拠点等について、令和五年度末までの間、各市町村又は各圏域に一つ以上の地域生活支援拠点等を確保しつつ、その機能の充実のため、年一回以上運用状況を検証及び検討することを基本とする。》としています。

令和3年4月1日時点で整備済みとなっている市町村は全1,741市町村のうち922市町村(速報値)であり、現状においても地域生活支援拠点等を未整備の市町村が多くあります。

また、既に整備済みの市町村においても、地域の利用者や家族などからのニーズを把握し、継続的に地域のニーズを踏まえた必要な機能が備わっているか検証していき、地域の実情に応じて必要な機能の強化を図っていくことが求められます。

令和3年度障害福祉サービス等報酬改定では、地域生活支援拠点等の整備の促進や機能の充実を図るため、市町村が地域生活支援拠点等として位置付けた短期入所事業所や緊急対応を行う訪問系サービス等について、地域生活支援拠点等としての緊急時のための受け入れ・対応機能の役割の強化を評価する加算を創設したところです。

また、令和3年度障害者総合福祉推進事業において「地域生活支援拠点等の運営実態の検証と効果的な機能の評価指標の開発」について検討しているところであり、市町村が地域のニーズを踏まえた必要な機能が備わっているか、PDCA サイクルを通じて継続的に検証・検討するための標準的な評価指標や評価のプロセスを作成することとしています。

今後、当該評価指標やプロセスについて、全国的に周知を図ることにより、地域生活支援拠点等の機能の充実を推進していくこととしています。

5.最後に

現在、社会保障審議会障害者部会において、障害者総合支援法改正法施行後3年の見直しを検討しており、地域生活支援拠点等の整備の推進や機能の強化についても論点に掲げているところです。

地域生活支援拠点等の更なる整備の推進や機能の強化をはじめ、障害者の住まいであるグループホームや、地域での一人暮らしの障害者を支える自立生活援助の充実なども含め、障害者等が地域で安心できる支援体制の構築や地域移行の推進方策について検討してまいります。

【参考】厚生労働省HP「地域生活支援拠点等」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000128378.html

図 地域生活支援拠点等の整備について拡大図・テキスト

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