私の大学時代

「新ノーマライゼーション」2022年7月号

筑波技術大学総務課広報・情報化推進係
森敦史(もりあつし)

私は生まれた時から視覚障害と聴覚障害を併せ有する先天性盲ろう者です。2017年度にルーテル学院大学総合人間学部社会福祉学科を卒業し、2020年度に筑波技術大学大学院技術科学研究科情報アクセシビリティ専攻を修了しました。現在は同大学の総務課広報・情報化推進係の事務補佐員及び障害者高等教育研究支援センターの技術補佐員として勤務しています。

私は、見えない・聞こえない状態にあり、コミュニケーション・情報入手・移動に困難があるため、コミュニケーション方法として、主に触手話(相手の手話に軽く触り手話を読み取る方法)を使用しています。その他、指点字やパソコンを使用したチャット等の活用が可能です。また使用文字として、点字を使用しています。

大学では、盲ろう学生支援の前例が少ない中、大学の教職員と話し合いを重ねながら、さまざまな支援を受けていました。

講義では、情報保障として触手話通訳を受けていました。大学が通訳にかかる経費を負担し、触手話通訳が可能な通訳者が交代で2名来てくださいました。また、触手話通訳を受けながら講義内容のメモを取ることが難しいため、学生や外部の方に依頼して、パソコンで記録していただきました。記録されたデータは、ブレイルセンス(※1)や点字ディスプレイをパソコンに接続して、点字で読むという形を取っていました。

なお、この方法を活用し、英語の授業等では、BMチャット(※2)によるパソコン通訳を受けていた他、大学院入学後は、遠隔情報保障システムを利用するなど、新たな方法を模索していました。

さらに、配布資料、教科書、参考文献等についても、テキストデータに変換されたデータの提供を担当の教員や図書館に依頼し、上記の方法で閲覧していました。講義のレポートもテキストデータで作成し、メール添付にて担当教員に提出するという形を取っていました。

講義以外の生活では、単独での通学が難しいことから、ボランティア組織として「あっくんクラブ」を発足し、学内や近隣の大学、地域の手話サークル等に協力を呼び掛けました。その結果、5名から10名程度のメンバーが集まり、彼らが交代で通学時に自宅から大学まで同行してくれました。メンバーが寝坊したために授業に間に合わなかっただけでなく、大学の職員が車で迎えに来てくださって恥ずかしい思いをしたことは、今になってはよい思い出です。なお、協力してくださった方とは通学の支援だけではなく、昼食をともにしたり、交流会を開催するなどして、親睦を深めることができました。

また、「あっくんクラブ」では通学支援以外にも、資料のテキストデータ化作業やろう者や盲ろう者団体の行事等への参加の同行等も依頼しており、中にはテキストデータ化作業等を遠隔支援にて担当してくださった方もいました。

大学にも手話サークル等がありましたので、学内の礼拝や行事に参加する際には、「あっくんクラブ」のメンバーだけでなく、手話サークル等の方々にも触手話通訳やパソコン通訳をお願いしていました。

こうした支援と友人としてのネットワークがあったおかげで、講義だけでなく、学園祭で模擬店を担当したり、サークルの話し合いに参加したり、学外では飲み会に参加したり、充実した大学生活を送ることができました。


※1 韓国製の点字音声情報端末。パソコンやスマートフォンの点字ディスプレイとして使用できる他、単体でメールやインターネットの利用やテキストデータ等の読み書きが可能である。ブレイルセンスシリーズとして多数の製品が発売されている。
URL:http://www.extra.co.jp

※2 盲ろう者向けに開発されたチャットシステム。ブレイルメモとパソコンを接続することで利用が可能である。
URL:https://www.kgs-jpn.co.jp/

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