総合リハビリテーション研究大会の経緯と本大会の趣旨について

第43回総合リハビリテーション研究大会実行委員長 松井 亮輔
(日本障害者リハビリテーション協会 副会長)

このたびはリモート方式ではあっても、関係者の皆様から積極的なご協力をえて、この大会を開催できたこと、そして全国から多くの方々にご参加いただけたこと、大変うれしく思います。

本大会の趣旨についてお話する前に、この大会にはじめて参加される方も少なくないと思われますので、本大会が開催されることになった経緯についてかいつまんでご説明させていただきます。

1.総合リハビリテーション研究大会の経緯

いまから56年ほど前になりますが、1965年に日本ではじめて「リハビリテーション」をテーマとする国際会議である、「国際リハビリテーション協会(RI)汎太平洋リハビリテーション会議(現・RIアジア太平洋地域会議)」が東京で開催されました。そして、その準備をするための国内組織として、現・日本障害者リハビリテーション協会の前身である、日本肢体不自由者リハビリテーション協会が1964年に設立されました。ご承知のように、同年は前回の東京オリンピックおよび東京パラリンピックが開催された年でもあります。その東京パラリンピックに参加した日本選手のほとんどが、病院や施設で生活していたのに対し、海外から参加した選手のほとんどが職業をもつ社会人であったことは、多くの関係者が、日本の障害者施策の後進性を自覚する大きなきっかけとなりました。

その意味では、その翌年の1965年に汎太平洋リハビリテーション会議が開催されたのは、タイミングとしてとてもよかったといえます。 

その会議のメインテーマは「リハビリテーションの具体的実践」で、分科会のテーマを見ると医学から職業までを含む、総合的なサービス体系であることが分かります。この大会を契機として、国内でそれまで使われてきた「更生」(もとのよい状態にもどる、という意味)に代わり、「リハビリテーション」が広く使われるようになってきたように思われます。

・1977年に、本大会は「リハビリテーション交流セミナー」として、首都圏在住の各分野のリハビリテーション関係者から構成される10数名の有志により始められました。

・1980年の第4回交流セミナー以降、日本障害者リハビリテーション協会(以下、リハ協)が主催団体になっています。

・そして、1991年には「総合リハビリテーション研究大会」に名称が変更されました。それ以降、原則として、首都圏と地方、持ち回りで開催(首都圏で23回、地方で19回)。しかし、参加者が限られていたこと、また、地方での開催で期待された、その後各地での継続的な開催にはつながらなかったことなどで、本大会が意図した「総合リハビリテーション」の国内普及は、これまでのところ十分達成されていません。

2.本大会の趣旨

・コロナ危機で昨年の大会は中止され、今回はじめてリモート方式で開催することにしたものです。従来の対面方式では参加者は、主として開催地関係者に限られていたのが、今回は全国どこからでも参加できるという意味で、従来以上の参加者の広がり、ひいては「総合リハ」のさらなる国内普及につながることを、私たちこれまで本大会に関わってきた関係者としては期待させていただいています。

・本大会ならではのユニークな企画は、基調講演として、国連で障害者権利条約事務局を担当されている伊東亜紀子さんに大会テーマにそった国連での取り組みなどについてお話しいただけることです。権利条約を批准した各国代表者などから構成される「締約国会議」(毎年6月にニューヨークの国連本部で開催)の事務局を担当されていることから、権利条約をめぐる各国の動き等についてもお話をうかがえるものと思われます。

また、障害当事者を中心とした、パネル1「コロナ危機と障害者:その暮らし方がどう変わったか」、そしてリハ専門家を中心とした、パネル2「コロナ危機とリハビリテーション」に続いて、両パネルのコーディネーターによる対話が行われますが、その対話からコロナ危機下およびその後の総合リハビリテーションをめぐる障害当事者とリハ専門家との関わりのあり方について多くのヒントが得られることを期待させていただきます。

本大会の最後のプログラムになりますが、横浜市リハビリテーション事業団顧問の伊藤利之先生を委員長として、「総合リハビリテーションのあり方に関する検討会」が設立され、今年初めから全体で7回にわたりオンライン会議で検討が行われてきました。本大会では、伊藤先生にその中間報告をしていただきます。今後の本大会のあり方を考えるうえで極めて貴重なご提言をいただけるものと期待させていただきます。

次回の大会は、横浜市総合リハビリテーションセンターの高岡徹センター長を実行委員長として来年9月30日~10月1日に開催されますので、その大会にもぜひご参加くださるようお願い申し上げます。

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