トピックス-第50回国際福祉機器展&フォーラム観覧記

「新ノーマライゼーション」2023年11月号

日本障害者リハビリテーション協会 情報センター 広報課

当協会の評議員をお願いしている(社福)全国社会福祉協議会と(一財)保健福祉広報協会が主催する国際福祉機器展&フォーラム(以下、機器展)が去る9月27日から29日まで開催されました。当協会も以前は出展したこともあったのですが、近年はもっぱら協賛のみでした。コロナ禍も終えた今般、開催期間中に当協会の職員数名が機器展を見学し、その感想を「観覧記」としてまとめ掲載することとしました。長年の関係者のご労苦にあらためて感謝の気持ちを表したいと思います。

会場にはこの50年を毎年のポスターとその時々の現場写真で振り返る見ごたえのあるパネル展示がありました。ポスターのデザインだけを追ってみても、車いすを筆頭に何かしら機器をイメージさせていた時代から、人の優しさを表現する時代、そして日本(和)らしさへの回帰を訴える時代という流れがわかりました。

数あるブースの中で特に印象に残ったのは、『福祉機器開発最前線』と『福祉用具相談』です。開発最前線には8つの開発中またはできたての機器が並んでいました。『ハイネルチェアー』(HineruChair)は、一般的にすでに普及している電動車いすのリクライニング(背もたれのみ倒れる)とティルト(背もたれと座面一体的に動く)の機能に加え、側屈(傾ける)、回旋(ひねる)、上下(伸ばす/縮む)を付加したもので、姿勢にも自己決定権を与えようというのがコンセプトです。シーティングの進歩はこの機器展の歴史がつくり上げた大きな成果の一つですが、座らされているばかり、あるいは眼の視点を身体ごと変えたい、という思いに応えたものでした。さらに開発者が「はい!寝る」とかけているので評価点もアップしました。『以心伝心』はスマホにアプリ(VOCA)を入れて、重いコミュニケーション障害の方たちが使います。その人のTPO(時間、場所、場面)で想定されるメッセージ(感想、感動も含む)をあらかじめ入れておくと、TPOを感知したアプリ(AI)がメッセージの候補を画面に表出してくれます。それを可能な身体動作で選択するとメッセージ音声が再生されるというものです。

福祉用具相談では3Dプリンターを使った自助具製作を実演していました。以前は作業療法士等の専門家は日常生活動作から趣味の範疇に至るまで、手作業で作ってきました。ここでは、おおよその型の設計図をネット上からダウンロードし、それに微調整を加え、安価な3Dプリンターに読み込ませることにより、短時間でその人に適応した自助具が製作できるとのことでした。会場では鉛筆をしっかり握れるように指を固定する物が細い糸の集合体からできあがりました。モノづくりの現場にとって今後は不可欠な技術となるでしょう。

全般的な印象としては、以前は介護施設などの現場の業務負担軽減にスポットがあたっていましたが、小型化、軽量化、多様化、汎用化が一層進んでいること、しかもそれらすべてにICTの技術が関与していることを目の当たりにしました。H.C.R.はHome Care and Rehabilitationの略ですが、まさに在宅での自己実現が可能な時代となったとの意を強く認識できた機器展でした。

menu