ひと~マイライフ-脚本家になる夢を追い続けたい

「新ノーマライゼーション」2022年11月号

高岡杏(たかおかあん)

筑波大学人間学群障害科学類4年生。東京都出身。脳性麻痺アテトーゼ型という障害により、電動車椅子に乗り、日常生活全般に介助が必要なためヘルパーを利用して生活。コミュニケーションツールとして、iPadを使用し、肘で操作している。

私は生まれつき障害がありましたが、通常学校に通い、その後に筑波大学へ入学しました。小中高と特別支援学校ではなく、俗にいう普通の学校に通うことは決して簡単なことではなく、たくさん理不尽だなと感じることも、やめたくなることもありました。そんな私の夢は脚本家になることでした。高校の文化祭でクラスで映画を作ることになり、私は脚本を担当しました。映画を作る過程もとても楽しく、また、お客さんからアンケートなどに「面白かった」と書いてもらえたことが、いつも「障害があるのにすごいね」と言われることが多く、モヤモヤしていた私にとっては、私の障害に関係なく評価された気がして嬉しかったです。もっと面白い脚本が書きたいと思うようになり、絶対脚本家になろうとその時に誓いました。

大学も私は映画や脚本について学ぼうと思い、志望校を探していたのですが、授業中のノートテイク支援や通学中の食事介助等を支援してくださる学校が見つかりませんでした。本来ならば重度訪問介護利用者の大学修学支援事業で賄うこともできたのですが、私が住んでいる自治体は利用することができませんでした。その時に理不尽さを感じ、障害や福祉、特別支援教育について学び、どうしてこのような事態になっているか知りたいと思い、筑波大学に入学しました。

入学してからの1年目は教授や同級生とも意見を交わすこともできたほか、大学外の交流会等も参加することもでき、たくさんのことを学び、知識を増やしていきました。しかし、2020年に入ってから新型コロナウイルスが流行し、大学の授業はオンラインになり、行くはずだったアメリカ留学もなくなりました。人とのコミュニケーションがオンライン上になったことで、孤独感というものを強く感じるようになりました。当時、私は大学の学園祭実行委員会の委員長を務めており、コロナ禍で果たして学園祭は実施することができるのか同期の仲間と毎日遅くまで議論していました。結果的に学園祭は中止になってしまって、同期の仲間の中にはやるせない気持ちがたまったり、孤独感を強く感じてしまい、体調を壊してしまった人もいて、正直私はこの時からコロナは単なる病気以上に、人間のメンタルを壊すものと認識しています。私自身大学で教職を取っており、翌年に予定していた教育実習は私がどのような授業スタイルで行うかの他、介助者等のコロナ対策などコロナ禍独自の問題があり、それを解決するための議論を教授方と進めていましたが、その中で私は同級生ともなかなか会えず、教授とも議論する時しか話すことができず、1人でパニックになってしまいました。そうしていくうちに私のメンタルは壊れてしまいました。メンタルが壊れてからの記憶はなく、夢とか何も思い描くことができませんでした。実を言うとメンタルが回復したのはここ数か月です。きっかけは私の好きなドラマや映画を楽しく見れるようになったことです。そして私は大学生活を通して障害のある子どもが夢を諦めなくて済む世界にしたいと思うようになっていたのですが、いつの間にか私自身が夢を諦めてた部分もあると気づきました。なので私は脚本家になる夢を追いかけたいと思います。私は来年大学を卒業しますが、来年は自分のできること、自分がやりたいことをやる年にしようと思っています。障害のある子どもが夢を諦めないでいいんだと思えるようなお手本になりたいです。

menu