地域で暮らす・支える-地域生活支援拠点等の整備-大阪府堺市における地域生活支援拠点等の整備について

「新ノーマライゼーション」2022年9月号

堺市健康福祉局障害福祉部障害施策推進課 課長
小須田教一(こすだきょういち)

1. 堺市の概要

本市は、近畿地方の中部、大阪府の中南部に位置し、市の面積は149.83km2、令和4年4月1日現在の人口817,441人、大阪府で人口・面積が第二の政令指定都市です。

市内に住む障害のある方については、令和4年3月末現在、身体障害者手帳所持者数35,760人、療育手帳所持者数8,833人、精神障害者保健福祉手帳所持者数10,890人、精神通院医療19,362人です。相談支援専門員による計画作成率は、障害者65.8%、障害児47.3%となっています。

2. 地域生活支援拠点等の整備について

平成24年度に「暮らしの場あり方検討会」を開催し、障害当事者や有識者を交え、24時間サポートと緊急時の支援を短期入所事業などに付加することを検討しました。平成26年度に3年間の検証事業として「安心コールセンター」を実施し、電話により夜間・休日等の介護者の緊急時に短期入所利用に係るコーディネートを行いました。平成27年度に「堺市マスタープラン後期実施計画」及び「第4期堺市障害福祉計画」の中で、「地域生活支援拠点等」のあり方を検討し、整備することを位置付けました。平成29年4月から新たに「緊急時の受け入れ・対応」機能として夜間・休日祝日緊急時相談コールセンター及び緊急時に支援員の派遣・移送を行う「障害者緊急時対応事業」を開始しました。この事業の具体的内容は障害者施策推進協議会にて検討しました。これにより、国が提示する5つの機能を分担し、有機的に連携することで障害者の生活を地域全体で支える面的整備型で整備しました。5つの機能は、総合相談情報センター及び区障害者基幹相談支援センターを中心につながっています。

図 整備イメージ
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3. 現在の堺市の地域生活支援拠点等における5つの機能

(1)相談

障害者等が安心して地域生活を送るため、本人や家族がどこに相談しても必要な支援につなぐことができるよう、最も近い相談窓口である計画相談支援事業所及び地域相談支援事業所、区障害者基幹相談支援センター、区役所担当課が連携しながら相談支援を行います。計画相談支援利用者は、令和4年3月末時点で障害福祉サービス等受給者の65.8%となっており、事業所数及び相談支援専門員数のさらなる拡大が必要です。

各区役所には障害者基幹相談支援センターを設置し、ワンストップで3障害に対応しています。地域での暮らしに関する相談に対応するとともに、障害福祉サービスを利用していない人等への支援、困難事例等への支援について計画相談支援事業所への助言を行います。総合相談情報センターは、区障害者基幹相談支援センターへの技術支援、広域調整等を行い、効果的かつ有機的な連携体制を構築しています。また、堺市立健康福祉プラザ内の専門機関と連携し、障害福祉の情報拠点として、情報の収集・発信を行っています。

また、各区の障害者基幹相談支援センターに地域移行コーディネーターを配置し、地域移行体制整備事業を行っています。地域移行コーディネーターは、精神科病院と連携し、職員研修のほか、入院患者が地域生活に関心を持つように、ピアサポーターを活用した茶話会等を行っています。また、入所施設においては、施設職員に対して、地域移行に関する意識を高めてもらうような研修等を実施しています。

(2)緊急時の受け入れ対応

平成29年4月に障害者緊急時対応事業を開始するまでは、緊急時に普段から利用している日中活動系サービス事業所に連絡が入ることが多く、通常業務外で事業所職員が利用者の自宅まで駆けつける等対応していました。介護者の緊急時に介護を受けられなくなる障害者を対象に、事前に緊急時の対応を希望する短期入所事業所へ登録を行い、当該法人の夜間・休日祝日のコールセンターへ連絡することにより、短期入所事業所の受け入れに係るコーディネートや必要に応じて現場への支援員派遣による支援を行います。緊急時対応事業の対象者は、1.本市の区域内に住所を有する者で、介護者と同居している18歳以上の者、2.短期入所の支給決定を受けている者で、緊急時対応を受けることを予定している短期入所事業所と利用に係る契約を締結している者、3.障害支援区分が3以上である者です。現場に派遣する支援員は、日中活動系サービス事業所の担当職員とし、短期入所事業所から日中活動系サービス事業所の職員に連絡をします。

また、介護者の入院など緊急事由により一時的に障害者(児)の介護ができない場合、緊急時に利用できるよう市が指定短期入所事業所における緊急用ベッド1床を確保しています。

(3)体験の機会・場

親亡き後を見据え、相談支援の中で早いうちから家族と離れて宿泊体験を行う機会を提供し、将来の自立生活につながるきっかけづくりを行う障害者(児)自立生活訓練事業は、慣れた支援者が隣室で待機しながら、家族と離れて外泊する事業です。宿泊体験を通じて、一つ一つ成功体験を積みながら、将来の自立生活、地域移行につながるきっかけづくりを行います。宿泊体験は事業所の空き部屋などを利用します。

単身生活体験事業では、単身生活を希望する障害者に対して、ウィークリーマンション等で体験する機会を提供し、実際の生活において必要となる支援や環境等についてアセスメントを行っています。

(4)専門的人材の育成

弁護士、司法書士、社会保険労務士などの専門家の派遣を行う専門家相談を総合相談情報センターで実施し、区障害者基幹相談支援センターや相談支援事業所の相談機能の強化を行っています。

実務経験が2年以内の新任相談支援専門員を対象に、毎月1回の連続勉強会を開催し、計画相談支援を行う上でのポイントや困りごとなど、ミニ講座とグループワークにより主任相談支援専門員が助言しています。ひとり職場が多い現状があり、相談員の資質の向上とともに、横のつながりを構築することが期待されます。

堺市立健康福祉プラザには専門機関や行政機関が入っており、連携しながら専門的な対応ができる体制を確保しています。

○健康福祉センター

市民交流センター(市民交流センター・授産活動支援センター)、スポーツセンター、視覚・聴覚障害者センター、生活リハビリテーションセンター、総合相談情報センター、障害者就業・生活支援センター、発達障害者支援センター、難病患者支援センター

○重症心身障害者(児)支援センター「ベルデさかい」

○行政機関

子ども相談所、障害者更生相談所、こころの健康センター(精神保健福祉センター)

(5)地域の体制づくり

区障害者基幹相談支援センターが運営する各区自立支援協議会において、地域の関係機関、関係者とのネットワークをつくり、地域の課題やニーズに関する意見交換や連携を行っています。

4. 地域生活支援拠点等の整備・運営における今後の課題・方針

障害者の重度化や高齢化などを見据え、5つの機能が効果的に連携できるよう、個別事例を積み重ねていく中で出てきた課題に取り組んでいく必要があると考えています。

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