字幕の質的向上を

「新ノーマライゼーション」2022年5月号

一般社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会 理事
小川光彦(おがわみつひこ)

テレビの字幕は聞こえにくい私たちにとって悲願でした。1986年に文字放送(字幕放送)が開始されてもなかなか字幕番組が増えないことから、「テレビの字幕放送拡充」署名に取り組み、1996年に40万5千筆を集め、国会請願した結果、字幕等についての行政指針が作られるようになりました。2000年NHK夜7時のニュースで初めて生放送に字幕がついた時は、各地で関係者が集まって合同で視聴し祝いました。最近はCMに字幕が付くことも増えてきています。まずは関係者の不断の取り組みにお礼申し上げたいと思います。

現在字幕について、全難聴の主要な主張は、次の4点です。

1.字幕の付かない生放送番組等への字幕付与2.緊急時・災害時等、地域放送局での身近な情報に字幕を3.政見放送 ・国会中継の完全字幕を(参政権)4.ネット上の動画にも字幕を(JIS X 8341-3)

このうち、ネット上の動画の字幕については、日本産業規格JIS X 8341-3で、収録済み動画のキャプション(字幕)付与を最低基準のレベルA、ライブ動画でレベルAAとしています。公共調達においてはJISを尊重する規定があります。
(出典)JIS X 8341-3:2016高齢者・障害者等配慮設計指針―情報通信における機器、ソフトウェア及びサービス―第3部:ウェブコンテンツ

さらに近年、新たに大きくなってきた課題があります。生放送の字幕の遅れについては従来、技術的に仕方のないこと、まずは字幕が付くことが優先課題と考えていました。ですが「字幕の遅れが気になる」61.3%、「画面と字幕がずれて楽しめない」60.8%、「CM前に字幕がカットされてしまう」57.6%等の不満がありました(2021年全難聴・ぴったり字幕視聴アンケート 回答604件)。

字幕の遅れについて、NHKでは「ぴったり字幕」や、ネット放送であるNHKプラス上での字幕同期視聴の新技術を実現させています。これらは当事者や関係者に非常に好意的に受け止められています。まだ実施が限定的ですが、ぜひ放送事業者はじめ関係者全体で、拡大に向けて取り組めるようにしたいと考えています。

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