快適生活・暮らしのヒント-若年性パーキンソン病患者の日常生活と症状改善の工夫

「新ノーマライゼーション」2022年6月号

丸山美重(まるやまみえ)
全国パーキンソン病友の会

パーキンソン病といえば高齢者が患う病いというイメージが強いかもしれませんが、ごくまれに私のような若年性の患者さんがいるのです。

パーキンソン病は一般的に振戦、固縮、姿勢反射障害などの症状が挙げられますが、実際にはもっといろいろな症状があります。また、個人によって症状も違い理解していただくのはとても難しく、同病者であってもなかなか分かり合えないという現実もあります。

突進という症状があります。読んで字のごとく走り出してしまい、どこかにぶつからないと止まることができません。前にも、後にも突進します。私はこの症状がとてもひどくて、家の中でとにかく走ってはぶつかるところを探し、体当たりをして方向を変えてまた走る、という動きをひたすら繰り返しています。

この突進のブレーキ役となってくれるのが床から天井にかけて立ててある一本の突っ張り棒です。この突っ張り棒がなかったら私の日常は激突と転倒の繰り返しだったでしょう。突っ張り棒は、主婦の一番の通り道である台所とリビングで大活躍です。ものすごい勢いで走ってきた私は突っ張り棒に手を引っ掛けて、くるっと45度回転してキッチンのシンクに体を当ててストップします。突進の症状のひどい方は、ぜひご自分の通り道のポイントとなる部分に1本立ててみてください(写真1)。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1はウェブには掲載しておりません。

薬が切れてくるとロボットのスイッチが切れたように体が動かなくなります。こんな症状のことを無動といいます。無動にまでいかなくても、動作緩慢であったり、すくみ足であったり、とにかく体の動きに障害が出てくるのですが、そんな時メトロノームのカチカチする音を聞きながら歩いていたりすると症状が改善されます。スピードの速さは120からちょっと早めくらい。音はちょっと高めの方が良いです。なぜだか分かりませんが、この音とスピードを体感すると体の動きがかろうじて良くなります(写真2)。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真2はウェブには掲載しておりません。

日常生活の中でパーキンソン病患者は症状が進行するとできなくなってしまうことがたくさんあります。例えば、電車に乗っていると電車から降りるという行為ができなくなる。エレベーターの扉が開くと降りられない。エスカレーターに乗りたくても最初の1歩が出ないなど。私はそんな症状が出てしまった時は頭の中の大きな消しゴムでその事実を消して、なかったことにします。自分はエスカレーターに乗れる、エレベーターにも乗れる、思考回路をプラスのほうに向けるようにしています。

私たちパーキンソン病患者は、いろいろな介護グッズを活用しながら生活をしています。それでいて自分の力を限りなく信じて脳が反応する方法を探していくのも1つの楽しみだと思って、1日1日を送っています。

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