注目の技術活用で広がる生活の可能性と社会の輪「パンダナビの普及と活用でこう変わる」

「新ノーマライゼーション」2022年3月号

一般社団法人山梨県視覚障がい者福祉協会 理事
酒井弘充(さかいひろみつ)

私は視力0.01高度視野狭窄の弱視です。日ごろは盲導犬マックスと一緒に出歩いています。パンダナビと出会ったのは昨年12月に行われた体験会の時です。コード化点字ブロックの存在は知ってはいましたが、導入にコストがかかり、山梨県のような地方では簡単に設置できないだろうと考えていました。

ところが、芝田さんが開発されたパンダナビは警告ブロックに黒いリングをはめるだけでその場にあった案内をすることができます。さらにその点字ブロックに向いている方向で案内が変わるため、自分が向いている方向や進むべき方向、さらには危険な方向まで簡単にわかります。多くの体験会参加者は、この方向によって適切な案内が流れることに大きく感銘していました。

さらに、このパンダナビに驚きと今後の可能性を感じたのは、警告ブロックに黒いリングをはめることや、そのブロックを登録し案内を設定することが、特別な技術を必要とせずに簡単に安価にできる点です。これはコスト面に大変優しく地方都市でも設置できる可能性が大きくなりました。

今後の課題は2つあると思います。ひとつはパンダナビの敷設を駅や道路の設置者にどう許可を取っていくかでしょう。これは、まずある施設内に限り試験的に設置し、その有用性や安全性をアピールし、社会に繰り返し周知していくことだと思います。

もうひとつの課題は、誰がどのようなルールで敷設するかです。ルールについては現在位置や各方向の案内の文面をある程度共通化し場所によって案内の言い回しが異なりそれによってユーザの誤解が生じないようにしなければなりません。

誰が敷設するかは上記のルールが決まりさえすれば簡単なのかもしれません。リングの貼り付け方やタブレットの操作方法など講習会を行えば誰にでも設置できるものだと聞いています。もしかするとパンダナビ敷設ボランティアという新しいジャンルのボランティアが生まれるかもしれません。さらにこの敷設の課題は逆に強みになるのかもしれません。芝田さんが書かれているように晴眼者にも役立つものや、グローバルに使われるものになれば、もっと敷設が進んでいくでしょう。それこそがパンダナビの本当の強みであり、人によっては煩わしい突起だった点字ブロックにとっての革命になるでしょう。

menu