学びナビ

「新ノーマライゼーション」2023年11月号

和洋女子大学家政学部家政福祉学科 准教授/本誌編集委員長
髙木憲司(たかきけんじ)

社会福祉士国家試験令和4年度(第35回)問題解説

問題 79 事例を読んで、成年後見人の利益相反状況に関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕共同生活援助(グループホーム)で暮らすAさん(知的障害、52歳)には弟のBさんがおり、BさんがAさんの成年後見人として選任されている。先頃、Aさん兄弟の父親(80歳代)が死去し、兄弟で遺産分割協議が行われることとなった。

1 Aさんは、特別代理人の選任を請求できる。

2 Bさんは、成年後見監督人が選任されていない場合、特別代理人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない。

3 Bさんは、遺産分割協議に当たり、成年後見人を辞任しなければならない。

4 特別代理人が選任された場合、Bさんは、成年後見人としての地位を失う。

5 特別代理人が選任された場合、特別代理人は、遺産分割協議に関する事項以外についても代理することができる。

【解答のポイント】正解:2

家族が成年後見人となっている場合の利益相反状況に関する設問である。このケースでは、Bさん(Aさんの後見人)とAさんの父親死去後の遺産分割協議の場面であり、まさにAさんとBさんの兄弟が利益相反の状況となっている。このようなケースを想定して、弁護士等の専門職による成年後見監督人の選任があるわけだが、それも選任されていない場合にどうするかを問う問題となっている。(民法826条、860条)

この問題を解くためには、成年後見人、成年後見監督人、特別代理人それぞれの役割を知っておく必要がある。

成年後見人・保佐人・補助人:本人の財産を管理したり、本人の希望や身体の状態、生活の様子等を考慮して、必要な福祉サービスや医療が受けられるよう、利用契約の締結や医療費の支払などを行ったりする。成年後見人等はその事務について家庭裁判所に報告するなどして、家庭裁判所もしくは成年後見監督人等の監督を受ける。

成年後見監督人:主に親族後見人が選任されているケースを中心に、成年後見監督人(保佐監督人、補助監督人)が選任されるケースがある。

特別代理人:遺産相続が発生した際の相続人が未成年の場合に、家庭裁判所によって特別に選任される代理人のこと。知的障害や認知症等で判断能力が不十分な成人の場合にも特別代理人を選任することがある。相続人以外の者が後見人の場合、後見人が代理して遺産分割協議を行うことになるが、相続人が後見人の場合は、後見監督人がいる場合を除きその被後見人のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならないとされている。

特別代理人は家庭裁判所によって決められた業務以外しか代理することができず、その業務が終わった場合は任務終了となり解任される。相続の当事者でなければ誰でも特別代理人になることができ、弁護士などである必要はない。

以上のように、特別代理人の役割を知っていれば解答にたどりつけるが、民法上の規定を細かいところまで読み込むことは大変なので、過去問からキーワードとなる用語を抜き出しポイントを押さえることが重要となる。

問題 94 事例を読んで、Z障害者支援施設のF生活支援員(社会福祉士)がこの時点で行う支援方針の見直しに関する次の記述のうち、最も適切なものを1つ選びなさい。

〔事例〕知的障害のあるGさん(35歳)は、日頃から言語的コミュニケーションは難しいところがあるが、Z障害者支援施設から離れた場所にある生家に一時外泊を行った。Gさんが施設に戻った際に、Gさんの家族から、外泊中の様子を伝えられた。自分から気に入った場所に遊びに出掛けたり、簡単な食事は自分で用意したりしていたとのことであった。F生活支援員にとっては、施設ではこれまで見掛けたことのなかったGさんの様子であった。

1 Gさんの支援は、施設と自宅では環境が異なるため、施設の事情や制約に合わせた支援を行うことを再確認する。

2 Gさんの施設での生活では、職員が考えるGさんの最善の利益に関する事柄を優先的に取り入れる。

3 Gさんの興味が広がるよう、Gさんの理解力や意思決定の力を考慮して、思いや選好を確認するよう努める。

4 家族から聞いた話を基に、Gさんの支援に、自立に向けたプログラムとして施設内で実施している料理教室への参加を組み入れる。

5 Gさんの短期的な支援目標を、施設に近接する共同生活援助(グループホーム)への移行に改める。

【解答のポイント】正解:3

知的障害者の意思決定支援に関する問題である。Gさん本人の思いを考慮に入れず、施設側の都合や、家族・支援者の推測に基づいた支援方針となっている選択肢はすべて誤りである。その基本を押さえれば比較的難易度は低い問題といえる。

1 Gさんの支援者側の見解のみに依存した支援方針の決定となっており、誤り。

2 Gさんの支援者側の見解のみに依存した支援方針の決定となっており、誤り。

3 Gさんの意思決定支援をしながら、本人の意思に沿うよう支援方針を決定しようとしており、正しい。

4 Gさんの家族から聞いた話のみを基に、Gさんの支援方針の決定となっており、誤り。

5 Gさんの意思の確認を行っておらず、誤り。

menu