地域で暮らす・支える-地域生活支援拠点等の整備-千葉県柏市における地域生活支援拠点の整備

「新ノーマライゼーション」2022年6月号

柏市保健福祉部障害福祉課
小野剛一(おのごういち)・田中聡美(たなかさとみ)

1.柏市の概要

柏市は、都心から約30kmに位置する千葉県北西部の中核市で、人口429,865人(令和4年3月1日時点)、面積114.74km2の都市です。鉄道は都心から放射状に常磐線及びつくばエキスプレスが、南北には東武アーバンパークラインが通っており、都心に通勤する方も多い地域となっています。

令和4年3月末時点の市内に住む障害のある方については、障害者手帳(身体・療育・精神)所持者が19,188人で障害福祉サービス利用者数は、大人と子どもを合せて4,308人となっています。

障害福祉サービス新規申請者の傾向としては、柏市の地域特性として若い世代の家庭の流入が増えており、児童通所系サービスの利用申請が増えています。

2.柏市の地域生活支援拠点の整備について

柏市の地域生活支援拠点の整備については2015年度から3か年の障害福祉計画を策定するための国の基本方針に盛り込まれたことで、それを踏まえ、同年から3か年のノーマライゼーションかしわプラン(第3期柏市障害者基本計画(中期計画)・第4期柏市障害福祉計画)の中に拠点の整備を重点施策として盛り込みました。

背景には、柏市でも全国の状況と同様に障害者の高齢化・重度化、「親なき後」が地域の課題となっていました。当事者や家族など各団体にヒアリングを行うと、「相談事業所のほとんどが夜間休日は相談を受けてくれない」「緊急事態を相談しても、即受け入れてくれるところが見つからない」などの切実な声も寄せられ、そこで相談から緊急時の対応などワンストップで行う、地域生活支援拠点(多機能拠点整備型)の整備に取り組むこととしました。

地域生活支援拠点の整備の在り方については、40万人を超える柏市の人口規模では、概ね10万人に1か所は必要と考え、2020年までに4か所を整備する計画を立てました。まず、2017年に地域生活支援拠点あおばと地域生活支援拠点たんぽぽの2か所を整備し、2018年度からのノーマライゼーションかしわプラン(第3期柏市障害者基本計画(後期計画)・第5期柏市障害福祉計画)にも継続的に重点施策とし、同年に地域生活支援拠点しょうなん1か所、2019年は地域生活支援拠点ぶるーむ1か所と計4か所を計画どおり整備しました。

地域生活支援拠点の運営については、2017年の夏に地域生活支援拠点の代表者や有識者、当事者家族や行政などを構成委員とした「柏市地域生活支援拠点運営協議会」を設置し、拠点機能の評価や支援困難事例の検討、さらに地域課題の共有などを行い、適切な運営が図れるよう努めています。

3.柏市における地域生活支援拠点の内容と特徴

柏市の4か所の地域生活支援拠点に「地域生活コーディネーター」を配置し、1.24時間365日の緊急時相談支援2.短期入所の利用(緊急時等)3.グループホームによる居住・体験の場の提供4.地域の人材育成5.地域の体制づくりの5つの機能を共通して持ち、身体・知的・精神・発達などの障害に対応するようにしました。さらに地域の状況を踏まえた独自の機能と、これまでの事業展開から各障害への強みを活かした活動を展開しています。

地域生活支援拠点あおばでは、独自の機能として重度障害者に対応したヘルパーの派遣や高齢障害者に対応したデイサービスが整備されています。また、発達障害者への支援も強みとしています。

地域生活支援拠点たんぽぽでは、訪問看護ステーションや多機能型事業所での本格パン製造販売、医療的ケア児に対応した放課後等デイサービスの運営などを実施しています。また、精神障害者への支援を得意としています。

地域生活支援拠点しょうなんでは、障害者支援施設を中心に、相談支援事業所やグループホーム、短期入所を組み合わせ、新たに24時間相談機能を付加しました。また、知的障害者への支援が強みとなっています。

地域生活支援拠点ぶるーむでは、独自の機能として診療所を併設した訪問看護、重度障害者に対応した生活介護や居宅介護、さらに地域に開放されたコミュニティースペースを展開しています。重度障害者や医療的ケア児者への支援を得意としています。

柏市を大きく4地区に分け、地域生活支援拠点が担当地域の中心的な役割を担い、障害福祉サービスや医療機関、教育機関などを結ぶ「かしわネットワーク」の構築を目指していることから、各地域生活支援拠点において、地域の相談支援事業所の相談支援専門員や地域包括支援センター、医療機関のソーシャルワーカーや各関係機関を対象に、事例検討や地域課題や情報の共有などを行う、地区別研修を開催し、さまざまな機関との地域連携の強化を図りながら、さらなるネットワークの発展を目指しています。

4.現在の課題と今後の展望

地域生活支援拠点の役割は、誰もが地域で安心した生活を送るための体制整備であり、地域の中核となり、ネットワークの強化を図ることが使命と考えています。それにはさまざまな社会資源と日々の有機的な関わりを持ち、連携していくことが重要と考えます。連携の中から、地域課題が見え、課題への対策を官民協働で取り組むことが必要です。

しかし、地域課題の吸い上げが十分にできているかと言われれば、まだまだ道半ばの段階です。

国は地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律(令和2年法律第52号)により改正された社会福祉法において、地域住民の複雑化・複合化した支援ニーズに対応する包括的な支援体制を構築するため、市町村において、属性を問わない相談支援、参加支援及び地域づくりに向けた支援の3つの支援を一体的に実施する事業、いわゆる「重層的支援体制整備事業」が創設され、令和3年4月1日から施行されることとなりました。この3つの支援の内容は、個別支援の観点から、包括的に相談を受け止め、支援関係機関全体で支援を進めるとともに、参加支援を通じて、本人や世帯に寄り添い、社会とのつながりを回復する支援を実施しつつ、地域における多世代の交流や多様な活躍の場を確保する環境整備を実施することで、個別支援と地域に対する支援の両面から、人と人とのつながりを基盤としたセーフティネットを強化するものです。

柏市においても、令和4年度から重層的支援体制整備事業をスタートすることとなりました。障害・高齢・児童・生活困窮などの分野が有機的に連携していくことが必要となることからも、地域生活支援拠点が各地域の中心的な存在となるような働きが求められています。今後は、それぞれの地域で分野を超えた連携を図りながら、地域課題の抽出と課題の解消に向けた取り組みが期待されています。

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