常に志は高く、楽しむ気持ちを大切に!

「新ノーマライゼーション」2023年1月号

社会福祉法人佛子園 ウェルネスジム「GOTCHA!WELLNESS」職員、トレーナー
門脇翠(かどわきみどり)

石川県を拠点とする社会福祉法人佛子園のGOTCHA!WELLNESSにてフィットネスインストラクターと就労支援員として勤務し始めて4年8か月が経過しました。先天性の重度の聴覚障がいをもつ私は幼少時に発音訓練を受け、現在も苦手な発音や不明瞭さは残りますが、会話が通じるくらいのコミュニケーションがとれるようになったことで、学生時代の夢であった運動指導に関わるトレーナー業務の仕事ができています。

約3年前より新型コロナウイルス蔓延でマスクが欠かせない生活となってから、口話を1つのコミュニケーション手段としていた私は、接客業である現在の仕事に対するモチベーションが一時期下がったことがありました。接客を避けて勤務時間のほとんどを事務作業で消化した日もありました。その時にまず取り組んだことは「自分を奮い立たせるためにできることを増やそう!」でした。その1つが、新しいグループプログラムの担当を持つことです。そうすれば新たな人との繋がりができて自分の理解者を増やせるだろうと思ったからです。また、ボクササイズをするインストラクターは以前からの憧れでもあったので、思い切ってチャレンジすることにしました。一定のBPM(テンポ)を刻む音源を選び、メトロノームをそばに置いて何度も動いたり、同僚の助けを借りて隣で動いてもらったりして、動きのテンポを身体に刷り込ませていきました。練習を始めて4か月後、無事に担当デビューを果たしました。使用している音源の曲の雰囲気や次の曲に切り替わっていることは相変わらず聴こえていないのですが、曲に合わせることよりも参加者一人ひとりの顔を見ながら掛け声をし続けてコミュニケーションをとること、そして何よりも自分が全力で楽しむことを念頭に置いて取り組んでいます。何でも自分のためになるはずと考えチャレンジを続けることが大切であると、今回のコロナ渦の中で経験したことで、これまでの私の信念が確固たるものになったように思います。

9月には2025年の夏季デフリンピック競技大会(以下、デフリンピック)の東京開催が決定しました。この決定を受け、私が関わるデフ陸上では取材や講演の依頼などが増えてきています。1年延期で5月にブラジルで開かれた2021デフリンピックでは日本選手団内でコロナ感染が拡大したため、大会期間中に全競技を出場辞退するという未曾有の事態となり、選手の一部に不出場者がいる中での無念の帰国となりました。スタートランプの技術員として現地に赴いていた私は出場辞退の現実を目の当たりにし、人生をかけて臨んでいた選手やスタッフの想いをどのように理解してもらえるのか、デフリンピックを目指す若者たちのことを思うと胸が痛みました。加えて、私の専門であった短距離種目において日本代表を目指す女子選手が現れず、リレー種目にも出場できない現状もあります。国内の認知度が低く、競技人口が少ない中で、2025デフリンピックの陸上競技を盛り上げることができるのか?応援してもらえるのか?この半年間考え、悩みました。最終的には周囲の後押しもあり、自分の選手復帰が一番良いだろうという結論に至りました。2年以上のブランクがありますが、これまでの14年の競技経験に加え、4年間のトレーナー業で培った知識を活かし、日本代表に復帰できるよう日々鍛錬に努めていこうと決意を新たにしたところです。

良くも悪くもコロナ渦で周囲も変わり、自分の人生や生活も変わりました。2023年もいろんなことがあると思いますが、“自分のためになるはずだから”という信念をもって一日一日を楽しみます。

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