学びナビ - 社会福祉士国家試験令和元年度(第32回)問題解説

「新ノーマライゼーション」2022年11月号

和洋女子大学家政学部家政福祉学科 准教授/本誌編集委員長
髙木憲司(たかきけんじ)

厚生労働省は先月(10月)に「障害者総合支援法」の改正案を国会に提出しました。関連する法律を含めると改正法案は8本にものぼるとのこと。就労や相談など支援の現場にとって朗報の多いことを願う一方、ますます制度が複雑化しないかとの懸念も…。

学ぶことの多い社会福祉の担い手養成に一役買いたいとの思いから、本誌編集委員長である髙木准教授による問題解説の頁を新設しました。回答する上での考え方のポイントを学んでいただき、要領よく受験準備をしていただければ幸いです。不定期ですが連載していきます。(発行人)

〇社会福祉士国家試験令和元年度(第32回)問題解説

問題 58 事例を読んで、Gさんが利用できる「障害者総合支援法」に基づく障害福祉サービスとして、適切なものを2つ選びなさい。

〔事例〕 Gさん(22歳、男性)は20歳の時に脊髄損傷を患い、現在、電動車いすを使用しながら親元で暮らしている。これまで家族から介護を受けて生活をしてきたが、親元を離れ、日中は創作活動などを行いながら自立生活をしていきたいと希望している。一般就労はしておらず、障害支援区分は5で、電動車いすを使って移動が可能だが、手足に麻痺(まひ)がある。「歩行」、「移乗」、「排尿」、「排便」のいずれも見守りや部分的又は全面的な支援を必要としている。

1 重度訪問介護
2 行動援護
3 生活介護
4 同行援護
5 就労定着支援

【解答のポイント】正解:1、3

事例のGさんが利用可能なサービスを選択するシンプルな問題であるが、事例の文中から、情報を集め、Gさんの障害状況や希望に合わせたサービスを選択する力が必要な問題となっている。事例の情報から特に重要なものを拾うと、以下のとおりである。

  • 障害支援区分4以上、2肢以上に麻痺があり、「歩行」、「移乗」、「排尿」、「排便」のいずれも見守りや部分的又は全面的な支援が必要。
    →重度訪問介護の対象者要件
  • 日中は創作活動などを行いながら
    →生活介護のサービスが対応
  • 親元を離れて自立生活をしていきたい
    →グループホームや自立生活援助の利用が考えられるが選択肢にはない。

「2」は行動障害がないので対象外、「4」は視覚障害がないので対象外、「5」は一般就労を希望していないので適切ではない。

障害福祉サービスの各内容のある程度の知識を持っておくことが必要な問題内容となっている。

※「障害福祉サービスの各内容のある程度の知識」→サービス内容を詳細に把握しておくことが望ましいが、サービスの種類も多く詳細な知識を覚えようとすると苦手意識が生まれてしまう。例えば、同行援護は視覚障害のガイドヘルプ、行動援護は行動障害の方の主に外出時の援護など、サービス名を聞けばある程度の対象者やサービス内容のイメージが浮かぶようにしておきたい。選択肢を消去法で絞り込むためには、「薄く・広く」の受験用の知識が必要である。

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