地域で暮らす・支える-地域生活支援拠点等の整備-新見市の地域生活支援拠点について

「新ノーマライゼーション」2023年2月号

新見市福祉部福祉課
吉田壮佑(よしだそうすけ)

1.市の概要

新見市は中国地方の山間、岡山県北西部に位置し、県内で2番目の広さがあります。鍾乳洞や湿原などの豊富な自然に加え、千屋牛やキャビア、ピオーネなどのグルメも豊富です。

本市の人口は27,283人(令和4年11月末日現在)、年少人口(15歳未満)が2,408人、高齢人口(65歳以上)が11,670人で高齢化率40%を超える少子高齢化のまちです。一方でICT教育をいち早く導入し、プログラミング教育も盛んで、2018年にはワールドロボットサミットで世界第2位に輝きました。

本市の各種障害者手帳所持者は1,650人、障害福祉サービス等の利用者は278人です(令和4年11月末日現在)。障害福祉サービス等の利用者は年々増加傾向にあります。また高齢障害者の一人暮らしや、同居者が高齢の家族のみで、介護や見守りに限界がきている障害者が年々増加している状況も散見されます。そのような中、市内には障害者支援施設を運営する社会福祉法人等が複数存在しており、地域の障害者を支える重要な役割を担っています。

2.地域生活支援拠点整備の経過

本市には、知的障害者支援施設と特別支援学校が併設された岡山県健康の森学園があり、従来から障害者への理解が高い地域でした。一方で、精神障害のある人の社会資源が乏しく、平成14年に「もっと社会資源があったら…」という当事者や家族、支援者からの要望を受け、生活支援センターの整備が計画されました。当初は精神障害のある人への社会資源として整備計画されましたが、平成18年の障害者自立支援法の施行もあり、身体障害・知的障害を含めた三障害対応の市直営の障害者地域活動支援センター「ほほえみ広場にいみ」が平成18年10月に開所しました。当初は地域生活支援拠点という言葉はありませんでしたが、障害のある人が『「ほほえみ広場にいみ」に来れば生活、仕事、病院の紹介、事業所への案内など何でも相談できる』というワンストップの役割を持っていたため、開所当初から地域生活支援拠点の役割を担っていました。

また、同一の建物内には、精神科病院のサテライト診療所や児童発達支援事業所、日中一時支援事業所、地域活動支援センター3型事業所、障害者就業・生活支援センターが入居しています。市直営という強みを生かして、受診後すぐに自立支援医療や障害者手帳の手続きが可能になっており、利用者の利便性向上に一役買っています。

開所は日曜日から金曜日で9時から18時までです。夜間と土曜日の対応については市役所の宿直で一時的に対応し、福祉課障害者福祉係の担当者から緊急性が高いと判断された事案については、「ほほえみ広場にいみ」に連絡が入り、適切な場につないでいます。

日曜日には、地域のサロン的な役割にもなり、「ほほえみサンデー」として障害のある人の余暇活動を毎週開催しています。コロナ禍以前は、夏祭りや餅つき大会など、飲食を伴うような活動も行っており、その際は障害の有無にかかわらず多くの方が参加し、たくさんの笑顔が見られました。参加したことがある人から、毎年開催の有無について問い合わせがあるほど、楽しみな活動となっていたため、今後も情勢に応じて開催していきたいと考えています。

3.「ほほえみ広場にいみ」の取り組みについて

1.相談支援

「ほほえみ広場にいみ」は市の直営です。運営スタッフには市職員もいますが、市内の障害者支援施設等の事業所からも派遣されており、密に事業所との連携体制が取れるような状況となっています。また、スタッフは精神保健福祉士や公認心理師などの専門的な相談員も配置しており、障害福祉サービスを使っていない人も含めて誰もが利用できるワンストップの相談窓口となっています。そのため、「ほほえみ広場にいみ」が地域生活支援拠点となり、ここを中心とした面的整備体制をとっています(図1)。

図1 整備体制イメージ
図1 整備体制イメージ拡大図・テキスト

2.緊急時の受け入れ・対応

前述のとおり、市内の障害者支援施設等の事業所から職員を派遣いただいている関係で、事業所とのつながりが強くあります。「ほほえみ広場にいみ」や市で受けた、緊急時の対応として短期入所を使いたいというケースに対しても、スタッフがコーディネートし、相談支援専門員とも連携をして、受け入れ態勢を整えます。

3.体験の機会や場

就労したいという相談は多く聞かれます。ハローワークとも連携をしており、ハローワークから紹介されるケースもあります。「ほほえみ広場にいみ」には、障害者就労・生活支援センターも入居しており、障害者と障害者雇用を考えている企業とのつなぎを行っています。また就労した障害者のフォローを「ほほえみ広場にいみ」のスタッフと行っており、きめ細やかな対応をしています。

また「一人暮らしをしたい」という障害者や「一人暮らしをさせたい」という保護者からの相談もあります。そのような時は、市内の障害者支援施設と連携してグループホームの体験利用を行ったり、市内の不動産会社等と連携してアパートに関する相談を受けたりもしています。

4.地域の体制づくり

「ほほえみ広場にいみ」が新見市障害者自立支援協議会の事務局を担っています。自立支援協議会には、地域生活支援部会と児童支援部会があり、それぞれで障害者・障害児に関わる地域の課題整理や社会資源の考案、研修会の実施などを行っています(図2)。各部会は「ほほえみ広場にいみ」の障害者自立支援員がそれぞれ担当しており、必要に応じて関係機関に連絡調整を行うなどのコーディネーター的な役割を担っています。自立支援協議会は障害者や障害児に関わる支援者が一堂に会するため、顔の見える関係がつくられており、困った時にお互い助け合える関係性が構築されています。

図2 令和4年度新見市自立支援協議会構成図
図2 令和4年度新見市自立支援協議会構成図拡大図・テキスト

また、新見市障害者自立支援協議会では普及・啓発のための取り組みとして、にいみ福祉フォーラムを開催しています。新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点からここ3年開催できていませんが、市内の障害福祉に関する事業所のパネル展示やパン・うどんの販売、新見市婦人会によるおこわの販売、障害福祉に関する講演などを行い、多くの市民へ障害福祉について知る機会を提供しています。

5.専門的人材の確保・育成

自立支援協議会の各部会では、障害者虐待の防止に関する研修会や障害のある幼児の引継ぎに関する研修会などを行っています。研修の講師には、市内にある大学の先生や県発達障害者支援センターに依頼しています。

4.今後の課題

居住地支援…長期入院で新見市を離れていた障害者が地域に戻ってきた時の支援体制には課題を感じています。いざ戻ってきた時のことを考えて、体制を整えていく必要がありますが、在宅になった時のヘルパー利用については、高齢者の介護ヘルパーは対応方法に困るため障害者への対応を敬遠する人もいると聞いています。自立支援協議会では現在、そのような障壁を少なくしていけるように、介護部局も含めた協議を行っています。

医療的ケア児等支援…医療的ケアが必要な人が支援を受けようとした時、新見市から岡山市や倉敷市などの主要な都市にある専門機関に行くためには距離があり利用しづらいという現状があります。そのため、身近でできる支援を考えていけるように、関係部署や障害者支援施設とも協力しているところです。

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