ひと~マイライフ-夢に向かって学び続ける

「新ノーマライゼーション」2022年9月号

金子凌我(かねこりょうが)

デュシェンヌ型筋ジストロフィー(筋肉が壊れやすく、再生が追い付かずに、徐々に筋力が低下していく病気)。中学2年まで普通校に通い、中学3年から特別支援学校に通う。大学(目白大学英米語学科)卒業後はボランティア活動を中心に、勉強を重ねる毎日を過ごしている。現在電動車いすを使用。東京都練馬区在住。26歳。

はじめに

私は5歳のころから進行する病気と共に、時には下を向いたり上を向いたりと浮き沈みはありながらも、螺旋階段のようにではありますが、前に進むことだけは常に心に持って生きてきました。止まってはくれない病気に向き合い、社会に立ち向かい、自分の心と体当たりしていく中でも大事にしていた指標です。このことは私(私たち家族)のテーマでもあり、これからも忘れずに継続していきたい目標でもあります。

これまでから現在

私は現在、住んでいる区のまちづくり事業への参加や母校大学の講義参加、日本筋ジストロフィー協会での発表講演などのボランティア活動をしながら今後のための勉強や必要な知識を蓄える毎日を送っています。これらの活動を通して、社会参加の意義を再認識していきながら私の社会での立ち位置を探している日々でもあります。ボランティア活動は人生にとって大事なものを学び・吸収するという、私にとって大きな意味のあるもので、対面で何かを伝える大切さを学びました。また、障害学生を支援する団体からお受けした原稿執筆や今回の「ひと~マイライフ」の原稿執筆からは、文字を通して何かを伝える難しさを学びました。このように多くの学ぶ機会を経験して成長することができた、とても貴重な数年間となりました。

未来への展望

マイノリティといわれている障がい者は数的に少数かもしれませんが、この比率はいずれ入れ替わると予測しています。というのもこれまでマイナスと考えられていたものが、テクノロジーの発展や多様性の流入などにより取り払われ、障がい者が今までよりも社会に進出しやすくなる下地が整う可能性が高まる要因があるからです。そして、その先に見出せるのは、障がい者が能力・スキル・知識の面で社会のマジョリティになり得る未来です。私はこの自己予測に従い、将来起こると見ている私たち障がい者のキャリア選択の自由に備えて、当事者として「キャリア・コンサルタント」を取得するべく勉強をしています。

「健常者」と「障がい者」。その区分は、目の前に立ちはだかっている「壁」のような響きと、元から決まっている「差」を示すような冷たさを持っていると感じてきました。その見えない壁にあらがい、私はどのようにしたら「健常者」に近づけるのか(言い換えれば、勝てるのか)を模索して苦しく迷走していた時期を長く経験してきました。

そんな矢先、コロナ禍によって行動が制限され命の危険を感じながら生きることが日常となり、自宅にこもる生活の中で自分の心と向き合わざるを得ない状況になりました。私は心にかかったモヤを晴らすために、自然と答えやヒントを求めて自己啓発本やビジネス書を読みあさる日々を過ごし、蓄積していたヒントたちが私をある結論へと導きました。それは、区別を超えた先には「個人」があり、違いではなく個性のある「一人の人間」が存在しているという気づきです。そしてその「一人の人間」として成果を上げ、結果を残すにはどうしたらいいかと自問自答をしていく中で、私はキャリア・コンサルタントと並行して事業を起こすことで社会に貢献したいと思うようになりました。

最後に

夢に向かう道程は決して簡単なものではなく、私の病気は進行性なので困難も増えていきますが、心の中に常にマップを持ち、目的地を見据え、たとえ道が逸れたとしてもコンパスに従ってこの社会という大海原を頑張って渡っていこうと思います。

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