幸福の国、ブータンの障害者を取り巻く環境は少しずつ前進しています

ヨンテン・ジャムソン(Yonten Jamtsho) 
ブータン障害者団体(DPO Bhutan) プログラム・オフィサー補佐
(翻訳:小杉弘子)

1.ブータンの障害者手帳制度

現在、ブータンには障害者に対する証明書あるいは手帳を発行する制度がありませんが、政府は前向きに計画を進めています。一方、障害者団体のブータンDPOは、ティンプー市役所(市の行政)と、ブータンの障害者が市バスに割引運賃で乗車できるよう交渉しました。この障害者団体は現在、市バス用の特別なスマートカードが発行されるように、目に見える障害がある人や障害があると自己申告している人に、障害に関係する事項を記載した推薦状を出しています。ティンプーの障害者は、特別なスマートカードを使用することで、音声案内や携帯用スロープの付いたバリアフリーバスのすべてを2割引で利用できます。また、ブータン銀行とも交渉し、国内にある同行の全支店に合理的配慮を提供する優先窓口を設置することに合意しました。この優先窓口サービスを利用する人に、銀行は優先カードを発行しました。

スマートカード

優先カード

2.ブータンにおける障害者統計

2017年に国勢調査が行われましたが、障害者に特化した調査は今のところ実施されていません。
-統計の名称
2017年ブータン人口・住宅統計調査(འབྲུག་གི་མི་རློབས་དང་ཁྱིམ་གྱི་གྲངས་རྩིས་༢༠༡༧།།)
-統計の時期
2017
-統計が公表された時期
2018
-統計調査を実施した機関
ブータン王国政府ブータン国家統計局

すべての生物と同様に、私たちの健康や能力は変化し低下するものです。加齢に伴い心身は衰え虚弱になります。今は元気で気力に満ちているとしても、いつの日か、毎日行う簡単な動作でも何かしらの介助が必要になるときがくるでしょう。つまり、私たちの生活の中に、何らかの形で障害が入り込んでくるのです。

現在のところ、ブータンでは15,000人以上の人々が何らかの障害を持っていると推定されます。そうした人々は、社会の中で、身の回りで、情報の面で、周囲の人の態度や、物理的な障壁に遭遇し、基本的な権利を享受することができません。そのため、障害のある人たちは自立した尊厳ある生活を送ることができません。また、中には社会の重荷として見られている人もいます。

この現実を認識し、政府は、国の隅々にいるすべてのブータン人に恩恵を得ることを祈念し、2019年に「障害者のための国家政策」、国語であるゾンカ語では「རྒྱལ་ཡོངས་དབང་པོ་སྐྱོན་ཅན་གྱི་སྲིད་བྱུས་ ༢༠༡༩ ཅན་མ།」を導入しました。
参考文献https://www.nsb.gov.bt/publications/census-report/

3.障害者関連法・制度

ブータンにおける主な障害者関連法・政策・計画は以下のとおりです。

国際的な政策に対する政府の対応 批准
子どもの権利条約 (1989) 1991
障害者権利条約 2010 署名したが批准していない。
障害者のインクルーシブ教育に関する国内法、政策、計画 採択
特別支援教育に関する国家政策 2012
インクルーシブ教育の基準 2017
ブータンにおけるインクルーシブ教育および特別教育のための10年ロードマップ 2018 – 2028
国の障害者政策 2019
国の障害者政策のための行動計画 2020

なお、ブータンには政府職員に障害者支援を義務づける障害者法や法律はありませんが、ブータン国内にある国連機関や障害者団体(市民社会団体)は、国連障害者権利条約の批准を政府に働きかけており、条約の批准が同国においてより焦点を絞り、共生につながることを期待しています。

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