快適生活・暮らしのヒント-転ばないことが第一~腰掛け動作をスムーズに行うための工夫

「新ノーマライゼーション」2022年9月号

認定NPO 全国脊髄小脳変性症・多系統萎縮症友の会(全国SCD・MSA友の会)会員
松浦たづ子(まつうらたづこ)

私は2011年、61歳の時に脊髄小脳変性症(SCD)と診断(後に多系統萎縮症(MSA)と病名が変わりました)されました。SCDは運動失調-運動のサジ加減の悪さがあり、酔っ払ったようなふらつきやろれつが回らないなどの症状がある進行性の難病です。現在は、身障手帳2級、介護保険要介護3でヘルパー家事援助週5回・入浴介助週2回、医療保険で訪問リハビリを週2回と訪問看護を月2回受けながら、単身在宅の生活を行っています。

私は、立っていても座っていても「前へ倣(なら)え」の範囲しか動けません。その範囲を外れるとバランス崩して怖い思いをしたり、転んだりします。立っていて転ぶのも怖いですが(2017年に左足甲骨折)、最近は座っていて転ぶこともあります(2022年に便器から落ちて左側の肋骨2本骨折しました)。転ばないことを第一に考えて、椅子に座ったままで動作することが増えました。今回は動作しやすい椅子の工夫をご紹介します。

椅子は福祉用具業者から自費購入しました。ひじ掛け付きで腰掛けた時にひざが直角に曲がり足が地に着くように椅子の脚(私は34cm)を切ってもらいました。そして、腰掛けたまま前方にズリズリと移動できるように、椅子の脚に少し滑るタイプのキャップをしています(写真1、2)。腰掛けたままの動作は安心できるので主にこの方法で移動しています。あまり滑らなくて少し動くのがポイントです。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真1、2はウェブには掲載しておりません。

住居はオートロック付きのマンション住まいです。来訪者がある時は、あらかじめ来訪時間に合わせて椅子に座ってインターホンの前で待ちます。インターホンが鳴ったら、椅子に座ったまま進んで自費で購入したリモコン(写真3)でオートロックを解除。ここまでは椅子に座ったまま行います。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で写真3はウェブには掲載しておりません。

オートロックを解除したら、近くにあるもの(テーブルや家具など)につかまって椅子から立ち上がり、住宅改造で設置した手すりや家具、壁を伝わって玄関ドアの操作盤(自費でスマートドアにしました)のところに行き、玄関ドアを開けて来訪者を迎えるという流れです。この動作を行うのに15分かかることもあります。

室内の移動は伝い歩きが主です。手すりや壁、動かない家具を伝っています。外出の時は300mくらいまでは歩行車を押して歩く、長距離は車椅子に座り押してもらうと使い分けています。

座位が危なくなったらどうしよう! つかまり立ちできなくなったらどうしよう! という不安はありますが、身近な家具や自助具や介助の手助けを得てもうしばらく生活しようと思っています。

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