地域で暮らす・支える-地域生活支援拠点等の整備-半田市の地域生活支援拠点等について

「新ノーマライゼーション」2022年2月号

愛知県半田市福祉部地域福祉課
社会福祉法人半田市社会福祉協議会 半田市障がい者相談支援センター

1.半田市の概要

半田市は、愛知県の知多半島中央部東側にあります。人口約12万人、面積47.42㎢で、市の中心部からは、車を使えば市内どこへでもおよそ20分以内で移動できるくらいの大きさのまちです。

令和3年4月1日現在、市内に住む障がいのある方については、障がい者手帳(身体・療育・精神)所持者が約5,760人。障がい福祉サービス等利用者は、大人と子どもを合わせて約1,220人。指定相談支援事業所は計8か所あり、サービス利用者については、ほぼ100%相談支援専門員によるサービス等利用計画作成ができています。

また、人口に対する福祉サービス事業所数が多いことも特徴の一つです。放課後等デイサービスが19事業所、グループホームの運営事業所が12事業所、就労継続支援B型が19事業所、生活介護が19事業所(介護保険の基準該当施設や共生型施設を含む)あり、利用者が自分の利用したい事業所を選びやすい状況となっています。

2.地域生活支援拠点等の整備について

半田市の高齢化率は約24%(令和2年3月末現在)で、全国平均と比べるとやや低いものの、他の自治体と同じく、障がい者を介護する家族の高齢化が問題となってきており、支援者不在で緊急対応が必要なケースが増加しています。

しかし、市内には入所施設が1か所しかなく、1つの法人で緊急対応を担うことの難しさがありました。そのため、緊急時には、各法人・事業所の得意分野で協力して支援を組み立てていくことが必要です。そのことが、地域生活支援拠点等を多機能拠点型ではなく面的整備にした大きな理由です。

平成28年度には、地域生活支援拠点等について、全国でも先駆的な取り組みを行っている地域の方々を招き、福祉関係者や市民に向けた研修を行いました。

そして平成29年度に、半田市の地域生活支援拠点等を整備しました。令和元年度には、半田市障がい者自立支援協議会の地域包括ケア部会において、実際の事例を交えた冊子「地域生活支援拠点等ガイドライン(初版)」を作成しました。それと同時に、地域生活支援拠点等認定要綱についても整備を行いました。

3.現在の半田市の地域生活支援拠点等における5つの機能

1.相談

基幹相談支援センターとして、半田市社会福祉協議会の中に半田市障がい者相談支援センターが設置されています。半田市障がい者相談支援センターでは、基幹相談、委託相談(生活・就労)、指定一般相談支援(地域移行支援・地域定着支援)、指定特定相談支援、自立生活援助を実施しています。同じ社協内に、地域包括支援センター、権利擁護グループ(日常生活自立支援事業、生活困窮者家計支援事業等)、ボランティア地域ささえあいセンターがあり、総合相談の窓口としての一面もあります。

また、市内には、指定特定相談支援事業所が8か所あり、全部で25名の相談員が、計画相談に従事しています。市内各相談支援事業所が参加する相談支援連絡会を月1回開催し、定期的な事例検討と情報共有の場を設けています。

2.体験の機会・場

地域生活支援事業にて、日中活動の事業所で宿泊の体験ができる「体験的宿泊」という事業があります。放課後等デイサービスや就労継続支援事業所を中心に、9つの事業所(うち、子どもが利用できる事業所は5事業所)が登録しています。日ごろ通っている事業所で宿泊体験ができるため、慣れた施設やスタッフの中で安心して過ごすことができます。この事業の特徴としては、現状、大人の利用より子どもの利用の方が多いことがあげられます。子どものころから宿泊体験を重ねていくことで、緊急時にもスムーズに支援が受けられる可能性が広がります。

また、地域移行支援では、救護施設内の自活訓練棟を活用し、より一人暮らしに近い形での宿泊体験ができるようになるよう整備を進めています。

3.緊急時の受け入れ・対応

緊急時には、行政と基幹相談支援センターを中心に、サービスのコーディネートを行います。施設への短期入所だけでなく、グループホームの体験利用等を活用して緊急対応をすることもあります。

また、他のサービスで緊急対応ができない場合や、緊急で宿泊先が必要となった方を対象に、緊急ショートステイ事業を実施しています。市の独自事業として、高齢・障がい・生活困窮者を含めた事業となっています。この事業を利用した場合には、市内3か所の協定先法人で受け入れを行います。

そのほか、緊急時支援のための準備として、現在福祉サービスを利用している方については、サービス受給者証の更新のタイミングに合わせて「半田市緊急時・災害時対応プラン(兼個別避難計画)」の作成を行っています。緊急時の支援について、記載のフローチャートで確認することで、日ごろどんな準備をしていけばよいのか、意識することができます。

「半田市緊急時・災害時対応プラン(兼個別避難計画)」から緊急時(自然災害時以外)のフローチャート部分を抜粋
図 「半田市緊急時・災害時対応プラン(兼個別避難計画)」から緊急時(自然災害時以外)のフローチャート部分を抜粋拡大図・テキスト

4.専門的人材の確保・養成

半田市では、強度行動障がいのある方や医療的ケアが必要な方への支援に力を入れています。自立支援協議会内に各プロジェクトを立ちあげ課題を検討するとともに、必要に応じて支援者向けの研修を開催しています。強度行動障がい支援者養成研修、現場職員向け研修(障がい者支援に関する基礎的知識を学ぶための研修)など、毎年継続して実施している研修もあります。

5.地域の体制づくり

自立支援協議会を中心に、地域の体制づくりを行っています。自立支援協議会では、4つの部会と3つのプロジェクトを中心に、課題の抽出や検討、研修会の実施などを行っています。

半田市における面的整備のイメージ図
半田市における面的整備のイメージ図拡大図・テキスト

4.現在の課題と今後の展望

地域生活支援拠点等の役割は、誰もが地域で安心した生活を送るための体制整備です。地域生活支援拠点等は、一度整備したらおしまいではなく、地域の実情に合わせて、随時更新していく必要があります。それ以外にも、サービス事業所の人材育成推進や緊急時のフォローアップのために、今後は地域生活支援拠点コーディネーターの配置が必要と考えていますが、現在まだ配置できていないことが課題といえます。

そのほかに、強度行動障がいのある方や、医療的ケアが必要な方の地域生活の継続や、自宅での支援が難しくなった際の立て直しのために、ミドルステイの機能も必要です。より障がいの重い方の支援ができる体制整備も、課題の一つです。

今後は、自立支援協議会内の地域包括ケア部会地域生活支援拠点WG(令和4年度から地域生活支援拠点部会)を中心に、地域生活支援拠点等の評価や整備を継続して行っていきます。利用者、事業所、行政の三方よしの関係をつくりながら、障がいのある方たちがより安心して地域で暮らし続けられる地域づくりに取り組みたいと思います。

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