盲ろう者が望むテレビ放送

「新ノーマライゼーション」2022年5月号

社会福祉法人全国盲ろう者協会
庵悟(いおりさとる)

1. テレビを楽しみたい

視覚と聴覚の二重の感覚障害である「盲ろう」という障害があっても、テレビを楽しみたいという盲ろう者は多い。しかし、字幕や手話放送が付いても見えず、通常のテレビ音声に解説放送が付いても聞こえない。

少しでも見えたり聞こえていれば、もっと見やすく、もっと聞きやすくならないかと思う。また、全く見えず聞こえなくても、テレビの情報がほしいと切に思う。

2. タイプによるニーズの違い

全盲ろうの場合、テレビの音声や画像から情報を得ることはできない。点字ディスプレイで、字幕・解説放送のデータを点字で読めるとよい。

全盲難聴の場合、音を頼りにする。テレビ音声がはっきり聞き取れなかったり、解説放送のスピードが速いとついていけない。聞き取りやすい話し方と速度の調整ができるとよい。

弱視ろうの場合、目を頼りにする。字幕や手話が小さい、速い、コントラストがはっきりしないと読み取れない。字幕や手話はテレビ画面とは別画面に固定し、大きめにはっきり表示されるとよい。

弱視難聴の場合、残された目と耳の能力をフルに活用する。テレビの生放送では、字幕の表出の遅れがあるため、情報が取りにくい。音声と字幕が一致して表出されるとよい。

3. 共通する問題

ドラマやバラエティ番組などの登場人物が複数いる場合、誰が何を言っているのかはっきりしないと楽しめない。字幕には、セリフの前に話者の名前を必ずつけるべきである。将来、点字ディスプレイで字幕が読めるようになれば、全盲ろうでもテレビを楽しめるようになる。

4. 今後のテレビ放送に望むこと

単一の視覚か聴覚のいずれかの障害者であっても、加齢や病気等で「盲ろう者」になる可能性が高い。

今後、国のリードで、放送事業者・メーカー・盲ろう者・高齢者・支援者とで、テレビ放送の「見やすさ」「聞きやすさ」「わかりやすさ」を重視した放送アクセシビリティを望みたい。

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