行政の動き-令和4年度障害保健福祉関係予算案及び令和3年度補正予算について

「新ノーマライゼーション」2022年3月号

厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部企画課

令和4年度障害保健福祉部予算案 2兆3,538億円

令和4年度障害保健福祉関係予算案につきましては、対前年度5.3%増の2兆3,538億円を計上しております。主な内容は以下のとおりです。

○ 良質な障害福祉サービス、障害児支援の確保 1兆7,960億円
うち障害児支援関係4,256億円

障害児・障害者が地域や住み慣れた場所で暮らすために必要な障害福祉サービスや障害児支援を総合的に確保します。

また、障害福祉職員を対象に収入を3%程度(月額9千円)引き上げるための措置を実施します。

○ 地域生活支援事業等の着実な実施 518億円

意思疎通支援や移動支援など障害児・障害者の地域生活を支援する事業について、地域の特性や利用者の状況に応じた事業の着実な実施を図ります。

○ 障害福祉サービス等提供体制の基盤整備 48億円

障害者等の社会参加支援や地域生活支援を更に推進するため、地域移行の受け皿としてのグループホームや生活介護等を行う日中活動系事業所、障害児支援の拠点となる児童発達支援センター等の整備を促進します。

○ 医療的ケア児への支援の充実 4.0億円

医療的ケア児等への支援の充実を図るため、令和3年9月18日に施行した「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」に基づく「医療的ケア児支援センター」の設置を推進するとともに、医療的ケア児等への支援者の養成、地域で関係者が協議を行う場の設置、医療的ケア児等に対する看護職員確保のための体制構築、医療的ケア児等の家族への支援等を総合的に実施します。

○ 精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築 8.0億円

精神障害者が地域の一員として安心して自分らしく暮らせるよう、住まいの確保支援を含めた精神障害にも対応した地域包括ケアシステムの構築を目指します。このため、障害保健福祉圏域ごとの保健・医療・福祉関係者による協議の場を通じて、精神科病院、その他医療機関、地域援助事業者、市町村などとの重層的な連携による支援体制を構築し、地域の課題を共有した上で、地域包括ケアシステムの構築に資する取組を行います。

また、精神疾患の予防や早期介入を図る観点から、メンタルヘルス・ファーストエイドの考え方を活用した「心のサポーター養成事業」を実施し、メンタルヘルスや、うつ病、摂食障害などの精神疾患に対する理解の促進及び地域や職場での支援を受けられる体制確保を推進します。

図 障害福祉サービス等予算の推移拡大図・テキスト

また、令和4年度予算案につきましては、令和3年12月3日に閣議決定された「令和4年度予算編成の基本方針」に基づき、いわゆる「16か月予算」の考え方で、令和3年度補正予算と、令和4年度当初予算を一体として編成されております。

この「16か月予算」についてですが、令和3年11月19日に「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」が閣議決定され、新型コロナウイルス感染症対応に万全を期すとともに、「新しい資本主義」を起動させ、「成長と分配の好循環」を実現させるため、以下の1~4の4つを柱とする総合的な経済対策を策定するとされております。

1.新型コロナウイルス感染症の拡大防止
2.「ウィズコロナ」下での社会経済活動の再開と次なる危機への備え
3.未来社会を切り拓く「新しい資本主義」の起動
4.防災・減災、国土強靱化の推進など安全・安心の確保

これら4つの柱に基づく経済対策の裏付けとなるものとして令和3年度補正予算(令和3年12月20日成立)が計上されているところ、令和4年度以降も、切れ目なく万全の財政政策を実行するために令和4年度当初予算と一体的に編成する必要があることから、いわゆる「16か月予算」の考え方が採用されております。

令和3年度障害保健福祉部補正予算 619億円

令和3年度補正予算につきましては、前述の「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」を裏付けるものとして計上されており、障害保健福祉部に関係する主な内容は以下のとおりです。

○ 障害福祉の現場で働く方々の収入の引き上げ 414億円

障害福祉職員を対象に賃上げ効果が継続される取組を行うことを前提として、収入を3%程度(月額9千円)引き上げるための措置を令和4年2月から前倒しで実施するために必要な経費を都道府県に交付します。

他の職員の処遇改善にこの処遇改善の収入を充てることができるような柔軟な運用も認めます。

○ 生産活動拡大支援事業 6.5億円

新型コロナウイルス感染症の影響により生産活動が停滞している就労系障害福祉サービス事業所に対し、新たな生産活動への転換や、販路開拓、生産活動に係る感染防止対策の強化等を通じて、事業所の生産活動が拡大するよう支援します。

○ 障害福祉サービス事業所等に対するサービス継続支援 36億円

新型コロナウイルス感染症の感染者等が発生した障害福祉サービス等の提供体制に対する影響を最小限に留めるため、障害福祉サービス施設・事業所等が、関係者との連携の下、感染拡大防止対策の徹底や創意工夫を通じて、必要な障害福祉サービス等を継続して提供できるよう支援を行います。

また、施設・事業所等において、感染者等が発生した場合に備え、職員の応援体制やコミュニケーション支援等の障害特性に配慮した支援を可能とするための体制の構築を行います。

○ 新型コロナウイルス感染症に対応した心のケア支援 51百万円

新型コロナウイルス感染症の長期化に伴ううつ病等に対する精神衛生上の支援(心のケア)を実施できるよう精神保健福祉センター等への支援を行います。

○ 医療的ケア児支援センターの開設支援事業 71百万円

令和3年6月に「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」が成立し、9月から施行されているところ、医療的ケア児の健やかな成長を図るとともに、その家族の離職の防止に資する等の目的を踏まえ、都道府県において「医療的ケア児支援センター」を早期に開設し、医療的ケア児やその家族からの相談を受け、医療的ケア児に適切な支援を繋げることが期待されている。このため、都道府県に対して、「医療的ケア児支援センター」を運営する上で必要な備品購入等について補助を行うことにより開設を促進します。

○ 障害者支援施設等の耐災害性強化等 86億円

「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」に基づく障害者支援施設等に対する耐震化整備、非常用自家発電設備の設置、浸水対策等について支援及び災害復旧を行います。

○ 障害福祉分野のロボット等導入支援事業 2.9億円

障害福祉の現場におけるロボット技術の活用により、介護業務の負担軽減等を図り、労働環境の改善、生産性の向上等を通じて安全・安心な障害福祉サービスの提供等を推進するため、障害者支援施設等がロボット等を導入するための費用について財政支援を実施します。

○ 障害福祉分野のICT導入モデル事業 4.6億円

障害福祉分野におけるICT活用による生産性向上の取組を促進し、また新型コロナウイルスの感染拡大を防止する観点から、障害福祉サービス事業所等におけるICT導入による安全・安心な障害福祉サービスの提供等を速やかに推進します。

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