地域と連携・協働した京都市立西総合支援学校の取組~西総合支援学校コミュニティ・スクールのこれまでとこれからと~

「新ノーマライゼーション」2022年9月号

京都市立西総合支援学校
校長 清水美穂子(しみずみほこ)/教頭 中西太郎(なかにしたろう)

1. 本校の概要

本校は、昭和61年4月に二条城東側に面した京都市の中心道路である堀川通より西部に居住する知的障害のある小学生から高校生の学齢の子どもたちが通う養護学校として、京都市西京区にある桂坂の地に開校し、今年度で開校から37年目を迎えています。学校のまわりには、障害者授産施設や入所施設、高齢者入所施設があり、福祉ゾーンの一角としてコミュニティを形成しています。近年は、保育所も開所され、地域全体で福祉について受け入れる土壌ができあがっています。

京都市では、平成16年4月に全国初の総合制・地域制の養護学校として再編を行い、本校は京都市立西総合養護学校として、新たなスタートを切りました。その後、平成19年4月に京都市立西総合支援学校に校名変更し、現在に至ります。

京都市立総合支援学校では、児童生徒一人ひとりに「個別の包括支援プラン」を作成し、一人ひとりのニーズに応じた教育課程を編成し、教育活動を進めています。また、本校では開校当初から、1学級1担任1教室制を取り入れ、再編以降も継続しています。学級では、さまざまな障害のある子どもたちがクラスメイトとして、同じ教室で共に学んでいます。これは、京都市立総合支援学校としてあるべき姿であり、社会の中で他者と協働しながら豊かに生きていくために必要な姿であると考えています。

同時に、総合育成支援教育相談センター<育(はぐくみ)支援センター>を開設し、地域の子ども、保護者、保育園、幼稚園、小学校、中学校等を対象に、一人ひとりに応じた教育について相談と支援を行い、また地域の医療・福祉機関等とも連携しています。

2. 学校運営協議会設置

京都市立総合支援学校では、平成16年4月の総合制・地域制の養護学校への再編を機に、さまざまな教育活動を進めてきました。教育活動を進めるうえで重視した点の1つに、子どもたちの居住する地域での学習があります。特別支援学校の校区は、地域の小中学校と違い、広範囲にわたります。子どもたちは普段の生活はもちろんのこと、本校を卒業後は、地域で生きる一人の生活者(市民)となります。障害のある子どもたちが、地域で自立し、社会参加するためには、生活支援の視点に立つことが重要です。そのため、京都市立総合支援学校は、「地域に開かれた学校」として、校区内の地域支援を併せ持つセンターとしての役割を果たし、保護者や校区内の小学校・中学校はもとより、福祉・医療・関係機関、地域諸団体や市民との連携・協働やネットワーク構築に努めています。

そして、「このような理念や取組を形にしたい」という当時の本校学校長の熱い思いがあり、本校は京都市教育委員会から、養護学校として全国初の学校運営協議会を設置するコミュニティ・スクールに指定され、併せて「コミュニティ・スクール推進事業(文部科学省研究指定)」「学校運営協議会の運営に関する実践研究(京都市教育委員会)」「障害のある子どもの地域活動を支えるボランティア養成事業(全国特殊学校校長会指定)」の研究指定を受け、平成17年6月11日に第1回学校運営協議会を開催しました。

3. これまでの取組

校区が広範囲にわたる特別支援学校において、コミュニティ・スクールを構想するうえで、基盤となるコミュニティの定義は2つあると考えます。

1つめは、学校がある地域、子どもたちが居住する地域で形成する「ローカル・コミュニティ」、2つめは、教育や子育てなど共通するテーマに集い、形成する「テーマ・コミュニティ」です。

この考え方を基本として、本校の学校運営協議会では3つのプロジェクトを立ち上げ、学校と地域が連携・協働しながらさまざまな取組を行ってきました。

(1)キャリアアップ支援プロジェクト(地域での生活を豊かにするための学習展開)

○居住地校との交流及び共同学習

○居住地域での校外学習

○働くことを学ぶ学習

(2)地域とともにプロジェクト(地域と連携した放課後活動等の運営・連携)

○居住地域の障害のある子どもの保護者を対象にした「校区地域交流会」

○校区内住民を対象とした「ボランティア養成講座」

○障害のある子どもの放課後等の居場所づくりを目指し、居住地域の小学校の教室等を借りて、保護者やボランティア等と活動する「わくわくクラブ」「にこにこクラブ」

○地域の方やボランティア等と居住地域や近隣の高等学校や大学、公共施設に出かけたり、校内で茶道体験やフラダンス、和太鼓、染め物体験等を行ったりする「サマースクール」

○本校の芝生グラウンドが地域の障害のある方々の拠点となることを目指した「芝生まつり」

○本校児童生徒の絵画作品等を居住区域の区役所やスーパー等に展示し、地域への発信を行う「地域作品展」

(3)学校評価・管理プロジェクト(学校評価の実施・分析・改善等の検討)

○学校運営協議会で学校が地域に向けて発信すべきことなどを議論

これらの取組により、学校内だけではなく、学校外も学習の場として活用できるようになりました。また、これらの取組を地域に広く発信したり、ボランティアの養成や地域住民との関わりを重ねたりする中で、障害のある方々への理解や学校の存在を認知していただけるようになり、双方向の援助による新しい地域の創造につながっていきました。

このように、さまざまな取組を通じて一定の成果はありましたが、現在は、放課後等デイサービス事業の充実により発展的解消した取組や、コロナ禍により中止や見直しを余儀なくされた取組もあります。

そのような中で、「今の状況において取り組める活動は何か?」「工夫してできる活動はないのか?」等、学校運営協議会で熟議を重ねてきました。

4. これから目指すもの

これからの取組のキーワードは「馴染み」と「オンライン」です。

「馴染み」については、学校運営協議会委員の方々に本校の児童生徒をもっと知っていただくとともに、児童生徒も委員の方々と関わり「馴染み」になる。その取組を通して、「子どもたちに有益な取組を検討できる⇔児童生徒も顔見知りが増え、関わりの幅が拡がる」というねらいです。これまでに、学校運営協議会委員による本校校歌の手話動画を撮影して終業式等で流したり、委員自らが本校中学部生徒のワークスタディの授業に入り、生徒と一緒に体験活動を行いました(写真1)。また、地域に居住する高齢者の方々へ米寿のお祝いで、ワークスタディ製品をプレゼントする活動を行いました。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1はウェブには掲載しておりません。

今後は、本校が所在する桂坂地域に居住する方から伝統工芸等を教わる「桂坂人材バンク」構想の実現に向け、少しずつ形を整えていこうと考えています。

桂坂地域には、我々が知らないスポットが、まだまだ数多くあると聞いています。委員の方からは、「地域の方からそのスポットをいくつか地図とともに紹介してもらい、そのスポットを地図を頼りに見つける『桂坂ウォークラリー』もできるのではないか?」という意見もいただきました。その他にも、「ICTを活用し、職場見学や福祉事業所見学もリモートで行えないか?」という意見もいただいています。

新型コロナウイルス感染症の終息はまだ見えない状況ですが、これまでの取組で大切にしてきた理念を活かしながら、新たな西総合支援学校コミュニティ・スクールをつくり上げていけるよう、取組を進めていきます。

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