ぶらん歩の開発で変わった私の将来の生活

「新ノーマライゼーション」2022年3月号

合同会社KT福祉環境研究所
松尾清美(まつおきよみ)

私は21歳の時、大学時代最後のテニスの合宿に行く途中の交通事故で、第9胸髄を圧迫骨折したため下半身が完全麻痺となり、車椅子生活をすることになりました。上肢で車椅子を駆動して移動し、上肢の力で車いすからベッドや便器、浴室の洗い場への移乗、そして自動車の運転席への移乗などを行って、生活や仕事を遂行してきました。しかし、40歳のころ、車いすテニスの練習や試合で肘や手関節の腱鞘炎を起こし、ベッドなどへの移乗がしばらくできなくなり、治るまで大変な思いをしました。また、50歳代の時、転倒で肩を痛めた時は、ベッドへの移乗だけでなく自動車への移乗や運転にも支障が生じて、妻や友人の援助で日常生活や仕事を継続しましたが、できていたことができなくなるストレスは脊髄損傷者となった時と同じくらい大きい負担でした。その時考えたことが、歳を重ねていく将来の生活のことでした。歳とともに上肢の力は衰えていき、自分で移乗できない、移動できない時期が来る。その時の移乗や生活方法はどうするかということです。

仕事で、吊り上げ式リフトやトランスファーボード、スライディングシートなどの開発や使い方をまとめてきましたので、68歳となった現在、筋力が低下しましたので、毎日の運動(ハンドエルゴメータを1時間駆動)と筋力トレーニングを行うことに加え、ベッドへの正面移乗の時に踵の下にスライディングシートを敷いて移乗時の抵抗を少なくしています。また、自動車の運転席から車椅子への移乗には、トランスファーボードを使って安全に移乗しています。便器への移乗や浴槽への移乗時には、手すりを設置して上肢の力で移乗しています。

しかし、今後のことを考えると筋力衰えや自分でできなくなる不安は募ります。一般の方々は、介助してもらえばよいと思うかもしれませんが、自分でできていたことを人に頼むことの辛さを知っている私は、そうはいきません。何とかして自分でできないものかと考えていました。そういう時、モリトーの森島社長から「ぶらん歩」を紹介されたのです。

ベッドで端座位になる時、臀部の下に「ぶらん歩」の座の部分(写真左の手のところ)に座ってハーネスを装着することで、中央写真のように自分のスイッチ操作で、立位姿勢や床まで降りて戻ることもできるし、トイレに設置すれば便器にも自分で移れるのです。私の将来の生活は、「ぶらん歩」を使えば自立生活ができることを確信しました。今後、多くの方に試して有効性を実証して、自立したい人や介護負担軽減を求めている人に勧めたいと思います。市販化が楽しみです!
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