快適生活・暮らしのヒント-スリッパ代わりになる手作りの靴下カバー

「新ノーマライゼーション」2023年11月号

木下広子(きのしたひろこ)
(全国パーキンソン病友の会会員)

私は今年66歳になった若年性パーキンソン病患者です。病気の発症は20代で長女の出産と同時でした。当時は20代でパーキンソン病を発症することが知られていなくて「怠けている」とか「わざとやっているのだろう」と偏見も多々ありました。自分では懸命にやっているつもりでも「作業が遅い」「文字がうまく書けない」「簡単なことなのにできない」など、今ならパーキンソン病の現象だと分かることでも、「なぜ私はこんなことができないのだろう」と思い苦しみました。

困り事の一つに、スリッパが履きにくいというのがありました。スリッパを履いているとうまく歩けなくて、それでも履いているとスリッパが脱げて飛んでいってしまいます。パーキンソン病の症状は「安静時のふるえ」「体のこわばり」「動作の緩慢・無動」「歩行障害」という4つの特徴的な症状があるといわれています。これらはパーキンソン病に特徴的といわれる症状で、医師がパーキンソン病を診断するための症状であって患者自身が困るのはこのような症状があるために起きてくる現象です(例えば、文字が書きにくい、動作が遅く思うようにできない、手足が震えるなど)。パーキンソン病の薬を飲むことで現象は半減しましたが、スリッパが脱げてしまうことは解消することはありませんでした(足指の固縮と歩行障害などが原因で起っている)。症状が進行してすくみ足やすり足が出るようになると靴下も脱げるようになりました。既製品の滑らない靴下などをいろいろと試してみましたが、なかなか足に合うものがありませんでした。

これはもう自分で作るしかない!と試行錯誤しました。靴下が脱げないこととスリッパの代わりにもなるものを作りたいといろいろな素材で検討してパターン化したのがこの靴下カバーです(図)。素材は毛糸、細い糸を2本どりで編み同じ形の正方形のモチーフを作り、そのモチーフ7枚をつなぎ合わせます。7枚をつなぎ合わせることでつなぎ目ができて靴下がよれたり回ってしまうことを防ぎます。足裏になる部分に4枚、つま先部分が1枚、足の甲に2枚、かかともつつみ込めるので足の冷えにも効果があります。パーキンソン病の患者さんに限らず、足に障害のある方は靴下が回ってしまったり、脱げてしまい困っている方も多く、差し上げると喜ばれます。余った毛糸で作っているのでモチーフごとに色を変えて配色を考え楽しく作っています。
※掲載者注:写真の著作権等の関係で図はウェブには掲載しておりません。

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