韓国の社会的企業の制度

寺島 彰

1.韓国のソーシャルファームの成立過程

(1)1998年IMF危機への対応

1997年に起こった経済危機のために、多くの失業者が発生し、その対策として、雇用創出のための取り組みが、官民を問わず行われた。そのなかで、ヨーロッパを中心に発展してきた社会的経済および社会的企業に対する関心がもたれ始めた。

(2)2003年社会的就労事業開始

雇用労働部が、雇用の創出と社会サービスの提供のために「社会的就労(創出)事業」を開始した。この事業では,社会的課題を解決を目的として民間のNPOが事業を創出し、自立して運営するために、政府は人件費の支援をすることとした。

(3)2005年社会的就労タスクフォース結成

雇用労働部,保健福祉家族部,企画財政部などの政府機関,社会的企業に関する研究者,社会的雇用創出に関する現場の専門家で構成された「社会的就労タスクフォース」が結成され社会的企業を育成するための法案が作成され、国会に提出された。

(4)2006年社会的企業育成法成立

2006年12月に「社会的企業育成法」が国会を通過し,2007年7月に施行された。その特徴は、脆弱階層を生産的福祉で支援することであった。

(5)2010年社会的企業育成法改正

それまでは、高齢者や障害者が「脆弱者層」とされていたが、脆弱階層の定義が「自分に必要な社会サービスを市場価格で購入するのに困難があったり、労働市場の通常の条件で就職が特に困難な階層」と拡大されたために、後述のように、結婚移民女性などを新たに含むこととされた。

また、国は社会的企業の体系的育成・支援のために社会的企業育成基本計画を5年ごとに策定するとともに、地方に対しても市・道別の社会的企業支援計画の作成・実施を義務付け、それを雇用労働部長官に提出させることにした。

さらに、「予備的社会的企業」の制度が設けられた。これは国の社会的企業の認証要件の一部を満たしていないものの、今後、その認証を目標としているとして、自治体の長(地域型)または中央行政機関の長(部署型)が指定する企業のことである。予備的社会的企業への支援事業として①人件費補助、②専門人材への人件費補助、③経営コンサルティング支援、④事業開発費支援がある。

くわえて、社会的企業の定義と認証要件において社会的目的が拡大され「地域社会への貢献」が加えられ、社会的企業の類型に、⑤「地域社会貢献型」が加わった。

(6)2011年社会的企業振興院設置

2011年2月に雇用労働部により「社会的企業振興院」が設置された。同院の目的は、現場の社会的企業と行政との調整および中間支援組織を側面から支援することなどである。詳細は、下に述べる。

(7)2012年協同組合基本法成立・施行

協同組合は、組合員の自発的な参加・民主的な意思決定などの特性に基づいて、事業を推進する。認証を必要としないので、社会的企業よりも設立が容易である。

一般協同組合と社会的協同組合に分かれている。

下表は、それぞれの組合の年間設立数である。

表1 一般協同組合と社会的協同組合の年間の設立数

  2013 2014 2015 2016
一般協同組合 3,042 2,691 2,286 1,961
社会的協同組合 103 122 180 203

文献(5)から引用

協同組合の設立により、韓国の社会的経済企業は、全体として下のようになっている。

表2 社会的経済企業の数

(2016年)

組織類型 社会的企業 協同組合 マウル企業 自活企業 合計
数(個) 1,713 10,640 1,446 1,149 14,948
雇用人数(人) 37,509 29,861 16,101 7,629 91,100

文献(5)から引用

2.社会的企業の認証の要件

「社会的企業育成法」で、「社会的企業」とは,「脆弱者層に社会サービスまたは雇用機会を提供し、地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的を追求しながら,財貨およびサービスの生産・販売等の営業活動を行う企業として認証を受けた事業体」と定義されている。そのため、支援を受けるためには、認証が必要であり、また、「認証」を受けていない企業は,社会的企業やこれに類似した名称を使うこともできない。審査は、雇用労働部に設置された審査委員会により判断され、政府が認めた認証証が発行される。四半期に1回ずつ認証の申請を受け付けている。

ただし、社会的企業を設立しようとする事業者を「予備的社会的企業」として認証する制度もあり、人件費の補助などが行われる。

社会的企業の認証の要件は、次の7つである。

表3 社会的企業の認証要件

①法人格をもつかそれに準じた組織であること

②有給勤労者の雇用従業員を雇用して財やサービスの生産販売などの活動をさせること。

③企業の主な目的が,脆弱者層に就労または社会サービスを提供し生活の質を向上させるなど,社会的目的の実現にあること。

④サービスを受ける者や勤労者などの利害関係者が参加する意思決定構造を整備すること。

⑤営業活動を通して一定の比率以上の収入があること。

⑥法令に定める定款や規約などを整備していること。

⑦配分可能な利益の3分の2以上を社会的目的のために使用すること。

文献(1)から引用

以下に詳細を述べる。

(1)法人格をもつかそれに準じた組織であること

民法による法人、組合(社団法人、財団法人)、商法による会社、合資組合(株式、有限、合資、合名、有限責任会社、合資組合)、特別法による法人、非営利民間団体(①公益法人設立、運営に関する法律第2条による公益法人、②非営利民間団体支援法第2条による非営利民間団体、③社会福祉法第2条第3号による社会福祉法人、④消費者生活協同組合法第2条による社会的協同組合、社会的協同組合連合会、⑥その他の法律による法人又は非営利団体(農業・漁業組合法人・農業会社法人、個別法による共同組合など)

そのために、組織の部署、個人事業者、自治体や公共機関が出資した組織、事業団は原則的に社会的企業として認証を受けられない。また、非営利法人・団体などは独立性の有無を判断するためにより厳しい審査を受ける。

(2)有給勤労者を雇用して、財貨とサービスの生産・販売などの営業活動すること

社会的企業での有給勤労者とは、雇用形態を問わず雇用保険に加入した者を意味する。しかし、雇用保険の加入者のであっても申請企業の代表者の配偶者と直系尊属・直系卑属、役員は有給勤労者の数に含まれない。但し、登記役員、利害関係者の資格で意思決定構造に参加する目的で選出された勤労者は例外として認められる。これと共に申請企業は申請月までの6ヶ月間に平均1人以上の有給勤労者を雇用すべきであり、社会的目的の実現の類型の中で職場提供型は平均5人以上を雇用しなければならない。また、勤労者に対する最低賃金と社会保険を確保しなければならない

社会的企業の類型別脆弱階層の職場の雇用比率は、下表のとおり。

表4 社会的企業の類型別脆弱階層の雇用比率

社会的企業の類型 脆弱階層の雇用比率
職場提供型 全勤労者に対する脆弱階層の勤労者の比率が50%以上
混合型 全勤労者に対する脆弱階層の勤労者の比率が30%以上
地域社会貢献型 全勤労者に対する脆弱階層の勤労者の比率が20%以上

(3)脆弱階層に職場と社会サービスを提供し、地域住民の生活の質を高めるなどの社会的目的の実現を組織の主な目的にしていること

社会的目的の実現は社会的企業のもっとも重要な認証要件であり、一般営利企業と区別を可能にする指標である。社会的企業は、目的により、①職場提供型(脆弱階層に対する雇用の創出を通して社会的な目的を実現する)、②社会サービス提供型(脆弱階層に社会サービスを提供する)、③混合型(脆弱階層に職場と社会サービスを共に提供する)、④地域社会貢献型(地域貢献を行う)、⑤その他型の5つの類型に分けられる。社会的企業の認証を申請する企業はこの5つの類型の中から一つを選択する。

審査においては、社会的目的の実現について、選択した類型によって申請前月を基準に6ヶ月の実績を確認する。具体的な実績を裏付ける方法は類型によって違いがあるため、類型別に的確な方法で実績を裏付けなければならない。具体的な審査基準は資料1を参照のこと。

(4)サービスを受ける者や勤労者などの利害関係者が参加する意思決定構造を整備すること

社会的企業は社会的目的を優先的に追求するため、勤労者代表、サービス受益者代表、地域関係者、外部専門家、後援者、連携企業、連携企業の人材など様々な理解関係者が実質的に参加する民主的な意思決定をする構造を備えていなければならない。企業の組織形態によって意思決定構造の形は異なっていても、これに関連する内容を定款または運営規定に必ず明記することで意思決定構造の根拠を設け、この根拠に基づいて実質的な会議体が運営されなければならない。

民法による法人・組合、商法による会社・合資組合、特別法によって設立された法人は・関連法令上議決椎がある理事会を主な意思決定機構とする。また特別法によって設立された非営利民間団体などでは定款・規約などに規定されている意思決定機構が認めれている。但し、非営利法人または組合は、組織の特性上避けられないと受け入れられる場合、実質的な意思決定の権限を持つ運営委員会などが,社会的企業育成専門委員会の審議を経てその他の類型の意思決定機構として認められる。意思決定機構は認証の申請前(申請月を含む)の6ヶ月以内に最低2回以上会議開催の実績がなければならない。このような意思決定機構は最小3人で構成されるが、社会的目的の実現の類型に関わらず勤労者代表と外部の利害関係者が参加しなければならない。社会的協同組合はこの要件を満たしたこととみなす。

(5)営業活動を通して一定の比率以上の収入があること

社会的企業として認証を受けるためには、有給勤労者を雇用して最低6ヶ月間以上の営業活動がなければならず、同一期間内に営業活動を通した収入が総労務費対比50%以上でなければならない。

営業活動を通した収入は財貨とサービスの供給を通して得た営業収入を指し、人件費の支援金、その他の政府省庁・民間からの補助金などは含まれない。補助金、後援金、支援金は営業外の収入として算入されるが・公共売上による収入とバウチャー事業の収入は営業・収入として認められる。

発注先が競争公募を通して社会サービス提供機関を選定・契約した場合は支援金、補助金などの用語が使用されても公共市場に対する営業収入として認められる。但し、社会福祉施設の運営費、補助金など関連法令によって独占的に委託される事業収入と政府が支援する施設運営費などは除外される。製造業と流通業は原材料費と商品売上原価を売上額から引いた金額がを営業収入として認められる。

労務費は政府の人件費補助の有無とは別に実質的に勤労者に支給される総額を意味し、企業の代表の給料も総労務費に含まれる。賃金(給料)には個人負担の保険料を含む人件費、雑給(日雇い)、時間外手当、ボーナスが該当するが、法人が負担する社会保険料、退職給与の引当金、教育訓練費、外部の賃加工のサービス費は除外される。

(6)法令に定める定款や規約などを整備すること。

社会的企業として認証を受ける為には目的、事業内容など「社会的企業育成法第9条及び同法施行令第11条に定める定款、規約などを備えていなければならない。それには、1.目的、2.事業内容、3.名称、4.主な事務所の所在地、5.機関及び支配構造の形態と運営方式と重要事項の意思決定方式、6.収益配分と再投資に関する事項、7.出資と融資に関する事項、8.従事者の構成と任免に関する事項、9.解散と清算に関す事項、10.その他大統領令に定められた事項が含まれる。

協同組合基本法による社会的協同組合はこの要件を満たしているとみなす。

(7)配分可能な利益の3分の2以上を社会的目的のために使用すること。

「商法」による会社・合資組合の場合は配分可能な残余財産の3分の2以上を他の社会的企業または公益的基金に寄付するようにする内容が含まれていなければならない。

商法上会社や合資組合などは当該の企業の定款もしくは規約内に利益の再投資に関連して会計年度別に配分可能な利益が発生した場合利益の3分の2以上を社会的目的の為に再投資するという内容が入っていなければならない。ここでの配分可能な利益は、商法上の配当可能利益を指す。配分可能利益が発生した際、それらを当該年度内に社会的目的に使用しなければならない。別途の勘定科目として積立てることも可能であるが、2年以内に社会的目的に使用しなければならない。

社会的目的の使用範囲には勤労者の勤労条件の改善、地域社会に寄付などの社会貢献事業、雇用拡大の為の施設投資などが含まれる。この認証要件は組合員の利益の為に設立された営農組合、農業会社、共同組合なども商法上会社に準じて同様に適用される。社会的協同組合はこの要件を満たしているとみなす。

3 認証社会的企業への支援制度

認証社会的企業への支援制度には下表のようなものがある。

表5 認証社会的企業への支援制度

①人件費の補助(最長3年間)

②専門的人材の人件費の補助(3人まで)

③社会保険料の支援(最長5年、事業者負担分)

④事業開発費の支援

⑤融資事業や投資事業への財政的支援

⑥法人税と所得税減額(5年間、50%)

⑦地方自治等への優先購入

⑧経営コンサルティング経費補助

⑨ネットワーク構築の支援

⑩新たなビジネスモデル発掘

⑪企業の立ち上げ時を中心に、運営費、設備費などを支援

文献(3)から引用

なお、この内容は、文献(3)からの引用に現地調査で得た情報を加えたものである。

(1)人件費の補助

支援期間は最長3年間(l年目は人件費の90%、2年目は70%、3年目は50%)で,政府・地方自治体の財源をもとに地方自治体から支給される。社会的企業1件あたりの上限の定めはない。毎年,予算総額は異なる。

支給金額は,従業員一人あたり1か月に10万円程度受けることができる。そしてこれに予備的社会的企業の2年を加えると、最大5年間は人件費支援を受けて活動を展開することが可能となる。

また、雇用の質などの基準により支援額や支援期間に差をつけることをするようになった。

2015年には脆弱者層の雇用の持続性を高めるため,3年以上の雇用をした場合には追加の人件費を補助するというようなインセンティブを付与することになった。

(2)専門的人材のための人件費の補助

経営能力を強化するために専門的人材を雇用する際に3人(有給職員50人未満の場合は2人)を限度とし最長3年間の支援を受けることができる。ただし,ほかに同様な支援を受けていないことが条件。一人あたり1か月、16万円程度になる。

(3)社会保険料の支援

2010年度より支援が開始された。最長5年で,事業者負担分の社会保険料を雇用者全員分支援する。

(4)事業開発費の支援

2010年度からの資金的支援で雇用労働部と地方自治体が共同でファンド組成して,研究開発,広報,商品開発などの支援を行う。

(5)融資事業や投資事業への財政的支援

美少(ミソ)金融財団などの福祉事業者と中小企業庁の政策資金または地域信用保証財団を通じて貸し出しを行っている。

(6)税制の支援認証後,課税が開始して5年間は,法人税と所得税が50%減免される。収益の5%を運営費として使うことができる

(7)優先購買の支援

社会的企業育成法第12条により認証社会的企業の製品を地方自治体などの公共機関に優先的に購入させる制度である。社会的企業の製品やサービスを優先的に購入することにより,優先購買の実績を判断材料に雇用労働部から地方自治体に対する社会的企業振興支援の助成額が決定される。

(8)経営コンサルティングの支援

社会的企業からの申請により,労務や会見に関する専門的なコンサルタントに必要な経費を一部負担している。5つのコンサルティング企業がソーシャル・エンタープライズを立ち上げる際のコンサルテーションのために指定された。

(9)ネットワーク構築の支援

競争力の弱い社会的企業の活動を円滑化するため,大手民間企業や地域における自治組織などと社会的企業のネットワーク化を促進する。

(10)新たなビジネスモデル発掘

社会的企業の支援機関が全国の地方自治体にあり,地域に合った新たなビジネスモデルを実践している事業者を発掘する。

(11)企業の立ち上げ時を中心に、運営費、設備費などを支援

4.脆弱者層の定義

社会的弱者層は、社会的企業育成法施行令第2条に「自分に必要な社会のサービスを普通の市場価格で受けるのが困難であるか、労働市場に一般的な条件での就職が困難な階級」と定義されている。概要は、下表のとおりである。判断基準は、資料2に示す。

表6 社会的弱者層の概要

社会的弱者層の概要  (社会的企業育成法施行令第2条)

1. 世帯の月平均の所得が全国平均の100分の60以下の人

2. 「雇用上の年齢差別禁止及び高齢者の雇用促進に関する法律」第2条第1号の規定による高齢者

3. 「障害者の雇用促進及び職業開発法」第2条第1号の規定による障害者

4. 「売春防止及び被害者の保護等に関する法律」第2条第1項第4号の規定による売春被害者

5. 「青少年雇用促進特別法」第2条第1号の規定による「成年」または「退職女性等の経済活動促進法」第2条第1項の「退職女性等」のうち、「雇用保険法施行令」第26条第1項の規定による雇用促進奨励金の支給対象となる人

6. 「北朝鮮離脱住民保護及び定着支援に関する法律」第2条第1号の規定による北朝鮮脱北者

7. 「家庭内暴力防止及び被害者の保護等に関する法律」第2条第3号による被害者

8. 「ひとり親家族支援法」第5条及び第5条の2に基づく保護対象者

9. 「在韓韓国人処遇支援法」第2条第3号の規定の結婚による移住者

10. 「保護観察等に関する法律」第3条第3項の規定による更生保護対象者

11. 次の各項目のいずれかひとつに該当する者

イ 「犯罪被害者保護法」第16条の規定により救助された被害者が障害を

① 被った場合、救助された被害者と生計を共にする配偶者,直系血族及び

② 兄弟姉妹

ロ 「犯罪被害者保護法」第16条の規定により、救助された被害者が死亡した場合、その救助された被害者と生計を共にしていた配偶者、直系血族及び兄弟姉妹

12. その他、雇用労働部長官が就業状況等を考慮して、「雇用政策基本法」第10条の規定による雇用政策審議会の審議を経て、社会的弱者層と認めたもの

イ 1年以上の長期失業者

ロ 「刑の執行及び収容処遇等に関する法律」に基づく受刑者で初めて雇用された時が出所後6か月を経過していない者(ただし労役留置者を除く)

ハ 「保護青少年などの処遇に関する法律」に基づき少年院に送られた青少年で、初めて採用された時が、少年院退所後6か月を経過していない者

ニ 「保護観察に関する法律」に基づく保護観察青少年(保護観察期間中である者)

ホ、ホームレス

へ 薬物、アルコール、ギャンブル依存症の者

ト 先天性または回復が見込めない難病を治療中の者(疾病管理本部の難病リストを確認)

チ 女性失業者のうち家族を扶養する責任のある者(女性家庭)

*ただし、社会サービスの対象となる社会的弱者層は上記の社会的弱者と祖父母と孫の家庭、外国人労働者、金融債務不履行者、学校暴力の被害者、未就学の青少年などが含まれる

5.社会的企業振興院

(1)役割

①社会的企業育成法第20条に基づく、社会的企業の育成と育成

②協同組合基本法第116条に基づく、協同組合の自立への貢献

(2)組織

社会的企業振興院は、下表のような組織構成になっている。

表7 社会的企業振興院の組織

企画・管理課 企画・広報係
教育・管理係
管理・開発タスクフォース係

起業・初期支援課
認証支援係
業績評価係
起業支援係
成長支援係
予備的社会的企業タスクフォース係

持続発展支援課
マーケティング・コンサルティング支援係
リソース・マッチング係

協同組合課
開設支援係
協力・管理係
事業支援係

文献(2)から引用

(3)業務

①社会的企業と共同組合の発掘と育成

  • 社会的企業の立ち上げの支援
  • 能力開発のための教育プログラムの運営
  • 認証と設立のためのサービス構築

②社会的企業と協同組合の自立能力の強化

  • 社会的企業と協同組合の適格性の強化
  • 製品・サービスの競争力の改善
  • 市場選択の支援

③社会的企業と協同組合のための持続可能な構造の構築

  • 社会的経済の価値の普及
  • 民間部門の社会資源活用ネットワークの拡大
  • 総合的な情報の共有

④調査に基づく政府の政策決定の支援

  • 社会的企業のビジネスに関するモニタリングと評価
  • 社会的企業と協同組合に関する政策におけるサービスの実施

6.社会的企業の数

(1)社会的企業とその従業員の数

次表は、社会的企業とその従業員数である。

表8 社会的企業とその従業員数

認証社会的企業数 1,937+予備的社会的企業数 1,291
=3,228(2018年5月現在)

脆弱者数25,171人/従業員数 41,417人=60.8%
(2017年12 月現在)

文献(2)から引用

(2)社会的企業の型別割合

次表は、社会的企業の型別割合である。

表9 社会的企業の型別割合

雇用創出型 68.4%
社会サービス提供型 6.2%
地域社会貢献型 5.0%
混合型 9.2%
その他型 11.2%

文献(2)から引用

(3)社会的企業の産業別割合

次表は、社会的企業の産業別割合である。

表10 社会的企業の産業別割合

文化・芸術 11.6%
清掃 10.3%
教育 8.2%
環境 5.6%
介護・家事 5.0%
旅行・スポーツ 2.4%
医療 0.7%
育児 0.7%
文化財 0.5%
森林保護 0.4%
雇用 0.4%
その他(製造、販売、食品、家庭用品等) 48.4%

文献(2)から引用

8.考察

韓国の社会的企業の特徴をまとめてみると下表のようになる。

表11 韓国の社会的企業の特徴

・韓国の社会的企業は、経済危機を背景に民間活力の活用を目的に始まった。

・イタリアとイギリスをモデルに独自の体系を構築している。

・社会的企業振興院は、社会的企業を支援する専門の機関であり、独特の制度である。

・行政主導の傾向があり、多様な支援がある。

・脆弱者階層の範囲が非常に広い。

・社会的協同組合の台頭

韓国の社会的企業支援制度は、ヨーロッパの制度を研究して作られているので、脆弱階層を雇用する社会的企業と、脆弱階層を支援する社会的企業、そして、その混合型を中心に制度が構築されている点でイタリアの制度に似ている。さらに、独自の地域貢献型を加え、地域支援を制度化しようとしている。また、脆弱階層の範囲は、イタリアよりも広範である。韓国の社会的企業は、もともと、雇用対策として成立したという社会的背景が影響していると考えられる。

さらに、社会的企業振興院という半ば公的な支援組織をつくっているのも特徴である。しかし、その結果、社会的企業が政府からの助成に頼る傾向がでてきており、近年は、社会協同組合の役割を強化しようとしている点も見逃せない。

2012年7月1日「協同組合基本法」が成立・施行された。多くの協同組合が設立されたが、全体としては新規の設立は減ってきているが、そのなかで、社会的協同組合は、逆に増加の傾向を示しているという。社会的企業の中には、営利目的で税制優遇措置をめあてにする傾向があり、より協同性の高い「社会的協同組合」への移行も増えている。

わが国においてソーシャルファームを普及させようとする社会環境は、韓国とは違うが、韓国の制度の分析は、制度の持続可能性を検討する際に有効だと考えられる。


参考・引用文献

(1) 韓国社会的企業振興院「韓国社会的企業の認証要件、2016.12

(2) Korea Social Enterprise Promotion Agency, “Korea’s Social Enterprise”, 2018

(3) 小林 甲一, 後藤 健太郎「韓国における社会的企業の育成政策と展開」名古屋学院大学論集社会科学篇,53,3,1-16,2017.1.31

(4) 高間満「韓国における社会的企業の現状と課題」、神戸学院総合リハビリテーション研究, 11,2,2016.3

(5) 雇用委員会・関係省庁合同「社会的経済の活性化方案」,2017.10.18

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