4 施設の子どもたち
不幸なことに、施設の職員の多くは、児童図書についてあまり知りません。しかし、毎日の生活の中に本をとり入れている施設では、いろいろな経験がつみ重ねられています。地域の図書館員が施設と協力して、子どもたちを訪れたり、子どもたちを図書館に招いたりしているところもあります。たしかに、子どもの本だけで施設の生活の味気なさを埋めあわせることはできません。しかし、こうした機会は楽しいだけでなく、子どもたちに、他人と接触し施設の外の世界の生活を知る機会を与えてくれます。
障害をもつ子どもを施設に入れるのは、社会参加に逆行する立場ですが、図書館とのつながりを
一時的に病院生活をする子どもや青少年も大勢います。先進国では、交通事故が年々増え続けており、しかも、けが人の多くは子どもや青少年です。傷が重い場合は、本をもったり、ページをめくったりすることさえできなくなります。こういう子どもたちには、電動のページめくり器などさまざまな補助具が必要になります。こういう読書用機器は、頭や腕に
『クシュラの奇跡』のクシュラは生後しばらくのあいだ、長期、短期とりまぜて何回も入院生活をくりかえしましたが、いつも、お気に入りの絵本を手もとに置いていました。入院生活は、子どもにとってはとくに大変な重荷です。子どもが安心して、幸せな気分になれるように、工夫してあげたいものです。入院中の子どもたちはしばしば、単純でユーモラスな絵のたくざんある本を求めます。年齢を問わず、誰でも疲れたり気分がすぐれないときは、軽い読みものを好みます。長期に入院している子どもには、とくによい本がたくさん必要になります。この子どもたちには、人とのかかわりや冒険が、治療と同じくらい意味をもちます。本は、教育に役立ち知的刺激を受けるためだけでなく、たいていの子どもが共通にもっている体験を知るためにも欠かせません。自分は他人と違っている、
子どもや青少年がなるべく自然であたりまえな環境で成長できるように、さまざまな条件を
「私が書きはじめたのは、人がさびしいと感じるとき、自分だけではない、他のみんなもさびしいのだと知っていれば、なぐさめられるだろうと信じたからです」と、スウェーデンの作家、ハンス・ピーターソン(スウェーデンの児童文学作家。作品に『おじいちゃんにあいに』など。)はいいました。
「実際わたしは、子どもたちがなるべくさびしいと思わないですむように、子どもと大人がことばをかわすようにと思って、本を書くのです。」
本は会話や討論のきっかけをつくります。これは、世間から離れて生活することに慣れてしまっている子どもたちにとって、とくに役立つ一面です。本には、仲間どうしだと感じさせる力があるのです。